コード“姫”13
研究所に連れて来られたアレックスは黒鴉の案内でニーナと合流する。
精神的に危険な状態のニーナは同じ組織の仲間を見て部屋の隅に逃げ出す。
「け、消しに来たの!?」
銃を預け忘れたアレックスが銃を黒鴉に渡す。
「ほら、丸腰だ、取り敢えずここは安全らしいから」
「安全?!拷問受けたのに!」
扉越しに黒鴉が訂正と詫びをする。
「尋問官が暴走したのよ、機嫌悪かったみたいだし…ほんとごめんなさいね」
「…っ!」
折られた指に巻かれた包帯を押さえてニーナは何か言いたそうに睨み黙り震える。
「取り敢えず今は大人しくしていよう」
アレックスの言葉にニーナが震えた声で否定する。
「もう遅い、あたいが連絡した時点で…」
「連絡?一体何が…?」
黒鴉も興味を示す。
「え?何が遅い?なんも聞いてないわよ?」
ニーナが恐ろしい事が起きると震え小さな声で説明する。
「来る…世界の制圧しに、皆殺しに兵器が!」
「は?兵器?何それ!?」
黒鴉が扉をバンと叩いて脅かしてしまい謝る。すぐに内容を察したアレックスが黒鴉に補足説明する。
「我々の神への接触が失敗した場合の最終手段です…破壊兵器です」
「破壊兵器?ミサイルとか…?」
「いえ…彼らは機械の神…機神と呼んでいました」
想像と違う答えに黒鴉は少し唖然とする。ニーナが態度悪く叫ぶ。
「制圧して資源を得るために環境破壊するもの使うわけないでしょ!?」
黒鴉は納得して出来るだけ情報を聞き出そうとするが詳細は得られなかった。そこに新しい収監者と聞いて様子を見に来た竜司と神威がやってくる。
「黒鴉…休めと言っただろうに」
竜司が休みを言い渡した娘がいることに目を丸くする。
(あ、やば…お父様に見付からないように帰るつもりだったのに…)
言い訳を考えて新情報で誤魔化そうと機神について説明する。その話を聞いて神威が高笑いする。
「ふはは!機械なら我がいる!負けはせんぞ」
竜司は「そんな事より」と黒鴉に詰め寄ろうとするが黒鴉は面倒事は勘弁と詳しい事をアレックスに託して逃げ去る。
「え?え?」
父親から恐ろしい質問責めされるのを知らずにアレックスは呆気に取られるのだった。
新たな情報を手土産に屋敷に逃げ戻ってきた黒鴉だったが次は母親にやんちゃを咎められる。
「まったくもう、黒姫が心配していたわよ!…私もお父さんも心配するから勝手な事しちゃダメよ!?」
「は、はい…ごめんなさい」
表面上では謝罪するが心の中では自身の行動の問題点を反省して行動事態を省みなかった。黒姫がピョコッと顔を覗かせて姉の心の中を予想して性根は治らないなとタメ息をつく。
その夜、父は機神の話を真面目に対策するために研究所に残る事になり帰って来た翔はその日あったことを色々聞かされる。
「話が進展したと思ったらなんかとんでも兵器がやってくるって…急に言われても誰も信じないぞ普通」
「ですよね…私もそんなもの有るなら最初から使ってるんじゃないかなって…」
翔も黒姫も黒鴉のそれを与太話だと考えるが黒鴉は上位世界の人の話だぞと言うと二人は少し考え込む。
「機神なぁ…黒姫の言う通りどうして今になって…」
「銃一つで神殺しさせようとしたんですよ?多分彼らに他に密命があって…」
「拳銃じゃ神華も倒せてないからなぁ…神鳴がピンチだったけど」
二人の話を聞いて黒鴉がハッとする。
「やって来たつなぎ服の連中は皆確か消耗品って…箱に何か…それに確か通信機で帰るって…つまり発信器の役割とか?」
今箱が集まっている場所を思い出して三人が顔面蒼白になり翔が纏める。
「いずれ箱に気付いて興味を示して集め出す…その間に神を討てればお得ってか…」
「ちょっと!なんで今になってヤバいって事に気付くのよ!オタンコナスのアンポンタン!」
優香が食事の用意を終えて三人を呼ぶがただならぬ雰囲気を見て真面目な顔になる。
「焦っちゃダメよ?ちゃんと英気を養ってから行きなさい?」
でもと言い訳をしようとする姉妹を強く叱りつけられ母には勝てないと黒鴉は携帯で父に警告のメッセージを送ってから食事に向かうのだった。




