コード“蹂”2
翌日の朝になって一旦落ち着いた黒鴉からの状況説明を所属の博士と研究員達に行うことにする。
「何から話せば良いのか…本当に悩んだけど取り敢えず私から言える事は現在進行形で攻めてきてる敵についての情報を各国にデータを提出したわ。匿名のつもりだったけど…その…余計な事して身バレ多分してると思うから…」
歯切れの悪い言い方に何したのかとツムギから追求が飛んで来る。
「多分ってどういう事?何やらかしたの?」
黒鴉が口ごもりながら妹や翔に助言を求めるようにチラチラと視線を送る。一緒にやらかした翔は狼狽える黒鴉に申し訳なくなって事の顛末を説明する。
話を聞いて全員が渋い顔をする。
「まぁちょっと緊急性あったかもしれないけど早計だったねぇ…単純にヒーローとして崇められればいいけど」
ツムギが多少の楽観視した意見を呟いて皆の様子を見る。全員口を紡いで何とも言えない様子だった。
そんな中でヨロズが腕を組みながら高圧的に質問をする。
「それで、現在どういう状況なんだ?敵は健在なのか?」
神威が真っ先に説明を始める。
「現在確認されている反応はこの通りだ」
プロジェクターを通して世界地図に敵が現在地を表示させる。中々の数のマーカーに全員に緊張が走る。
「でも戦えてるんでしょ?」
ツムギが情報流したし大丈夫でしょと不思議そうに言う。
「それが…思っているよりも苦戦している…各国の覚醒者を使っても戦果は芳しくない」
「まぁ精霊無しじゃその程度よね」
鉱石の調査で残っていた神楽がちゃっかり自慢気に話す。
「実際既存の武器、兵器では抵抗は出来ても撃破までは繋がっていないのが現状だ」
「情報のリークは無駄だったということか」
ヨロズはやれやれと首を横に振る。黙っていたマークが口を開く。
「…で、我々はどうすればよい?手助けか?雲隠れか?」
「他の要求次第かしら…やるなら私達が出るわ」
黒鴉が胸を張って宣言して翔が「え?俺も?」と言いたげに二度見する。
「アンタが戦果上げたんだからアンタが過労死するパターンよ?」
「は!?え?!おい!他人任せかよ!」
黒鴉は当然でしょと言いたげに真顔で頷く。
「Kの責任重大だなぁ!」
ここぞとばかりに場を茶化せるとツムギも悪乗りしてくる。
「という訳で何か要請あったら出張って頂戴」
黒鴉もニヤッとして追い討ちしてくる。
(死なば諸共だな…巻き込んでやる!)
翔は海外行くなら通訳要るよなと黒鴉を睨む。
「確か主要言語は大体いけるんだよな?」
「ええ、勿論…っは!」
売り言葉に買い言葉で黒鴉が答えてしまい口を押さえるが出てしまったものは止められなかった。
「嫌よ!私には仕事が!」
鬼気迫る形相で拒否しようとするがそれは俺もと前置きして翔がビシッと指差しして有無を言わさぬ勢いで尋ねる。
「逃げるなよ、お前しか出来ないだろ?!」
黒鴉は誰かに役目を押し付けようとキョロキョロするが目を背けられてガックリと肩を落とすのだった。




