コード“姫”11
神藤屋敷、双子姉妹の美人母が帰って来た黒姫と翔の為に腕によりを掛けて料理を振る舞う。
「お父さんと黒鴉ちゃんまだ帰ってこないけど二人の為に料理頑張っちゃった」
絶対三人では食べきれない量の食事に翔が驚く。
「お前の母さんっていつもこんな感じなのか?」
「そんな事ないけど…」
二人の会話が聞こえたのか黒姫母が口を尖らせる。
「もう、翔さん?名前で呼んで欲しいな、優香さんって」
名前を初めて聞くなんて言えずにどぎまぎしていると黒姫が母を注意する。
「茶化さないでください、私達好きでこの屋敷に戻ってきた訳じゃ…」
「もう、悲しいこと言わないで?最近皆忙しくて帰ってこないんだもの…」
竜司も黒鴉も敵の対処にてんてこ舞いのようで事情を知る二人は自然と黙ってしまう。
「ささ、食べちゃいましょ?大企業の社長夫人とはいえこれでも主婦やってたから料理には自信はあるわよー」
ニコニコの母に二人は絆されて食事に手をつける。
竜司と黒鴉が疲れきった様子で黒服数人連れて帰宅してくる。
「あら、お帰りなさいお食事は?」
色々後処理で疲れきった黒鴉は首を横に振り自室に向かい竜司は妻の手料理だと少し無理した様子で卓に着く。
「お疲れのようですが…大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、少し仕事が込み入ってたからな」
声色から何事かあったと察した翔が恐る恐る状況を尋ねる。
「えっと…何か進展あったんですか?」
「まあね、神華…いや、神田君が大手柄でね…黒鴉が少し精神すり減ってるが…」
黒鴉の状況の説明を聞いて優香が怒る。
「まあ!娘に過酷な事やらせたのね!?」
「いや黒鴉が…神田君の手柄に煽られて自分がと志願をだな…」
「何が起きるか分かっていてやらせたのならアナタが悪いわ」
竜司がぐぅと音を上げて押し黙る。
「どんな仕事かは知らないですが必要なら私達も…」
黒姫が首を傾げて聞くと竜司は米を咀嚼しながら考え込む。翔が嫌な予感を感じて黒姫を止める。
「黒鴉が疲弊する程だやめとけって」
「でも、姉さんが苦労して私達だけ動かないのは…」
二人のやり取りに竜司は謝罪から入り語る。
「いや、本来わたしがやるべき仕事だ、二人は普段通りで頼む…娘にやらせる仕事では無かったな」
竜司は何かを決心して自分の分の食事を一気に流し込んで「ご馳走さま」と礼をして自室へと立ち去ってしまう。
「もう、忙しい人なんだから…」
それでも食事をしてくれた事に嬉しそうに微笑み翔達にも完食を急かす。
翌日、竜司と翔は普段通りに仕事に行き、暇をもて余した黒姫は休みを貰って引きこもる黒鴉と姉妹で出かける事にする。
「姉さん、どこか遊びに行きましょう」
「ん…」
黒姫の誘いに生返事な黒鴉の背中を母が叩き屋敷から無理矢理追い出す。
「ほら行ってらっしゃい」
「そんな気分じゃないんだけど…」
「兎に角今はリフレッシュよ!部屋に篭ってないで行きなさい!」
タメ息を吐きながら黒姫に着いていき近場のデパートへ買い物に出る。黒鴉は全く興味は沸かないが流行りの服やグッズを妹と共にウィンドウショッピングしていく。
小物に目を奪われる黒姫を置いてふと黒鴉が辺りを見渡す。
「うわ、最悪…」
「…姉さん?」
黒鴉の悪態に気付いて黒姫が振り替えるとオレンジのつなぎ服の人が目に入り黒鴉はそれに向かって歩いていた。驚き急ぎ姉を止めようと走る黒姫。しかし黒鴉は止まらず叫ぶ。
「ちょっとアンタ!?」
「…!コード“姫”展開!」
黒姫が追い付いた頃には黒鴉は敵と結界の中に入り姿を消してしまった。
「ど、どうしよう…姉さん…」
姉の無事を祈るしかなく家族へ連絡するのも忘れて黒姫は呆然としていた。
 




