コード“間”4
母は強しを体現する葛之葉の笑顔と威圧感に神斎は冷や汗をかきながら子供達にぶっきらぼうに早く帰れと悪態をついて庵に戻っていく。
「もうボクに関わらない方がいい、早く親のところに帰るんだな」
葛之葉は苦笑いしながら腰を低くして子供達に目線を合わせて話す。
「そうよー、タカシ君、ハジメ君、お母さん達心配してるから送ってあげるから離れず着いてきなさい」
名前を呼ばれて不安がっていた二人はホッとして葛之葉に連れられて近くのボロ小屋からモールの空間へ戻っていく。
神斎は横になって地球で入手した少年漫画を読みながら地球の子供達の様子を思い出してもっと漫画とかの会話してみたかったと考えを改める。
スタッフルームに連れられて来た子供達は母親と再開して互いに涙を流して抱き合う。
「一大事にならなくて良かったわ…」
葛之葉はホッと胸を撫で下ろすが責任者として駆け付けたリョウは厳しい顔をする。
「顧客を専用通路に入れる仕様は直さないといけない…たまたま転移先が安全だったから良かった…」
葛之葉がたまたま子供達とすれ違いたまたま子供達は葛之葉の使った出入り口を使ってたまたま神斎が子供を傷付けずに済んだ。その事実に他のスタッフ達も難しい顔をする。一人の人間の職員が警備を増やすべきかと呟く。
「対策は鉄機界にシステムを依頼する。それまではスタッフで警備を交代でやりましょう」
リョウの提案に各々が顔を見合わせてどよめくが葛之葉が纏めあげる。
「オーナーがそういうなら皆従いましょう、持ち回りはスタッフ側である程度話し合いますから後でスケジュールとか確認お願いしますね」
「ん、解った。人選は任せる」
リョウは携帯を手に取るが電波が入らず不満そうに携帯を振る。
「むぅ、電波も使えるようにしたい…要相談ね」
「そのー、取り敢えず一件落着よね…よね?」
ちょっと自信無さげな葛之葉、リョウはお客様を不安にさせないように曖昧な返事はせずに力強く頷く。
「はい。あ、でも一応幹部会にも報告入れないと…」
リョウはお客とスタッフに一礼していそいそとモールの外に向かうのであった。
ちょっとした騒動を聞いて神華と黒鴉は様子を見にモールにやってきて玉藻前と接触する。
「難儀やな、関係者やっちゅうに入れんなんてな」
「まぁ気にしてないわ、それで犯人解った?」
子供が勝手にスタッフオンリーな通路に鉄扉を開けて簡単に入れるとは思っていなかった黒鴉は怪訝そうな顔をして周囲を見渡す。
「いんや、人多すぎてなぁ…」
神華は天井を何かを探すように見渡して尋ねる。
「むむむ、監視カメラは?」
「あらへんよ、しゃーないやろ?複雑なシステムまでは姫やんの力じゃ再現されとらんし」
「やれやれ、神威に頼むしかないですね」
神華は残念とリョウの陳情書と合わせてメモを追記していく。
少し沈黙が流れタイミングを見計らったのか玉藻前はニコニコの営業スマイルになる。
「そないな事よりなぁ…ごちゅーもんは?」
「…割としたたかね、じゃあ煎茶と三色団子」
黒鴉はお昼時は過ぎてるしと甘味を要求すると玉藻前はしかめっ面をする。
「なんやぁ、黒鴉まで甘味かい」
「あら、でも和スイーツって風情あるし人気なんじゃない?…お団子がスイーツかは知らないけど」
「はぁ…ウチんとこホンマは定食屋さんなんやけどぉ?」
玉藻前が主張するが神華は時計を見せる。
「時間が時間ですし…あ、でもアタシ小腹空いてるので塩握りで」
「はいはーい、塩握りと三色団子、お茶が二つやなー?ほな、待っときー」
調子よく玉藻前はV字にした指を蟹の鋏のように開閉させた後にすたすた走り去るのを神華が止めようとする。
「あの、アタシはお茶は頼んで無い…行っちゃった」
黒鴉はゲラゲラ笑った後に道行く色んな客を眺めて品の無い笑い声を出して神華はボソッと「取らぬ狸の皮算用」と呟くのだった。




