コード“或”9
作戦室内にマークの相槌が響き、静かに皆で見届ける。
コソコソと黒鴉は翔に話しかける。
「あの男信じられるかしら?アルバートが器の小さい男なのは分かったけど…なーんか信用できないのよね」
「じゃあなんで迎え入れちゃったんだよ…」
「もう一人のアンタが話に乗っちゃったし…どうせなら纏めて倒しちゃえとか思ったけど不安になってきたわ」
黒鴉の心配が聞こえた黒姫がマークの人柄を説明する。
「真面目でそれなりに機転の利く人物です。ただ策謀を巡らせるタイプじゃないので…」
「詳しいわね…」
「伊達にループしてませんから…」
世界再編の為に苦労した事を思い出して黒姫はため息をついてしまう。
「ループって…何があったのよ…」
当然の反応に黒姫は誤魔化すように笑って答えなかった。
翔が黒鴉に聞こえないように黒姫に話す。
「親父さんがやったことの話は流石に不味いよな?」
「ですね…」
黒鴉は蚊帳の外にされて口を尖らせ二人は平謝りする。
順調に見えたマークの報告に暗雲立ち込めたのはそれからすぐだった。
素直に相槌を打っていたマークの表情が険しくなって言葉に詰まるようになっていた。
「…何事だ?」
亜紀人がマークに小声で話しかける。
「警戒心の高い奴だよ…素直にこっちに来るつもりは無さそうだ」
「当然だ、そこを何とかするのがお前の仕事だろうに」
舌打ちして亜紀人は神姫を連れて離席する。それを見て次に黒鴉がアドバイスする。
「時間が掛かる感じかしら?二重スパイでもなんでも好きにすればいいわ」
「…すまん、そうさせて貰おう」
箱を一旦机に置いてマークは通話を終える。
ツムギが寄ってきてマークの背中を叩いて休憩に誘う。
「休憩するならラウンジで茶でも飲もうよ」
マークは不味い紅茶を思い出して嫌な顔をするがツムギは親指立ててここのは大丈夫と伝えて連れていってしまう。
ヨロズも話したいことがあるのか考え事をしながら追いかけていく。
「さて、どうしたものか…」
カスパーと神華は二人して別の作業をしに作戦室を出ていき残された翔達は顔を見合わせる。
「解散か?」
「そうね…アンタは仕事しなさいな」
辛辣な黒鴉に肩をポンポンされて翔はトレーニングばかりしてて溜まっている仕事を思い出して飛び上がりいそいそと自室に戻っていく。
「さてと…神威は不在みたいだし私達も一旦部屋に戻ろうかしら」
黒鴉はキョロキョロした後、黒姫にそう言って返事を待たずに作戦室を出ていく。
素直に全員居なくなったのに何か引っ掛かりながらも黒姫も姉を追いかけようとする。
(…あ、箱…片付けないとね…?)
サッと懐に箱を隠して作戦室を出ていく。
主要な面々が居なくなったのを見計らってミレイが自分の箱を回収しに来るが無くなっているのを見てガックリ肩を落とすのだった。
研究所の外の空気を吸いに出た亜紀人は連れてきた神姫に愚痴を溢す。
「因縁を断ち切ろうと焦りすぎているのかな…」
「大丈夫ですよ…でも、すべて亜紀人さんが背負う必要は無いと思います」
神姫の言葉に亜紀人は少し考えて首を横に振る。
「…向こうに記憶あるか知らないがやはり他の奴に任せられないな」
戦う覚悟を決めた亜紀人は伸びをして研究所を振り替える。
「さて、マークもそうだが皆どうするか…見物だな」
「ワタシは平和に事が進めばいいと願いますが…」
無理と分かっていても神姫は平穏を望むのだった。




