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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
未来襲来
189/783

コード“蹂”10

「やること、ねぇ…」

歯切れ悪そうに神楽が何もないのが丸わかりの中で考え込む素振りをする。

「無いのね…」

「ごめんなさいね本調子じゃないと思って何も用意してなかったのよ…あ!」

教本片手に神楽は何かを思い付いたように黒鴉に提案する。

「黒鴉ちゃんって商売上手よね?」

「…まぁお父様に交渉術の教育はしっかり受けてるけど」

神楽がウンウン頷いて親指立てる。

「貿易会社作らない?」

翔達全員が「は?」と声を出す。

「食事の革命で各地の食材なんかの貿易に大いに価値が生まれてるけど個人ではどうも話が拗れちゃって…」

困った様子の神楽に黒鴉は悩みながらも了承する。

「…やってみるわ」

少しの沈黙の後黒鴉が何か嫌な予感を感じ取ったのか微妙な顔をして恐る恐る尋ねる。

「まさかとは思うけど…通貨とか、いえ為替とかどうなってんの?」

「なぁにそれ?通貨は銀貨とか金貨あるけど…為替?」

頭を押さえながら黒鴉は必死に冷静になりながらやんわりと説明する。

「その貨幣の価値…ってか共通規格なの?」

「ええ、わかりやすいでしょ?」

翔達も何か問題がと言いたげな顔をすると黒鴉が発狂しそうになりながら叫ぶ。

「貨幣ってのは信用なの!何処が価値保証してんのよ!?国毎に管理しないって狂ってるわよ!?」

経済学について黒鴉が早口で捲し立てて他の全員がおろおろしだす。神楽が必死に学院のある魔法都市について説明するとまた黒鴉が頭を抱える。

「万年永世中立国…あ、ありえないけど…そこが発行しているなら…価値も保証されて…あ、頭が痛い…」

ぶつぶつと文句を言いながらも黒鴉は更なる資料を求める。

「…各地の特色と特産品、地理地形、気候なんかもデータ頂戴」

「なぁにそれ?」

神楽が苦笑いしながら用意がない事を伝えると黒鴉が絶叫する。

「神田ぁ!助けて!データもないのに貿易の算段させるんじゃねぇ!」

「姉さん!落ち着いて!私達も手伝いますから!」

黒姫になだめられて黒鴉は息を整えながら額の汗を拭う。

「わ、私がこのプロジェクト完遂仕切ったら絶対に対価払わせてやるから覚悟しなさい!」

「も、勿論よ…ヨロシクね?」

恨み節の籠った黒鴉の言葉に震えながら神楽はウンウンと頷くのだった。


所変わってアキトは魔法の研究資材の調達で転移魔法を利用しつつ各国を訪ねて回っていた。相変わらず不味い薬を使って世話しなく移動して民主主義な議会制になった白の国へ研究用の水晶の仕入れの為に産出元の山に併設された工房の前に来ていた。

「どーも、学院からの発注書ですよー」

何時もの調子で軽く挨拶しながら中に入る。管理者のお爺さんと最近の景気なんかの雑談をしてペコペコと頭を下げていると顔見知りの男に声を掛けられる。

「アキト殿ではないか、久し振りだな」

元白の国の騎士で現在議員の一人のケヴィンだった。

「ケヴィン!…さん?」

綺麗な髭を生やして少し威厳を備えたようで代わり映えにアキトが首を傾げてしまう。

「相変わらず学院の遣いか…大変だなぁ」

「まぁ、これが仕事だしな。ここには何の用で?」

ケヴィンが頬を掻いて恥ずかしそうに説明する。

「装飾具をな…その…婚姻の」

「マジかよ!お相手どこのお嬢様だよ?」

「…青の国」

ボソッと答えるケヴィンの背中をバシバシと叩いてアキトが満面の笑みで祝福する。

「大々的にやるなら呼んでくれよ?神楽も喜ぶだろうよ」

ケヴィンは気掛かりがあるのか、から笑いして感謝の言葉を述べる。

「姫に申し訳ない…」

「気にするなって!呼ぶなら声掛けようか?」

「い、いや!畏れ多い!」

ケヴィンがたじろいで激しく首を横に振る。アキトは鼻で笑って手を振って工房を後にする。

「んじゃ何かあったら呼んでくれ、何時でも駆け付けるさ」

一人工房から離れて帰る準備を進めるアキトは嫌な気配を感じて手を止める。やれやれと言いたげに背筋を伸ばして溜め息をつく。

「面倒くさいな…まだ仕事残ってるんだけどなぁ」

アキトの言葉に答えるように神螺が現れる。

「勘だけはいいな…」

「何か用か?…お喋りって感じじゃなさそうだな」

不敵に笑う神螺を前にアキトは氷雨を手に取るのだった。


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