コード“喰”4
部屋に籠った黒鴉に触れないように解散して翔が伸びをして時計を確認する。
「やべ!もうちょいでバイトじゃん!すまん!」
慌てて翔は家を飛び出していく。黒姫以外の全員が首を傾げて「バイト?」と呟いて苦笑いしつつ黒姫が事情を説明する。
「収入が出るまでの生活費を稼ぐためにちょっと頑張って貰っています」
リョウが憐れみの目を向けて翔に同情する。
「忙しいのに労働で汗を流すなんて…」
労働と聞いてアミラまで哀しい顔をする。
「何と言うか…哀愁漂っていましてよ?」
「Kも以前は科学者や戦闘員していたのに…今やバイト店員か…」
ヨロズの言葉に翔の変遷を思い出して神威が吹き出して笑う。
「ははは!波乱万丈過ぎるなー!いやはや、我も職を失わぬように努力せねば!」
帰ると言いたげに神威が立ち上がるとヨロズも呆れながら追従する。神威は続けて得意気に言う。
「衣ショク足りて礼節を知る…か、ぬはは!」
「神威、口を塞げ…馬鹿にする内容ではないぞ」
お前の考えなぞどうでも良いとヨロズは神威の背中をチクチクと攻撃しながら物置に押し込み戻っていく。
二人が戻っていき黒姫はリョウとアミラを見て尋ねる。
「お二人はどうします?」
「ワタクシは暇ですので…お買い物でもしようかなと」
アミラがそう口にするとリョウも乗っかる。
「もっとペン欲しいかな、皆に好評だから…」
「業者みたいなこと言いますのね?」
「一応職員いっぱいいるから」
ではと黒姫が立ち上がり三人で出かける事にするのだった。
日傘をさしてご機嫌なアミラ、くるくるさせながら便利で美しい装飾について力説する。
「日光による日焼け、吸血鬼的にも厳しいあの忌々しい光を防ぎ、決して優雅さを損なうことなく気品もある…素晴らしいですわぁ」
黒姫は傘の歴史を思い返して不思議そうに質問する。
「そちらの世界には無かったのですか?」
「あー、そもそも日中は外に出ませんので考えもつきませんでしたわ」
成る程と黒姫がふんふんと頷く。リョウも傘について話す。
「私のところにも傘はあった、けど…こっちみたいに金属の骨じゃ無かった」
「あら、リョウさんの所には傘あるのね」
次に二人は走る車を見て感想を言い合う。
「いいよね、アレ…便利だった」
「ワタクシの能力あるから…どうかしら」
アミラの能力は夜だけでしょとリョウは呆れながら呟く。黒姫は何れは必要になると悩みながら考える。
「ワタクシ朝は基本屋敷でぐっすりですので…最近は傘で出歩いて領民と交友もありますが」
ゴニョゴニョとアミラは気まずそうによたかのような昼夜逆転な生活を語り黒姫がダンを思い出す。
「吸血鬼ですものね…ダンさんも昼間はぐーたらしてましたし」
「ダンと一緒にされるのは癪ですわね…」
露骨に嫌な顔をしてダンへの愚痴をぼろぼろと溢す。
「だいたいアイツは気高い吸血鬼とは程遠い間抜けで奔放でろくでなしで…」
「奔放…放蕩息子?…私も知り合いに居ますね」
「あら、リョウさんの所にも!?いい歳した男性というものでも奔放なのは困り者ですわね!」
リョウは知り合いの一人を思い出して苦笑いして遠くの大学の構内で八坂がくしゃみをするのだった。




