コード“或”7
着替え終わり一仕事終えた一向がスタッフ達と別れて敷地外に出ると坊主頭の白衣の男が辟易とした様子で待ち構えていた。
「やっと来たか、乱痴気騒ぎも程々にしろよ?」
見覚えのあるスキンヘッドにカスパーは驚いて不用意に近付く。
「マークじゃないか!今までどこに?」
「呑気なモノだ、今は敵同士だぞ」
銃口を向けるマークにカスパーは冷や汗を流しながら後退りする。
苦笑いするカスパーは何とか対話しようと質問をする。
「乱痴気騒ぎっていつから居たんだい?」
「奇抜な格好で酒盛り始めた頃だ、哀れ過ぎて手を出す気にもならなかったぞ」
恥ずかしい所を見られた一向は頬を掻いて各々の言い分を口々にしていた。
「さぁ戦うぞ」
箱を見せてマークは険しい顔をし、玉藻前が呆れた様子で人数の差を指摘する。
「この人数相手にかぁ?」
「紳士的に待ってやったというのにそっちは袋叩きする気か?恥を知れ!」
「恥って、そっちが勝手に外でスタンばってるだけやんか!」
正論だが倫理的にどうなんだろうと翔とカスパーが考えていると黒鴉が前に出てマークに詰め寄る。
「で?一騎打ちでもするのかしら?」
ミレイが黒鴉の身を案じて呼び止める。
「黒鴉様!危ないですよ!」
「黒鴉だと…?なるほどお前がマザーの…」
マークが構えた銃を下げ黒鴉に一礼する。
「…浜松?コイツいい奴じゃない?」
「黒鴉様…そいつアルバート派だと思います」
ミレイの言葉にマークは少し考える素振りをする。
「確かに奴の下で動いていたがアイツの思想に同調した覚えはない」
全員がマークの言葉に懐疑的な目で見て見つめる。
「敵なのは変わりない、構えたまえ」
「後悔しないでよ」
黒鴉が剣を取り出し据わった目でマークを捉える。
黒鴉の振りより早くマークは箱の神姫の力を使い結界を張って一騎打ちの状況になる。
「周囲に危害出さない考慮かしら?」
黒鴉が距離を取ったマークに対して皮肉る。
「何のために一対一になったと思う?」
マークは戦う気を見せずため息をつく。
「いい歳したおじさんがマトモに戦うと思うのか?」
「…はぁ?」
マークは箱と銃を床に置いて話を始める。
「アルバートを誘き出し君達が倒す、どうだ?」
「…いや、ソイツ知らないのよね、浜松に頼みなさいよ」
事情を知らない黒鴉はしかめっ面をしてやる気を失う。
「どうすんのよ…命のやり取りするつもりだったのに」
「君がテレボックスを破壊して勝利でいいだろう」
「…なーんか消化不良ね。まぁそれしか無いなら」
マークが箱を蹴って黒鴉は飛んできたそれを叩き切る。
結界が晴れて黒鴉は飽きた様子で翔に後を託して欠伸する。
託された翔は仕方なく前に出ると二人の間にサッと亜紀人と神姫が現れて翔は「出たよ」と言いたげな顔をする。
マークが亜紀人の顔を見るみなり驚き戸惑い一歩下がる。
「アルバートは元気か?」
探るようにマークを問い詰めると震える声で答える。
「あ、ああ…まぁ…」
歯切れの悪い解答に亜紀人は舌打ちする。
「奴は来ているのか?」
「いや、まだだ…呼ぼうとはしているが下地がない」
亜紀人はチラッと黒鴉を見て成る程と頷き黒鴉に質問する。
「このハゲを護送するんだろ?俺も行こう」
「は、ハゲ?!…スキンヘッドだ!」
マークの反論を無視して黒鴉が答える。
「ええ、そのつもりよ…え?来るの!?」
半分敵なのに着いてくるのはどうなのよと驚くが対アルバートに関して並々ならぬ因縁があるのを思い出して渋々承諾する。
今度こそ仕事は終わり現地解散となるのだった。




