コード“結”15
善は急げと黒鴉の主導の元に少人数で翔の実家に移動するとまったりとお茶を飲みながらテレビを見ている亜紀人と神姫に遭遇する。
「お前達か」
黒鴉は頭を抱えながら亜紀人達を忘れていたと呟いて急ぎ翔に耳打ちする。
「家主が戻ったんだから出てくように言うのよ」
「なっ…!流石に無理あるだろ!?」
内容を聞かずとも理解した亜紀人達は何かを察して先んじて口火を切る。
「なるほど、研究所住み無理になったから出てけと?まぁ構わないが…ああ、そうだ翔の前使ってたアパートに住まわせてくれるなら」
あっさりとした交換条件に翔が「それでいいのか」と驚く。
「翔が自身で家守るなら気にすることじゃないしな…」
神姫も無言でウンウンと頷いて同じく黙っていた黒姫がアパートの鍵を取り出して亜紀人に手渡しながら尋ねる。
「本当にいいんですか?」
「問題があるとしたら契約者が微妙に違う程度だろ?」
「ええ、まぁ多分…」
黒姫は少し不安そうに返答して鍵を受け取って亜紀人達は少量の荷物を持ってメモ書きを元に家を出ていく。些末な問題だったと黒鴉は安堵して家の中をキョロキョロと見渡す。
「相変わらず…狭いわね物資の置き場も無いわ」
「お、おいおい!物資って倉庫や事務所に使う気か!?民家だぞ!?」
「冗談よ、でも思ってたより面子住めそうに無いわね」
黒鴉は指折りして人数を数える。その様子にまさかと翔が怪訝な顔をする。
「お前だけなら住むならそっちの実家はどうなんだよ…」
「あー、お父様とは袂を分かったから協力は要請しないわ、というか顔会わせるの気まずいでしょ!?」
「そ、そうだな…」
黒鴉の剣幕に翔は仕方なさそうに同意するしかなかった。黒姫が部屋をどうするか尋ねると黒鴉は口を尖らせる。
「個室欲しい…」
「贅沢言うなよ」
黒鴉は翔の言葉に対してボソッと脅すように呟く。
「…研究所ではアンタ個室だったわよね?」
「…え!?」
一歩下がってドン引きする翔、黒姫がハッとして翔の手を取る。
「姉さん、気を利かせてくれるんですね?」
黒鴉は悔しそうにムグッと顔を歪めて唇を噛む。
「だ、ダメよ…お父様に怒られ…くぅ!」
「父さんとは縁切りしたのですよね?」
「…いや、でも…多分、浜松は絞め殺されると思うの」
言い訳するように恐ろしい事を言われて翔は震え上がる。黒姫もガックリと肩を落として姉をぷるぷる震えながら見つめる。
「あのお父様を納得させて籍入れなさいよ…」
少し複雑そうな顔をして翔を指差して妹と同じ客間を使う事にする。
「後は向こう待機でもいいかしら…?神田は酷使するとして…」
タイミング悪く伝言に来た神華にその言葉を聞かれて嫌な顔をされる。
「黒鴉様?もう少しそういう言動は控えてくださいね?」
「あはは…ゴメン、でも部屋が無いのよね…」
翔は悪かったなと呆れつつ神華に部屋は本当に足りないと謝る。
「まぁ構いませんよ、アタシは家ありますし…神鳴や狐もこっちで生活するのでしょう?」
「え?神鳴と玉藻前も来るの!?」
黒鴉は聞いてないと叫ぶがピョコピョコと神華の後ろからついてきた神鳴と玉藻前が来ちゃ悪いかと訴える。
「悪くないけど…」
「そもそも二人の分踏まえての部屋割りですよ?」
黒姫が姉に部屋割りの内容を伝えて黒鴉は小声で「コイツらも一緒か」と残念そうに呟くのだった。
一方その少し後の事、アパートに来た亜紀人達は玄関を掃除していた大家に遭遇して軽く会釈をするが大家のおばさんは驚き震えながら翔を指差す。
「あ、あんた!つ、通報しなきゃ!」
「ま、待て!人違い…あ、いや翔として戻って来てるし…違くないけど違う!」
亜紀人は嵌められたと喚き、急いで神姫が大家に説明してその間に亜紀人がマザーと連絡を取る。
「クソッ!めんどくさい!何で手配されたままなんだ!?」
『ごめんなさいね、消しとくわ』
「そんな簡単に消せるのかよ…さっさとやっといてくれ」
亜紀人のお陰で翔達の指名手配は無くなるのだった。




