コード“麗”7
人質に取られた黒鴉に翔と黒姫は動けず、また、黒鴉は二人に動くなと指示を出して待たせている装甲車に乗り込む。
装甲車が閉まり外から見えなくなった段階でようやく黒鴉は解放され痛めた肩に手を当ててヨロズを睨みながら運転手に研究所に帰るように指示を出す。
「…私の心が広くて良かったわね…で?これからどうする気よ?」
「見捨てられた訳だしワタシもクラウスと縁が切れてせいせいしている…」
ヨロズは「が」と続けて懸念を話す。
「ボランティア達はクラウスの甘言に乗せられたままだ」
「そうね、海外についても気になる事言ってたし…嘘か真か、調査しなきゃいけなくなったわ」
黒鴉はため息をついて細目でヨロズを睨む。
「てか、浜松達に秘密裏に手を回してなかったらアンタ向こう側のままだったでしょ?」
「そうだな、黒鴉嬢が強かな性格で助かった…」
黒鴉は鞄から追跡装置と携帯を取り出す。
「流石にあそこに放置も良くないわよね…さっさと呼び戻すわ」
「今一度謝らないとな…後はマークをどうするか」
「…は?ッチ、あのハゲやっぱりあの糞野郎の手先な訳?」
黒鴉が汚い言葉を吐いて一度口を押さえて「失礼」と口を拭く。
「黒鴉嬢、落ち着いて…」
「アンタから受けた痛みの分の怒りぶつけてやるわよ!…アンタにも次はないわよ?」
黒鴉はヨロズに向かい自身の首を掻き切る動作をする。それを見てヨロズも思いを吐露する。
「ワタシだって彼等を盾に取られなければ…確かに愚鈍な彼等だが大事な同志だ」
愚鈍という表現に黒鴉が苦笑いする。
「戻ったらやること盛り沢山ね…手伝いなさいよ?」
「まだワタシを重用するのか?」
黒鴉はキョトンとするヨロズに呆れながらも宣言する。
「当たり前でしょ!死ぬまで働いて貰うわよ」
「お人好しか阿呆だな…」
「殴られたいのかしら?」
二人は少し打ち解けあった様子で笑い合うのだった。
残された翔達は黒鴉から連絡を受けて一件落着と知りため息を吐く。
「お騒がせだな…」
「姉さん無事だったんですね」
黒姫もホッとするが周囲からの視線に気付いて身体を強張らせる。
「翔君…気付いてますか?」
「まぁな、元敵の巣だし…変に襲われる前にさっさと帰ろう」
面倒事に巻き込まれる前に逃げるように二人はこの場を離れる移動して集合住宅の外に待たせていた荻原と合流する。
「俺様今日はあっちこっち行って大変だよ…」
荻原はへとへとになってハンドルの上に顎を乗せて翔達を迎える。
「はい、もう帰りますので」
黒姫の一言に荻原は二つ返事でハンドルを握る。
「やれやれ、浜松が免許取ってアッシーやれよなぁ…神田ちゃんも黒鴉ちゃんも黒姫ちゃんも人使い荒いぜ」
「免許か…確かに」
翔は荻原に頼りきりは良くないなと真剣に考える。
「ま、勉強出来るかは知らないがな!…あー、早く帰って寝たい」
「運転に気を付けてください」
黒姫にピシャリと注意されて荻原は大人しく「はい」と答えてしょんぼりしながら運転し研究所に帰還するのだった。
先に研究所に戻った黒鴉はヨロズを匿うように裏から入り指示をする。
「とりあえずハゲをふんじばったら自由よ」
申し訳なさそうにヨロズは頭を下げて部屋に籠る。
黒鴉はさっさと一仕事終わらせるためにマークがいるであろう作戦室へ向かう。
「ハゲはどこ!?」
突然の黒鴉の叫びにツムギが呆れた様子で答える。
「出掛けてるよぉ?急にどうしたんだい?」
「どこに?!」
黒鴉の鋭い剣幕にツムギは首を横に振って知らないとアピールする。
「ッチ!逃げた!?」
「…あのークロア?何があったんだい?」
ツムギに聞かれて黒鴉はしかめっ面して少し考えてマークがクラウス派のスパイ疑惑について話すとキョトンとした後に驚きの声を出す。
「ん?うえぇ!?…いやまぁそうか」
「そうか?って、納得しちゃうの」
「まぁ怪しいじゃん?」
ツムギのあっけらかんとした意見に黒鴉が今度はポカンとする。
「薄情ねー、兎に角マークを探さないと」
「うーん、連絡手段とか持ってないと思うからなぁ」
何か無いかとツムギはマークのデスクを漁ってみるが何もなくお手上げとジェスチャーで黒鴉に伝える。
「ダメか…帰ってくるのを待つしかないわね」
仕方ないと黒鴉は神威のデスクにドカッと座りため息をつくのだった。




