コード“蹂”3
「現在地、フランス…エッフェル塔前…」
翔が虚空に向かってぶつぶつと呟いて付き人のアキトと黒鴉そして神鳴が大丈夫かと不安になっていた。
「精神崩壊したか?」
「きっと普段海外に出ないから感動してるのよ」
翔が大声で否定して喚く。
「ちげぇ!ホントに過労死させるつもりか!?」
「まぁまぁ、慈善事業で悪名を相殺する名采配!アキトもいるから大丈夫でしょ!?」
神鳴が翔の背中を擦り黒鴉がニコニコと営業スマイルで翔を落ち着かせる。
「でも何で俺が付いていく必要あるんだ?」
オマケ感覚で存在するアキトが首を傾げて黒鴉に尋ねると黒鴉は翔を指差す。
「アンタもアイツと同じならスペアとして頑張ってもらうわよ?言い出しっぺなら尚更ね」
「俺…消耗品扱いかよ!?」
黒鴉は二人を引っ張り現在は国際連合軍として対応している部隊に合流しようとするのだった。
話は遡り今後の身の振るまいを決める中で神楽の付き人で残っていたアキトが手を上げる。
「アメリカだけに手を貸したとなったらそれはそれで不利益になりそうだし此方からさっさと出向いて手を貸したらどうだ?」
他人事のアキトが鼻をほじりながら質問すると視線が集まり下品な振るまいを急いで止めて真面目な表情をする。
「…情報流出とは別のあくまで慈善事業…アリね」
「待て、それって俺だけ苦労するパターンじゃねえか!?」
翔が愕然として黒鴉とアキトを交互に見て手を振って拒否する。
「ナシナシ!ダメ!」
「…給与も報奨…出すわよ、仕事よ仕事」
黒鴉は本当は嫌だけどと言いたげに震えながら翔に笑みを向けて懐柔する。
「仕事…仕事かぁ」
「最悪友人の…電気使い呼べば良いじゃない?代わりになるでしょ?」
「猪尾…フリーター出し喜ぶか?いや、あれは雑魚じゃないからな…」
友人を危険に曝せるのはと良心が痛み結局自分がやると肩を落とす。
「じゃあ密集してるヨーロッパから行きましょうか」
「…単純に行きたいだけじゃないよな?」
翔が黒鴉を軽蔑するように睨むと黒鴉は真顔で凄む。
「あ?文句ある?」
「無いです」
という経緯で今に至る。
戦闘区域に近付いて黒鴉が得意気に会話をしているのを気が滅入ってるいる翔が遠い目で見ている。
「海外の言葉分からねぇ」
アキトと神鳴も同じように遠い目をする。
「まぁ、もうじき仕事だ気合い入れろよ?」
翔は肩を叩かれて溜め息をつく。
「サポートお願いするよホント」
遠くから聞こえる銃声に気を引き締める。
「動きを止めて溶断で首を落とす。前回は脚だったが首なら…」
「機械だ、生物と一緒にするなよ?」
翔の作戦にアキトは腕組みして意見をする。
「どこが核か調べないといけないし…」
「まぁいいだろう…徹底的にバラしてやれ」
氷雨を手に取りアキトは首を回してストレッチする。神鳴が不思議そうに二人に質問する。
「機械って凍るの?」
「水ならあそこにいる黒鴉が提供するだろ?」
交渉が難航している黒鴉をアキトが指差すと神鳴は「大丈夫かなぁ」と言いたげに目を細める。
「まぁ何かあったら私も力を使うわよ」
「帰れる程度には余力残してくれよ?」
アキトは軽口言って笑って見せる。
二度目になる機械の獣を前にして翔が溜め息をつく。
「同じ型だよな…疲れるからさっさとやろう」
二刀流に構えてアキトと黒鴉にアイコンタクトを送る。
敵は急に相手の数が減って貧弱そうな三人になって首を傾げるような動作をして耳障りな鳴き声を上げる。
「さっさと黙らせて頂戴…聞くに耐えないわ」
「同感…」
黒鴉も剣を構えてバハムートを呼び出して一気に敵を水でずぶ濡れにさせてアキトと連携してあっという間に足下から凍らせて敵が反応するより先に頸部まで氷の塊にする。
「よし、ぶった切る」
翔は覚醒者特有身体能力で敵の背中に飛び乗り頸を切断する為に気合いの込めた全開の火力をぶつける。
敵もやられまいと体を必死に動かそうと軋む音を立てて抵抗し氷にヒビが入る。
「中々の馬力ね…水追加するわ」
敵の力に感心しながらも黒鴉は氷の封を破られないようにヒビの隙間に水を流し込みアキトが再度封をする。
数分の格闘の末に獣は断末魔を上げて頭を落とし動きを止める。
「余裕だったわね」
「まぁそこまで苦労しない仕事だったからな」
汗ひとつない黒鴉とアキトとは別に翔は額から汗を流して息を上げていた。
「い、一日一体で勘弁してくれ…」
「帰ってシャワー浴びてゆっくり休みなさいな」
翔はチラッと残った氷付けの機械の体を見て「機能停止してるよな」と不安に思いながらも一仕事終えて大きく息を吐くのだった。




