コード“送”14
行ったことも無い地域への不安定なワープだったが優香の受け継いでいる力で何とか安定した転移を行えた。
「夜じゃねーか!」
「当たり前でしょ、時差およそ14時間よ?」
翔と黒鴉と神鳴が降り立った場所は既に避難したのか人気の無いビル街だった。
「敵はどこかしら?」
神鳴が耳を済ませながらあちこち見渡す。
「ニュースじゃタイムズスクエアっぽい所だったけど…」
「…待て、こっからどのくらい歩くのかすら分からないじゃねぇか」
翔の言葉に心配御無用と携帯を取り出して現在地からの距離を黒鴉が計算していると遠くから爆発音が聞こえて黒鴉が顔を上げる。
「多分音がした方!」
「だろうな」
三人は顔を見合わせて音の出所へ走り出す。
標的を見つけるも激しい銃撃戦を目の前にどうすればいいか分からない翔は黒鴉を見る。
「事情説明するか?」
「私の顔知られてたら困るんだけど?」
「そうか、仕方ないな…神鳴?時間操作いけるか?」
翔の指示に神鳴は難しい表情をする。
「どこを?」
何処と言われても銃弾だけとはいかないと判断して翔は米軍を指差す。
「あっち」
「味方じゃない!?」
「銃弾が厄介だしな…」
神鳴は小さく頷いて隙を窺う。その間、翔と黒鴉は敵の動作に注視する。
敵は資料の映像通り5から6メートル程の細身の獣のような機械生物、銃弾が命中してもまるで意を介さない様子で弾かれるような甲高い音がしていた。
「硬そうね…」
「だけど柳のようにしなってる…剛性も弾性も備えてるのはマジみたいだな」
「金属が擦れるような音を立てて咆哮までして…アレで捕食までするのなら完全に生き物ね」
細腕で捕まれてバリバリムシャムシャ食べられるのを想像して翔は青ざめる。
「嫌ねぇ、機械が物を食べるわけ無いでしょ?」
黒鴉は笑うが器用に動き暴れる様にあながち有り得ない話ではないと思い始める。
「変な想像しちゃったじゃない!」
「お前が言い出したんだろ!?」
二人の口論に神鳴が「静かにして」と文句を言って気まずそうに二人は肩をすぼめる。
神鳴は翔に一瞬でいいから敵の気を引くように指示を出して翔は雷怨を呼び出す。
「電撃で気を引く、頼んだぞ」
そう言って翔は狙いを定めて側面から強めの一撃を浴びせる。しかしあまり効いていないのか攻撃した翔の方をゆっくりと向いて軋むような音を立てて翔は予想外な出来事に変な声が出てしまう。
「…いぃ?!」
「機械には電気…という訳じゃないみたいね」
黒鴉の冷静な言葉に翔は頭を抱えたくなるが神鳴の狙い通り敵の意識は逸らせた。すぐに神鳴は銃撃をしている米軍の動きを遅くさせて攻撃が一旦止まり見計らったように黒鴉が翔の背中を押す。
「行くわよ!バッチリ一撃かますわよ!」
掛け声と共に飛び出した二人は武器を振りかざして黒鴉はバハムートの水流で四肢の切断を狙うのに合わせて翔は雷怨に指示を出してもう一度電流を流し込む。
「ぶった切ってくれるわ!」
いつも通り開幕から全力過ぎる黒鴉を翔は心配するがそんな事気にも止めない黒鴉は中々ダメージの通りが悪くイライラし始める。
「水圧でも切れないってどういう事よ!」
「…だが動きは封じているぞ」
強力な水流を前に敵は腕でガードしながら距離を取る。
「浜松、そろそろヤバそう」
「早いな!?…外部装甲が強力なのか…電気も通りが悪い」
「遠距離とかがダメなのかしら」
そうこうしている内に攻撃の勢いと威力が弱まっていき黒鴉が冷や汗をかく。
「何とかしろ浜松!」
「分かったよ。遠距離がダメなら…!」
翔は武器を両手に焰鬼も用意する。
「水がダメなら熱で切る」
「溶断?電気と熱…行けるかしら」
「ダメで元々!」
翔は一か八か電気と炎を用いたアーク溶断を狙うのだった。




