コード“斎”1
神の力を操る箱『テレボックス』、そして他の神の力を封じ名を冠する神の力を使用する機神、正直そんな事どうでも良く休みを謳歌する神の一人神華、彼女は一人人里離れた潮風の当たる誰の物か分からない簡素な墓前の前にいた。
(皆に知られたら未練がましいって笑われるんだろうなぁ)
それは上位世界で神華を担当をしていた博士の墓石のつもりで作ったものだった。
墓の前で手を合わせて近況を報告する。
「上位世界だって…アタシ達の新しい敵ですよ?笑っちゃいますよね…」
ブルーな空気を切り裂いて神華の携帯が震える。
「もうヤダ…緊急みたい、また来ますねカスパー博士…」
携帯を開いてため息をつき墓石に背を向け歩き去る。
「あの…アタシ休暇中なんですけど…え?社長が不在ぃ?」
機神対策に研究所で缶詰状態で会社に顔を出していない事から不在の黒鴉の次に上に近い神華に声がかかったのだった。
「なんでアタシが!もう!文句言ってやる!」
しかし一向に繋がらない竜司に更に怒りのボルテージが上がっていく。
「~!!」
声にならない声を上げながら竜司の実家に電話をかける。
『はい、神藤です』
母の優香が電話に出る。
「神田です、社長帰ってます?もしくは黒姫様います?」
『生憎旦那は不在で…黒姫に替わりますね』
イライラしながらヘルメットをしてスクーターに乗りながら黒姫を待つ。
『神華さん?どうしたのですか?』
「どうしたじゃないですよ!社長が会社に顔出さないって騒ぎになっててアタシの休暇が飛んだんですよ!社長はどこですか?!」
『あ、あの…父は研究所で他の神と対策会議に…』
神華の剣幕に黒姫がたじろぐ。
「っち、聞いてないわよ…わかったアタシも会社戻るからあんたも処理手伝って」
怒りでか口調が少し乱暴になっていて黒姫は困惑しながら了承する。
『え!?…わ、わかりました』
二人なら仕事も回せると考え神華は黒姫を呼び出して作業に当たることにする。
通話を切りエンジンを掛けて安全運転を第一に神藤ビルに向かう。
神華が着いた頃には黒姫が必死に書類とにらめっこしていた。イライラしてる神華はぶっきらぼうに挨拶する。
「悪いわね、ちょっと遠出してて」
「いえ、父さんの報告ちゃんとしてなかった私達に責が…」
神華は秘書用のパソコンを点けてメールのチェック作業を始める。
そんな中で神総出で何を話しているのかと黒姫に尋ね事情を聞き出す。
「はぁ、面倒くさ…力を封じる機械なんて作られたら鉄砲でも勝てちゃいますね…はぁ…」
「そうですね…偶々神姫の元で私が動けたから良かったです」
黒姫の言葉に神華の手が止まる。
「偶々?妹様も神の一人として居るなら必然…それに能力としてはアタシと似てシンプルで再現容易そうですし」
神華の言い分を聞いて黒姫がきょとんとする。
「シンプル?…隔離能力が強いからじゃなくて?」
「強い?勘違いですよ。他の神の力ならそんなもの必要ないでしょう?大抵大暴れ出来ます…神を殺すならそっちの方が有力ですよ」
最弱と遠回しに言われて黒姫が落ち込む。
「ほら、早く仕事終わらせて旦那と逢瀬を楽しむんでしょう?」
仕事人モードの神華はサラサラとペンを走らせながら黒姫を激励する。
「へぇ?!そ、そんな…あ、でも翔君も同じビルか…えへへ」
(はぁ呑気に惚気てて羨ましいわね…)
口に出しそうになる思いを飲み込み神華はそれをかき消すように首を横に激しく振ってパソコンに集中する。
黒姫は新しい敵の予感を感じつつも仕事終わりの楽しみに心踊らせる。
定時ギリギリになっても終わらない事を察した神華は黒姫の仕事も請け負う事にして帰らせる。
「あんたは帰りなさい、この借りは社長と黒鴉様にキッチリ払わせるから」
やはり機嫌が悪いのか口調が安定しない神華に黒姫はしょんぼりする。
「あう…すみません」
「謝んな、アタシも作業終わってなくて惨めに感じるでしょうが…」
ペコペコして去る黒姫を見て神華は余計不安定な感情になるのだった。
(あぁアタシってば婚期逃したOLみたい…いやオフィスレディなのは間違いないわね…婚期…畜生め!)




