コード“姫”15
黒姫と機神の戦いは技量も実力も黒姫が上回り場の空気感が楽勝ムードになる。
『むむぅ、なぜぇ!作り物の人間の分際で!』
余裕の無い声が響き翔と竜司が呆れた様子で同じ事を考える。
(お前が使ってる力のオリジナルは黒姫とほぼ同じなんだよなぁ)
黒姫が力比べに飽きたのか球以外の形状の技を繰り出す。
「そろそろ壊しちゃいたいと思います」
球の間を縫うように器用に飛び機神脚に直撃し機体が傾く。
『ほ?!何事!』
次々に機体が部位を爆破され機神は攻撃どころではなくなる。
不機嫌な黒姫はトドメと言わんばかりの大玉を打ち出して眩い閃光と爆音が広がり尚も攻撃が続く。
「今でも娘を雑魚だと言えるか?」
竜司が神斎に死んだ目で言葉をかける。
「うーん、今後は言わないよ…」
同じく死んだ目をした神斎が答え、他の皆も黒姫を止められないとドン引きする。
荻原が翔の肩を叩く。
「鬼嫁を止めなくていいのかい?」
「いやスッキリするまでやらせておいた方がいい…」
翔は黒姫のストレスをぶつける様に攻撃するのを見て無理と考えて言い訳をする。
「黒姫ー、そろそろ攻撃ストップ」
黒鴉が声を発して黒姫がハッと正気に戻って攻撃を止める。
ベコベコになって動かなくなった機神を見て黒鴉が呆れる。
「この程度で破壊兵器ね…そこらの戦闘機にすら負けそうね」
「やりすぎましたか?」
黒姫が振り返り悪びれもなく尋ねる。
「まぁいいんじゃない?神威ー力使える?」
音波攻撃も無くなり力が使えるようになった神達が黒姫の代わりに機神に向かって行く。
解体を進める中で黒姫は翔達のもとに戻ってきてはしたない振る舞いを謝る。
「色々とイラッとして…はしたなくてすみません」
「戦えるのは黒姫だけだったし良くやったよ」
翔の言葉に黒姫は嬉しそうにする。
やんややんやと機神を解体していく竜司達が音声の主がいない事に神威が声をあげる。
「おのれ無人機か!では音声の主は…」
「十中八九向こうの世界だろう」
竜司の判断に神威が舌打ちする。
「となるとまだ来るのか…能力封じを何とかしなければ…」
「もしかして私まだ頑張るんですか?」
黒姫が神威の言葉を聞いて頭が痛くなったのか頭を押さえる。
「娘に負担させるわけにはいかない早急に調査と対策だ!…神螺、あんまり壊さないでくれ」
「ん?ああ…ちょっとムカついたからつい拳を…」
神威は調査に必要な機械を抜き取りさっさと研究所に戻ってしまう。
「やれやれ解体するの面倒だぞ…」
残された竜司が壊れた機神の扱いに頭を抱える中で帰る手段を失った翔達も冷静になって頭を抱える。
「あ、車…」
「あー!そうだ俺様の車が!」
ぺしゃんこにされ転がるタイヤの前で跪いて嘆く荻原を見て黒鴉と黒姫も困惑する。
「荻原君車買ってあげるから手伝ってくれないか?」
竜司が申し訳なさそうにお願いすると黒鴉も手伝うから何か買ってと乗ってくる。
「荻原君は黒鴉達のわがままで巻き込まれたんだろう?」
「うぐ…」
しかし諦めてないのか適当に資材を持ち上げてこれも仕事でしょと開き直る。
「もう、姉さんは強欲ですね…う、重い…」
鉄の塊を持ち上げるのに苦労する黒姫の反対側を持つように翔が声をかけてアイコンが描かれた外装を持ち上げる。
「デカし重いな…しかしアイコンは良く描かれてるな」
「恥ずかしいです…」
二人が運ぼうとすると黒鴉が笑いながら声をかけてくる。
「そんなの入り口入らないんだから搬入用のエレベーターに持ってってよね…ぷぷ、やっぱりそれ面白っ」
外装を言われた場所に運んでから黒姫は姉に文句を言う。
「もう、怒りますよ?」
「ごめんって、アンタほんとに力失くなったの?気迫だけなら今も有るわよ」
黒鴉の言葉に自分の髪の毛を確認して首を傾げる。
「どうでしょう…箱使えば暫くは使えそうですが」
「あの箱どうするのかしらね…ま、私には関係ないか」
黒鴉は呑気に腕を後ろ手に組んで細かい部品を運ぶ。
「これで終わるわけ無いよな…はぁ」
翔は無力だった自分を恥じて肩を落とす。
「ちゃんと対策するみたいですし、待ちましょう」
結局研究員総出で日付を跨ぐ程時間を掛けて作業を行い綺麗にすることになるのだった。




