コード“結”7
気付けば街はお祭りのように人でごった返し活気付いて騒がしくなっていきバラバラに別れた翔達は色々と後悔することになる。
「…あちゃー、こりゃはぐれたら合流できそうにないぞ、黒姫離れるなよ?」
一緒に行動していた翔と黒姫は出来るだけ通りの端に寄って大人しくする事にする。
「携帯電話などあれば良いのですが…」
「そうだな、時計とかも無いし…取り敢えずメインイベント終わるまで下手に動かない方が良さそうだ」
道の横断も無理そうで疲れた感じで城壁の方を見つめる。色々と最初の頃の当時の光景がフラッシュバックする。
「何だか懐かしいですね…」
「黒姫もか?…河内達無事かな…」
当時共をしていた地球の友人を思い出し黄昏る。
食堂ではミナが爆食いを始めて黒鴉が「また始まった」と頭を抱えていた。
地球のレシピを持ち込まれたことで大部改善された食に大喜びしながらパクパク食べる姿に高貴さなど微塵も感じられないはずなのに隠しきれないオーラに周囲の人々がどよめき視線が集まる。
「ちょっと周防…加減しなさいよ…?」
パスタをつつく黒鴉はミナを心配するが当の本人は余裕な表情で皿を重ねていく。
「あーちゃん、腹が減っては戦は出来ぬ…だよ?」
「戦はしないし、満腹で動けないのは論外だし、お腹出て恥かくわよ?」
食道楽こそ我が道と言わんばかりに黒鴉の忠告の間にも一皿平らげる。
「いや、ホントお財布に大ダメージなんだけど?アキトの寄越した予算オーバーするから手を止めて!」
「…さ、最悪ロイヤルパワーで…」
「ダメ!」
トンでもないことを言い出しかけたミナをピシャリと黒鴉が止めてミナはしゅんとしながら最後の皿を平らげる。
「自制覚えて頂戴、ロケじゃないんだから」
「…はい」
街を駆け回る神鳴達はいつの間にか出来た人の波に観光や遊びどころじゃなくなったことを悟る。
「やっばー、はぐれてもうた」
玉藻前の言葉に小夜は周囲をキョロキョロ見渡して建物の屋根を指差す。
「登る?跳ぶよ?」
「迷惑だから止めときましょ?どうせ後で城門に集まるわけだし大丈夫でしょ?」
神鳴はアキトから託されてるお子様チームの財布をくるくると回して溜め息をつく。じゃらじゃらと硬貨の音がなって玉藻前はしかめっ面をする。
「財布雑に扱わんでもろて…屋台で何か甘いもん食わん?」
「食べる!」
一番体の大きいが最年少な小夜が手を挙げて喜び叫ぶと神鳴は呆れながらも離れないようにとぼやきながら移動を開始する。
「人いっぱい、おとーさんから聞いた!手を繋ぐと良いって!」
幼い振る舞いだが理に叶ってると玉藻前が同意して繋ぐと子供っぽいのは嫌だと嘆きながらも渋々神鳴は手を差し出して小夜は嬉しそうにその手を取るのだった。
「やったわね…」
「ひひ、やっちゃったねー」
ベンチに腰掛けて茶を飲む神楽とシュメイラ、動くのは面倒だとして既に三杯目の茶に手を掛ける。
「気付いたらアキトくん居ないし…まぁまったりしようかー」
「シュメイラはここトラウマでしょ?本当に来て良かったの?過呼吸になったりしない?」
シュメイラは笑って首を横に振る。
「私が魔族と決別した地だよ?寧ろ誇らしいよ…まあ、人前は苦手だけどね…ひひ」
温かい茶にホッと穏やかな表情の二人、神楽はボーッと空を見上げて結婚について考える。
「私もちゃんと式挙げた方がいいのかしら?」
「ふひひ、でもドレス着たよね?」
「そうだけど…」
神楽は口を尖らせて祝福されたいと呟くとシュメイラがウンウン頷く。
「アキトくんそう言うの苦手って逃げるだろうけどさ、やっちゃうのアリだよねーひひひ」
悪い顔する二人、アキトを縛ってでも挙式するのも悪くないと笑い合うのだった。
そうこうしているうちに空砲が鳴り響きラッパの音が城壁から聞こえてくる。街の人々は始まったと一斉に見やすい位置に行こうと押し合い圧し合いを始める。正装のケヴィンとリョウが姿を現すと拍手と歓声が上がり固い笑顔の二人が手を振って挨拶をする。
翔達それぞれが込み上げる感情に様々な表情をする。
「私達も大々的にやります?」
黒姫の言葉に翔は苦笑いしてあれより固い顔になると豪語する。
「ムリムリ、俺緊張に弱いからガッチガチで固まるって」
「それは残念です…」
口は笑っているが本当に残念そうな声色に翔は申し訳なくなってしまう。祝福と幸せそうなムードを見て緊張で恥じてもいいかもなと翔は心の中で思い口にしようとする。しかし、お祝いムードをぶち壊すように快晴の空に嫌な影が差す。瞬間悲鳴と共に地球で見た機械の怪物が空から墜ちてきた…




