コード“或”13
一人で人気の無い街中を進む亜紀人は物陰から現れる魔物を斬り伏せながら進む。
「…小物ばかりか」
目的の科学者を探してチラッと横目で街の掲示板に貼ってあった地図を見る。
商店街や広めの公園といったそれっぽい所に目処を立てて遠回りだが商店街を目指す。
果たして進んだ先には数人の科学者が何か呟きながら能力無効化の機械を操作していた。
「他の能力発動中は機能使えないじゃないか…いい加減な調整だ」
「時間はたっぷりある。アルバートが担当の公園との連絡誰か行ってくれ」
ざわざわと世話しなく動く連中からアルバートはここではないことを聞いて亜紀人はため息混じりにブレードを手に取る。
「おい、アンタら!アルバートはいないようだが…抵抗してくれるなよ?」
臨戦態勢の亜紀人を見てどよめき銃を手に取るが一人が叫ぶ。
「馬鹿!銃は使えねぇ!魔物だ魔物!」
それを聞いて手間取る事が確定した亜紀人はブレードを軽く振ってこいこいと挑発する。
魔物をけしかけながら科学者達は亜紀人の動きが鈍っていないのを見て更にざわつく。
「なんでアイツ重力に異常を感じてないんだよ!」
平然と商店街内で中型の魔物まで出て来て敵の必死具合に亜紀人は鼻で笑うのだった。
遅れて翔達が地図を見ながらどこへ行くか相談する。
「広そうな場所はいくらでもあるな…公園も商店街も学校もあるな…」
「疲れた…公園、休みたい」
黒鴉の意見に翔もそうだなと同意して亜紀人の向かった方向とは逆の公園に向かう。
「翔君も姉さんも…無理しないでくださいね」
座る姉に黒姫が肩を貸して小声で「重い」と呟いて黒鴉が傷付いた表情をする。
三人が何とか公園に辿り着くと大掛かりな機械を操作するアルバートがいた。
「アルバート!」
翔が汗を流しながら叫ぶとゆっくりとアルバートは振り返り手を広げて翔達を称賛する。
「やぁやぁ!クロヒメにK…とどちら様かな?」
誰か尋ねられた黒鴉が辛い重力の中で何とか背筋を伸ばして胸を張って答える。
「私は神藤黒鴉!黒姫は私の妹よ」
アルバートは興味無さそうに「ふーん」とだけ言って翔を見て笑う。
「辛そうだね」
「そう思うなら解いて欲しいんだけど…?」
イラッとした様子で黒鴉は言うがアルバートは無視して黒姫が何ともない様子を見てニヤニヤする。
「クロヒメ、やはり君も優秀だね。どうだ?我々に与すれば相応の立場をあげようじゃないか」
妹への勧誘に翔も黒鴉も不快感を露にして武器を呼び出して叫ぶ。
「ふざけんじゃないわよ!好き勝手してくれちゃってさぁ!」
「アルバート…馬鹿な考えは辞めるんだ」
無理する二人をアルバートは嘲笑うように重力を更に増やして立てない程の負荷にする。
翔も黒鴉も喘ぎ膝をついてしまいそれでもアルバートを睨む。
「プロトタイプの力も悪くないがこの重力…!制圧力なかなかだろう?」
アルバートは高笑いして黒姫を見る。
「さて、答えを…ああ、そうだ、聞かなくていいな」
箱を取り出して神華の力を使って操ろうとする。
「コード“華”!手駒にしてくれる!」
「黒姫!」
翔と黒鴉が黒姫の名前を叫ぶと黒姫は平然として大丈夫と答える。
「…馬鹿な!?何をした?!」
「何も?…というのは嘘ですけど」
黒姫は笑顔で「答える義理は無いです」と伝えて武器のナイフの柄を掴み精霊を呼び出そうとする。
そこに遅れて亜紀人が現れてブレードでアルバートの機械を一刀両断する。
「待たせたなアルバート、殺しに来たぞ」
「…貴様ッ!何者だ!?」
「忘れてるのムカつくな…」
亜紀人がブレードをアルバートに向ける。
「お前…Kか?」
アルバートは後退りしながら二人の翔を視界に入れながら表情筋をピクピクさせる。
「どうやってお前が神になった時の力を箱に落とし込んだのか知らないが…能力の範囲を絞る限り無駄だと思うがな」
弄ぶように亜紀人は挑発する
「…ぐっ、なめるなよ!コード“螺”!」
亜紀人の態度にキレたアルバートは箱を構えて叫びみるみる姿を変えて巨大な竜のような姿になる。
「懐かしいな、神螺のやつか…コード“姫”、タイマンだ」
亜紀人とアルバート二人は結界の中に入り重力効果が解除されて翔達が解放されて悪態をつきながら立ち上がる。
「いいとこ持ってかれたわ…黒姫、本当に大丈夫なの?」
「はい、事前に神華さんにプロテクトかけてもらってました」
「…なにそれ、聞いてないわよ!」
黒姫は箱を手放してニコッと微笑む。
「華の危険性は知ってましたからもしもの時の対策です」
「呆れた…」
「操られたふりして不意打ちで倒すのも考えましたけど…」
黒姫はチラッと翔を見て微笑む。
「翔君を不安にさせない為にも素直に言っちゃいました」
余裕綽々な黒姫を見て翔は悔しそうに苦笑いするのだった。




