コード“送”11
上位世界、拘留中のクラウスが監視カメラを前に何時になったら解放されるのかを訴える。
「マザー?いい加減赦してくれないかい?」
しかし何も答えはなく相変わらずのヘラヘラ顔でため息をつく。
「はは、参ったね…」
口とは裏腹に表情は変わらず余裕そうにしているとノックの音がして面会用の小窓が開かれる。
「おや?面会かな?」
クラウスの期待の眼差しを受けた扉の先にミレイが顔を覗かせる。
「どうも、クラウス博士」
「あっはっは、マザーってば美女を寄越すなんて気が利くなぁ、どう?入ってお茶しない?」
「お断りします」
ミレイはきっぱり即答してクラウスの性格に呆れながら要件を伝える。
「あなたが隠してたデータ壊させて貰いましたよ、マザーに嘘ついた分の罪も上乗せですね」
クラウスは残念そうに乾いた笑いで答える。
「さぁ、何の事だろうな…でもお互いデータの扱い杜撰だなぁ」
「こいつ…っ!」
ミレイが扉を叩いて怒りを露にするとクラウスは更に挑発する。
「新兵器とかさっさと使うべきなんだよね」
中身を知っていると遠回しに伝える。
「お前にマザーの考えの何がわかる!」
「人工知能の考えなんて興味無いからね」
ガチャンと勢い良く窓が閉められてクラウスはまた監視カメラを見てヘラヘラと「フラれちゃった」とアピールする。
『ならば望み通りアレを使うわよ』
見兼ねたマザーAIの声が響く。
「穏健派はどこいったのやら」
『ミレイが行動した時点で既に決別しているわ…元よりアンタがデータばら蒔く前提で動き回ったのが悪なんだけど』
クラウスはポカンと口を開けて「人のせいですか」とやれやれと首を横に振る。
『大胆なのか阿呆なのか…どんな酷い処遇になるか分かっているのかしら?』
「はは、笑える…どうせ死ぬなら向こうの土の肥やしになりたかった」
軽口を叩くとブツンと不快な音でマイクを切られクラウスは苦笑いするのだった。
現在、研究所の作戦室でボーッと黒姫はプロジェクターを眺めて新技術や新兵器について疑問を呟く。
「うう、分からない…」
神楽が黒姫の様子を見兼ねて話をする。
「新技術、新素材…もしかして黒姫はそれを汎用的な物と見てる?違うわよ、そういうものは革新的な物事が起きない限り無いわよ?」
「…技術革命の事ですか?蒸気機関とか?」
神鳴が頷いてプロジェクターの映像を指差す。
「ああいうのは局所的に使われるヤツよ、黒姫が理解する必要はないのよ」
「そもそもそういう開発ってものは日々行われる物でしょ?神威が興味を持ったのは…この先よ」
黒姫は神楽の言葉にゴクリと生唾を飲み込みジッと映像を見つめる。神鳴が笑って話す。
「でも肩透かしかもよ?…だって」
神鳴の決め台詞を奪うように神楽が答える。
「魔法、彼等が新しく得た技術よ」
「それって…先生が作られたから?」
「何としてもプロジェクトの成功としたかったのね…小馬鹿にしてた魔法を成果物として提出したようよ」
台詞を取られた神鳴は不機嫌気味に「むー」と鳴くが神楽の寂しそうな表情にキョトンとする。
「姉さん?」
「ううん…大丈夫よ、こっちには魔法一筋二千年の神様がいるんだから!」
何かを振り払って神楽は拳を握ってガッツポーズを取る。
「…先生、一筋って科学技術とかは?」
「無いわよ?」
必要?と言いたげにケロッと答えられて黒姫がガクッと姿勢が崩れてふと思い出した事を質問する。
「箱の技術に魔法が取り入れられているなら…でも最初解明出来ませんでしたよね?」
神楽が冷や汗を流す。
「わ、私にだって分からない事あるわよ」
「姉さんの世界も科学技術取り入れたら?」
「…うっ、進歩という意味では取り入れるべきなのかしら」
話がズレて来たところで箱についての説明映像が流れだして鋭い視線が画面に集まるのだった。




