コード“闘”11
ぺちゃんこにされた葉山はフィールドが消えると共に何事も無かったかのように復活して敗北の悔しさに地団駄踏む。
「避けれた攻撃だった!…油断した!」
服に付いた土埃を払いながら葛之葉が互いの健闘を称えに来る。
「お疲れ様、コントロールする矢がもう少し多かったら勝ててたわね」
「く…実力不足と言いたいの?」
ぎすぎすした空気になり葛之葉は苦笑いして舞台を降りる。葉山は強く当たってしまった事を反省して舞台を降りる。
竜司に対しチームは負けたことを謝る。
「なぁに、興行としては成功している。宣伝としては少し失敗したが気にする事はない」
三人を激励しながらも次のチーム戦の方が楽しみだと不敵に笑うのだった。
インターバルの時間を挟み休憩時間に翔達は緊張が高まりつつあった。
「誰と当たるんだろうな…」
「あら?誰と当たっても勝てるでしょ?手の内は箱と荻原でしょ」
黒鴉が余裕余裕と翔の背中をバンバン叩く。応援で休憩所に同席していた黒姫は痛がる翔を見て姉を止める。
「もう、強く叩きすぎですよ」
「はいはい。ところで相手にはもう一人の浜松が倒したはずの男が居たわよね?」
「えっと…アルバート博士ですよね」
それそれと黒鴉は頷いてどんな奴か聞きたがる。
「…どんなって言われても、ただの科学者ですよ」
「じゃあヨロズみたいに実はバリバリの武闘派とかってのは?」
黒姫も翔もそんな覚えはないと否定する。話を聞いていたアキトがコーラ缶を飲み干してグシャっと握り潰す。
「往生際の悪い男か、善からぬ雰囲気だな」
アキトは一呼吸置いてかつて自分も身を犠牲にして死にかけたのを思い出して自分も大概だと苦笑いになる。
「さて、俺は一足先に会場に向かわせて貰う」
「あ、ちょっと!他の相手の情報知らなくて良いの!?」
「付け焼き刃の知識なんて混乱の元だ」
お節介だとアキトは背中越しに手を振って去っていき黒鴉は憤慨するが翔もその通りじゃないのかと後に続くと姉妹は顔を見合わせて呆れる。
会場に先に待っていたマザー陣営のクラウスは姿を現したアキトに絡みに向かう。
「やぁ、君が先方かな?」
「答える義理は無いな、てか絡みに来るなよ」
邪険にされてクラウスは残念そうに肩を落とすが仕方ないと呟いてアルバートを呼ぶ。
「おーい、アルバート、挨拶しとこうぜ」
「二心の分際で僕に指図するな」
身内からも睨まれてクラウスはあちゃーと頭を掻いて恥ずかしさを誤魔化す。
「Kと当たらなければ意味はないのだ…」
「翔をご指名か…なら先方で来るんだな」
アキトは腕組みしてふんと鼻を鳴らして二人に背を向け陣営の待機場所に向かい話を聞いたクラウスが笑ってアルバートに「だとよ」と伝えるとアキトと同じように鼻で笑って戻っていく。
「ちょっ!クール気取るのズルいって!無視は俺様泣いちゃう!」
休憩時間を終えて翔達とクラウス達との闘いが始まり先方が呼ばれアキトがゆっくりと立ち上がる。
「んじゃ予定通り俺が出ますよっと」
木刀と氷雨両方を装備するアキトを翔が止める。
「いつも借りてるからな、持ってけ」
「焔鬼…いや、今は…」
「遠慮すんな」
押し付けられるように手渡されたキーホルダーを握り締めてアキトは感謝しながら舞台に向かう。
お目当ての相手じゃないのが出て来てわざわざ先方で出てきたアキトにアルバートがぶちギレる。
「貴様!嘘をついたな!」
「おいおい、素直か!?」
何か不穏な空気を感じアキトは観客席の神鳴をチラッと見る。
「…あー、竜司さんスピーカー切ってくれちょいとコイツと話がある」
アキトの指示に渋りながら竜司は外部へのスピーカーをオフにする。
「話だと!?」
「まぁ、そうカッカするな、俺も魂は翔だからさ」
「Kのクローンか…?」
アルバートが興味を示し話をする気になる。
「クローンというか時間軸の違う並行世界の存在といったところだ」
「並行世界?非科学的だな…そろそろマイクを戻してもいいか?僕からも話が…」
アキトは目付きを鋭くして否定する。
「余計な火付けか?させないぜ」
「何…?」
火付けと聞いて盗み聞きしている竜司も眉間に皺を寄せる。
「翔を呼び出して何を吹き込むつもりだったんだ?神鳴が一瞬時戻すくらいだもんな…胸糞悪いやつだろ?」
「プロトタイプ…!お前も気に食わないな」
ぎりぎりと歯軋りしながら箱を手に取る。
「勝って貴様らのか細い繋がりなど断ち切ってくれる」
「しょうもない野郎だ…悪意ある死者は大人しく墓に埋もれてろ」
二人の前に壁が現れフィールドが形成されていく…




