コード“斎”7
仕事を終えて夕食後に帰って来た黒鴉は神華に状況確認を行う。
「詳細聞かなかったけどどういう状況?」
「魔物が同時期に大発生、多発地域は日本の関東圏、我々の位置を捕捉してから完全に狙い撃ちですよ」
神華は疲れきった顔でテーブルに突っ伏す。
「そうね機神の襲撃で神様いる場所バレてるもんね…」
黒鴉は面倒と言いたげな顔でトンと回収した箱をテーブルに置く。
「黒鴉様もそれ回収してるんすね」
箱を指差し神華が呟く。
「私もって…誰か回収報告してたの?」
「その、黒姫様が…」
黒鴉は神華の言葉に思考停止して眼を瞑り呆れたように額を指で叩く。
「は?今もこの家に?」
「ええ、多分…」
神華は事情を知らずキョトンとした顔をする。
「あの馬鹿!これ発信器兼ねてるんだから持ち帰るんじゃないわよ!」
「黒鴉様持ち帰ってるじゃないですか!」
「これはすぐに研究所に送るからいいのよ!あそこは場所バレてるし」
神華は「それはそれでマズいんじゃ」と口答えしようとして黒鴉に睨まれる。
「兎に角黒姫のは破壊しないと」
神華は黒鴉の短絡的な思考を注意する。
「通信途絶したら場所マークされちゃうんじゃ?」
「んもう!兎に角家に今すぐ直接来られたら大変でしょうが!なんでもいい壊すわ!」
ドシドシと足音を立てて黒鴉が去っていくのを見て神華は気だるそうに溜め息交じりに呟く。
「どっちにしてももう遅いと思いますけどねー」
黒鴉が黒姫の部屋をノックもせずに勢い良く侵入する。
「ね、姉さん!?お帰りなさい…」
黒姫は驚き注意しようとするが姉の剣幕に圧されて縮こまる。
「箱、持ち帰ったのなら出しなさい!壊すから」
「え、あー…翔君が持ってます」
自分の神姫の箱は黙って今日回収した箱は翔が持ってると伝えると黒鴉の怒りが更に悪化する。
「あんの馬鹿!浜松ぅ!」
バタバタと駆け足で部屋を飛び出して行く黒鴉に恐怖を感じながら黒姫はホッと胸を撫で下ろす。
(私が今持ってる物は…言わなくても知ってますよね)
客間で翔はパソコンで独自にニュースを見て状況の把握に勤しんでいたが突然の大激怒した黒鴉の突撃を受けてひっくり返る。
「浜松!何勝手な事しとるんじゃー!」
今にも剣を呼び出しそうな剣幕に取り敢えず反応をする。
「な、なんだよ急に!」
ひっくり返ってだらしのない翔を見下ろしてながら黒鴉は箱を見せる。
「これ発信器なの分かってる!?」
「あ…いや、研究に必要だと思って…」
「御託は良いから出しなさい!」
完全に記憶から抜け落ちていて言い訳しながら箱を黒鴉に渡す。
「そ、そうだっけ…そうだったか」
「ったく最初から持ち帰らないで研究所に送りなさいよね!」
箱を奪い取りフンと鼻を鳴らす。翔は黒鴉の見せた箱を思い返してツッコミする。
「いや、でもお前も人の事言えな…」
「お黙り!シャーラップ!兎に角それ壊させてもらうわよ!」
言葉を遮り黒鴉は更に鼻息荒げて何処かへと大きく足音を立てて歩き去る。
「しまったな、確かに持ち帰ったのは軽率だったな…」
翔は反省しながら椅子を立て直してパソコンに向かい直す。
黒鴉が外に出て剣を呼び出し翔から奪った箱を放り投げて空中でぶった切る。箱は見事にぱっくり二つに割れて地面に落ちる。
「ふぅ、後は研究所に送るだけね!」
割れ落ちた箱を拾い上げて軽くため息をついて状況を憂う。
「一日でこの勢い、どうにか止まらないかしら…管理の仕事がヤバいわ」
一日の襲撃量を憂いながら部屋に戻りジュラルミンケースに箱を詰める。
そのまま黒服を呼び出して研究所に向かう。
神華はその様子を見送り他にやるべき事はと指差し確認をして問題なしと判断し自分も家に帰ろうと伸びをして神藤邸を発つ。
(明日、明日こそしっかり休もう…)
フラフラした足取りで神華は望み薄な願いを考える。




