コード”或”5
屋内施設での撮影も終わり翔は黒姫と黒鴉に挟まれて気まずそうにしているとアキトが指差し大笑いしてくる。
「俺の気持ちが分かったか?」
翔が頷くより先に黒鴉が怒り出す。
「はぁ?!衣装でそう見えるだけよ!好意的に見えるっての?!」
全員から見える、見えますの言葉に黒鴉が顔を真っ赤にする。
黒姫はフォローのつもりで言葉をかけてあげる。
「姉さんならそこまで嫉妬しないであげますよ?」
「どういう意味よ!?」
「そのままですよ。翔君と最近仲良さそうですし」
訓練などで距離が近い事を指摘されて黒鴉が考え込んでしまう。
「私…そうなのかしら…」
「黒鴉認めなくていいぞ、面倒くさいから」
翔は必死になって板挟みから逃げようと黒鴉を突き放すように言うが逆にムキになった黒鴉は腕に絡むのを見て発言を後悔する。
ミレイ以外は微笑ましいと笑うが翔自身の倫理観に苛まれる。
カスパーがフォローしようと神鳴を指差す。
「Kは神にも好かれているじゃないか、今更じゃあないかな?」
今更という言葉に衝撃を受けて翔は片膝を付く。
ミレイが何か言おうとしたが慌ただしくスタッフ達が外での撮影をしようと準備を始めて遮られて不満そうに翔を睨んでいた。
外の会場に場所を移してまた違った撮影を始める。
隠れていた亜紀人が神姫とコスプレ大会と化している面々を見て額を抑えて呆れる。
「危機感無さ過ぎるな…」
「ワタシも着てみたかったです」
「悪かった…向こうじゃそういうの出来なかったものな」
言葉通り上位世界では結婚式とは無縁だった神姫の羨望の眼差しに申し訳なくなる。
「いえ、皆楽しそうでしたので…」
亜紀人は悪くないと微笑む神姫だったが寂しそうな様子に亜紀人も苦しくなる。
「アイツらそれなりに揃ってるし今日は帰るか…」
亜紀人が立ち上がると嫌な予感を覚えてもう一度翔達を確認する。
「…コスプレしてなかった女が居ないぞ」
「ワタシ達の子孫の子…ですか?」
ミレイの姿が見当たらなくなりきな臭く感じた亜紀人は神姫の制止を無視して翔達に気付かれないように建物の裏側に移動する。
果たしてそこに箱を隠し持っていたミレイと亜紀人が遭遇してミレイは身構える。
「なにをしている…」
「!?…あなたは…その顔…K?」
殺意のない亜紀人に冷静になったミレイは構えを解く。
「違う、同じ向こうの民を気遣うモノ…といったところか」
箱を持ち出したミレイにがっかりした様子で亜紀人は答えるとミレイは震えた声で翔への恨み言を呟く。
「黒鴉様が…マザーの立場を揺るがす悪魔は…消さないと!」
自分自身の前身を否定された事に傷付きながら亜紀人は説得する。
「今の黒鴉はマザーとは時代背景が違う…彼女を、彼女の友までも巻き込んで幸せを荒らすのは違うだろう」
「でも…!私は黒鴉様を媚びさせたり邪険に扱うあの男だけは…!」
翔への批判は止まらなく亜紀人は苦笑いしてしまう。
「まぁその…なんだ、君の立場が悪くなる行動は控えた方がいい…今の君の居場所は凄くいい所なんだから」
「そう…ですね」
ミレイは箱をしまってため息をついて翔達のいる表に移動して行く。亜紀人は余計な争いを回避できた事に安堵して神姫の元に戻る事にする。
半ばパーティと化した撮影現場では何故かお酒が入った神華と神楽が騒いでいて黒鴉が頭を抱えていた。
「お酒持ち出したの誰よ…」
「撮影用の炭酸リンゴジュースのハズだったんだけどぉー、間違えちゃったみたい」
楽しそうだからいっかと言いたげなスタッフに黒鴉がワナワナと震え出してすかさず妹が割って入る。
「落ち着いて姉さん、撮影はだいたい終わってますので」
「間違いで仕事中に酒を持ち出した精神性が頭に来るのよね!」
社会人としての良識を疑う行動に対して黒鴉は怒りを表す。
「ごめんなさいネェ」
黒鴉は舌打ちして撮影終わったならと着替えに建物に戻ってしまう。それに付き合うように翔と黒姫も追いかけていくのだった。




