コード“姫”14
食後、黒鴉が父に送ったメッセージに既読が付かず不安になり居ても立ってもいられなくなった黒鴉が良い時間なのに電話で無理矢理荻原を呼び出す。
飛ばして来たのか荻原は少しお疲れの様子だった。
「く、黒鴉ちゃん…俺様でも流石にキツい…」
「デートでもしてやるから研究所まで送りなさい!」
「マジ!?頑張りまっす!」
手の平高速回転に黒姫が呆れて殺気を漏らすが乗せてもらうのでその感情を圧し殺す。
「でも姉さん気が早くないですか?」
「何事もなければそれはそれでいいの、兎に角今はこのモヤモヤを吹っ飛ばしたいのよ」
荻原は車のエンジンを吹かして黒鴉達を呼ぶ。
「黒鴉ちゃん!いつでも行けるぞ!」
翔達が乗り込むと勢い良く飛び出し研究所へ急行する。
「あらあら…あの人にお夜食包んだから持っていって貰おうと思ったのに…」
おにぎりの包みを持ってきた母は残念そうに走り去る車を見つめるのだった。
研究所に着くも特に今のところ何か起きている様子もなく黒鴉はホッとする。
荻原はなにが起きているか何も知らない様子でデートという言葉に心踊らせていて翔と黒姫はこういう時こそ嫌な事が起きるとソワソワする。
更にメッセージを何度も送っていた黒鴉は既読が着いたことに喜び帰ろうとするところに玄関口からぞろぞろと神華を除く神達が総出でやってくる。
「あー、黒鴉ちゃん?なんかヤバい空気じゃない?」
荻原も嫌な予兆を感じ取りゆっくりと黒鴉を見る。
黒鴉も総出という状況にただならぬ雰囲気に冷や汗を流す。
「取り敢えず無事そうだし…メッセージ連打は謝れよ?」
「ですね、素直に迷惑掛けたと謝るべきかなと…」
翔と黒姫は車を降りて竜司達の元に向かう。
「翔君に黒姫まで…全く、皆して心配し過ぎだぞ」
「すみません、姉さんがとんだ迷惑を…兵器だなんて…」
「どうせどんなものが来ようと我々神の方が強いのだからな、がはは」
それもそうだと翔が納得すると荻原と黒鴉も恐る恐る出て来て様子を伺う。
しかし突如黒姫のポケットから警告音のような音が鳴り全員が息を飲む。
「あ、そうだった私もコレ持ってて…いつか渡そうと…」
アラームの鳴り響く箱を取り出して黒姫が引きつった顔の全員を見て慌て出す。
「な、鳴り止まないんですが!どうしましょう!」
「なんかボタンとかあるんじゃないか!?」
翔の言葉に箱をくるくるさせるが何も無くてアワアワし出すと空に轟音が鳴り響く。
「…ねぇ、例のが来ちゃったんじゃないの!?」
黒鴉の言葉に神々が空を見上げ身構え竜司が翔達を下がらせる。
「わたし達に任せなさい!」
四脚の巨大な機械が降り立ち荻原の車を踏み壊す。
「お、俺様の車がー!」
怒る荻原だったが突如機械から耳をつんざく音波が発せられて荻原は圧されて尻餅をつく。
『おや?おやおや!?レポートに載ってる神々勢揃い!一網打尽じゃあないか!』
スピーカーで発せられたムカつく声に神威が機械を破壊しようと手をかざす。しかし何も起きずにムッとする。
「力が使えん!先程の音波か?!」
『ほひー!大当たり、神なんて力封じたら只の人!大人しくこの機神にやられちゃいな!』
ずんずんと足音を立てて前進しながら光の球を発射してくる。
「…神通力も効かないし兵隊も呼べない!っく相手は雑魚の能力なのに!」
神斎も力が発揮出来ないと叫ぶと神楽、神鳴も精霊が呼べず時止めも出来ず後退りする。
『無駄無駄ぁ!大人しく爆散しなさーい』
響く男の声に合わせ光の球が飛ぶ。
父親の前に飛び出して黒姫が一か八か箱掲げる。
「コード“姫”解放!お願い!」
眩い光が放たれ打ち出された光の球が弾け飛ぶ。
『ほひ?何で力が!?』
髪を白くした黒姫が仁王立ちして機神と向き合う。
「ムカつくんですよね…勝手に神姫の名前使わないで欲しいです、あとその変なマーク」
機神の正面に付いているデフォルメされた神姫のアイコンを指差す。
全員がそれを見て笑いそうになり口を押さえる。
『ぐぬぬ!笑うな!デザインしたのは私ではない!…所詮はヒト!神には敵わんのだ!』
光の球を幾つも浮かべるのを見て黒姫は鼻で笑う。
「撃ち合いが所望ですか?幾らでも相手します!」
機神よりも大きな球を作り出してぶつけ挑発する。
戦闘に参加出来ない翔達と神々は絶好調の黒姫を応援するしか出来なくなっていた。
「我が娘ながら…いやぁ恐ろしい、まるで失った半身が戻ってきて…凄く嬉しそうだな」
「実際失ってたんですよね…」
竜司の感想に翔が補足するように呟くのだった。
 




