コード“結”13
神鳴は闇の中で悪夢にうなされていた。
幾つもの死を納得いくまで何度もやり直し疲弊した精神が見せる悪夢、そんな中でも神鳴は慣れた様子で溜め息をついて伸びをする。
(わざわざ見直す必要ないのに、はぁ…ダルい)
白の国での実質的な敗北を喫した戦闘を見直し大量殺戮の光景を見せつけられて欠伸をする。
(無かった事にするなって事かしら…私の事ながらよく分からないわ…)
フラッシュバックが終わるのを待ちながらゆっくり物思いに耽る。
(都合悪かったり気に食わなかったりする度にやり直ししてる罰かしらね…)
自分を嘲り一頻り映像を見終えて行いを反省する。ただ目覚める前に一言だけ言いたいことを叫ぶ。
「思い通りに操作出来るなら幸せを願うのは悪いことなの!?」
誰にも届かない叫びを終えると遠くから聞き覚えのあるような無いような高笑いが聞こえた気がして嫌な気分のまま目覚める。
ムッとした表情で上半身を起こすとシュメイラの研究室のベッドの上だった。
「あームカムカする、スッキリしない」
愚痴を呟きながら喉の渇きを感じベッドを降りる。神鳴が起きたことに気付いたシュメイラが顔を覗かせて心配する。
「おや、もう大丈夫なのかい?」
「お陰様でぐっすりよ、飲み物ある?」
神鳴は皮肉を込めながら身体を左右に動かして答える。シュメイラがマグカップにお茶を淹れる。それを一口飲んでホッとしながらどのくらい寝てたのか尋ねる。
「そうだね、丸一日位かな?」
「一日かぁ…もっと行くかと思った」
マグカップを返して軽く手足を動かして身体を反らして鈍った身体をほぐしていると玉藻前と小夜がやってくる。
「おはよーさん、あ!カナリン起きたんか!」
「良かった良かった」
嬉しそうに二人が寄ってきて神鳴も顔が綻ぶ。
神鳴の目覚めの報を聞いて黒鴉が翔達とアキトを引き連れて現れる。
「さぁ帰るわよ!」
「気が早いわね…」
黒鴉の大きな声に呆れながら神鳴は呟く。アキトは苦笑いして「止めたんだけど」と言い訳する。
「ま、いいけどさ?翔達今戻っても大丈夫なの?」
神鳴が不思議そうに黒鴉を見ると黒鴉は鼻を鳴らして得意気に語る。
「お父様も戻り偽物も出たなら私が戻っても問題ないでしょ!?」
「んー、黒鴉は良くても翔と私はどうなるのよ?」
黒鴉はピタリと動きが止まり誤魔化すように「あー」と言い訳を考えながら頭を抱える。
「わ、私だけが戻って二人…いえ、アキトもか…三人の誤解を解いてくるわ」
「だって、どうする翔?」
神鳴が今度は翔を見て質問する。
「俺は…まぁ我慢するが…黒鴉、何とか出来るのか?」
「…な、何とかするわよ!?うん!」
「信用デキねえ吃り方するなよな」
黒鴉は笑って「大丈夫、大丈夫」と自分と父を信じろと胸を張って呆れ気味の神鳴に連れられて黒鴉、ジンとミナの四人が一旦地球に帰還するのだった。
神鳴が去った後、アキトが髪をぐしぐしと掻き乱して何か思い悩んでいる様子で「どーすっかなー」と独り言を呟いていた。
「まさかアキトさんも地球行くんです?」
黒姫が見かねて質問するとアキトは言い辛そうに暴露話を始める。
「神楽達にも言いにくいし黒鴉いると話せなかったし…まぁ共犯者になってもらうかぁ」
「きょ、共犯…?」
「いや、実はな…神螺殺せてないし、黒幕はマザーじゃないっぽいんだよなぁ」
翔も黒姫もポカンとして騒ぎ出す前にアキトは補足する。
「神楽には神螺の首飛ばして翔に焼いてもらった事にしたんだけどさ…死ななかったんだよね、首飛ばしても」
「…聞いてない、ってか俺焼いてないぞ?」
「だから聞かれたら口裏合わせてくれ、神螺からは面倒な事聞いちゃったしね…」
アキトの話に二人も頭をくらくらさせながら平静を何とか保ちながら質問をする。
「で、その黒幕って?」
「それは…」
地球に戻り黒鴉は何とか得た情報を元に父親が居るであろう神藤ビルまでやってくる。こそこそと一応隠れながら社長室前まで来て深呼吸してからノックする。聞き慣れた気前のよい返事に黒鴉は安堵して扉を勢いよく開く。
「お父様!色々と聞かせて貰う…わよ?」
父の隣に自分そっくりな人物のホログラムがいて黒鴉は思考停止する。
「黒鴉か、お帰り。こそこそしなくても良いんだぞ?」
「…では私はコレで失礼する」
ホログラムが消えて黒鴉は目を何度も瞬きして叫ぶ。
「どーいうこと!?ちょっとお父様!?」
「お父さんな、向こうと協定組む事にしたんだ、表向きだけだけどな?」
「…私や浜松達の疑いはどうなっているの?」
納得はいかないが父の言葉を信用して黒鴉は本題を切り出すのだった。




