コード“麗”14
クラウスの確保で話が進む中で黙っておきたかったミレイにマザーの話が伝わり大声を出しながら部屋に突入してくる。
「マザー!お出になられたのですかぁー!」
「うわ、来たよ…」
ツムギが皆の代弁をするように露骨に嫌な顔と態度をする。
「頭が高いですよ!雲の上の存在なんですよ!?」
「向こうじゃ故人という意味では雲の上だよねぇ」
負けじとツムギが皮肉を言うがミレイもにこやかに対応する。
「地に足つく神と違って凄いの一言なのですから!」
「…うん、まぁもうそれでいいや」
ミレイが元気いっぱいに意味不明な事を言い出してツムギが先に折れる。
『部下としては少し落ち着きの無い者ね…』
マザーも興奮しているミレイに呆れ気味ではあるが「それよりも」と翔と黒鴉にギギっと音を立てて首を向ける。
威圧感のある眼光に黒鴉はドキッとして一歩下がる。
「やっぱり大型のロボは威圧感あって嫌ね…神威、またクラウスの場所探すわよ」
「ええ!もっと調べたい!機構が見たいのだが…」
「…じゃあアレ貸しなさい」
ため息混じりに神威から箱を隠れて受け取り妹と翔を連れて作戦室に帰ることにする。
『奴は必ず捕らえなければならない…勝手な技術流出はこちらの望むところではない』
「ふむ、神華が探っているがやはり海外の件は事実なのか…」
神威が面倒そうに頭を掻くとマザーは静かに怒りを呟く。
『組織の下端風情が技術持ち逃げして現地で勝手に成り上がろうなどとお笑いだし示しがつかないわね』
「処するならこっちでやるけど?」
ツムギがへらへらと答えるとマザーの文字通り目が光る。
『此方のお楽しみを奪わないで欲しいものね』
「うわ、拷問とか?悪趣味ー」
他人事のようにツムギが笑うが内心全員が震え上がっていた。
無言で廊下を進む三人の中で翔が耐えられなくなって口を開く。
「まさか向こうのボスが現れるなんてな…」
「そうですね、ビックリしちゃいました。…姉さん?大丈夫ですか?」
黒姫が反応して姉の様子を見るが明らかに無理してそうな顔に驚き恐る恐る尋ねる。
「あれが私とはイマイチ実感が無いのよね…AIだからかしら?それとも並行世界的なのだから?」
ぶつぶつと自分の中の意見を口にしてふと翔を見て尋ねる。
「アンタは他に自分のパラレルな存在どう思ってるのよ?」
「俺?…アキトさんやもう一人のやつか…別人って分別してるつもりだけど…クローンじゃないし」
「じゅあ私もそう考える事にするわ」
きっぱりとマザーとは別人と弁えて作戦室に入る。
「さて、クラウスのプレイボーイは何処かしら?コード“麗”」
自分の顔に向けてプロジェクターが起動して黒鴉が「眩し!」と咄嗟に目を瞑りながら壁に向ける。
「なーにやってんだよ、目大丈夫か?」
翔の茶化すように心配する言葉に毒づきながら黒鴉は目頭を押さえる。
「うっさいわね…どう?映ってる?」
文句を言われてやれやれと翔達が地図を確認して黒姫が答える。
「見えます。研究所とは別に二ヶ所…」
「片方はもう一人の俺じゃないか?両方ともあまり動いてないな」
留まる点を見ながら翔が答えると黒鴉は瞬きを繰り返しながらどっちが正解か二人に聞く。
「どうせ宿無しなら公園とかに居そうだけど」
「一応二手に別れて調べますか?」
勝手にじゃんけんを始める二人に黒鴉は呆れながら翔は自然公園、神藤姉妹は住宅街を探索する事にする。
「モニタリング役は誰にやらせようかしら?」
作戦室を見渡して適当に指名して他の博士が戻るまで無理矢理やらせることにするのだった。




