コード“姫”9
神藤ビル社長室、一向に解決策が出てこず他世界の襲撃を聞き竜司は焦っていた。
報告に来ていた神楽は面倒な状況だと察する。
「もしかしてまだ防戦一方って事かしら?」
「箱の調査が難航していてな」
神楽が自分の世界の襲撃者の持っていた箱を投げ机に乗せる。
「必要なら使って頂戴、魔力より科学由来みたいだし」
「すまないな、後は使い手を無傷で尋問できればよいのだが」
そこに神斎が苛々しながら文句を言いに現れる。
「なんでボクの世界にも敵が現れたんだい?母さんに迷惑かけてくれちゃってさー」
壊れた箱を竜司に投げつけ竜司がキャッチして壊れているのを見て苦笑いする。
「…壊れているのか?」
「母さんがムカついて壊したみたいだ、で?これからどうすんのさ?」
壊れた箱を机に乗せて竜司が結論を述べる。
「まだ此方から攻撃はできない、分かっているのはオレンジのつなぎ服が共通の制服だということ…」
「着替えてたら分からないわ?」
神楽が水を差すと竜司が苦笑いする。
「正直その通りだが…兎に角!今は見つけ次第倒すしかない、箱を奪えば安全とは限らないしな」
神楽も神斎も口を尖らせ文句を言いたげだったがタメ息をついて仕方ないと素振りして帰っていく。
机の上の箱を睨み竜司は呟く。
「もう少しデータが必要か…」
地球の研究機関で箱について寝ずに調査をする神威は広角レンズで箱に掘られている模様をメモしていた。
「ふーむ、何にどの様な意味があるか…全て記さねば」
独り言を呟きながら作業する中で神華が珈琲を差し入れする。
「どう?もう数日経つけど」
「初日にレントゲンやら何やらで調べたが…我も知らない機構だ、多分音声認識だろうが…」
珈琲を啜り砂糖が足りないと小言を言う神威の相手に嫌気がさして神華はその場を離れる。
別室でパソコンを弄る研究員達にも珈琲を注いで一仕事終えた神華は黒鴉に通話するために地上階に戻り疲れた様子を見せる。
(参ったなぁ…アタシの仕事まだまだ増えそう)
携帯を手に取りふと何気なく玄関口を見る。
(あれ?受付に誰も居な…)
瞬間オレンジのつなぎ服の短髪の女が現れ神華と目が合いニヤリとされる。
(ヤバ!あれ敵じゃん)
「コード“姫”…展開」
逃げる暇もなく神華は敵の結界に封じ込められる。
「最悪…」
悪態をつく神華を見て女は嘲笑う。
「良い身なり、もしかして大物?ラッキー!」
「アタシ殺しても得無いですよ?ただの秘書ですし、なんなら研究室の入室カードとコードあげるから見逃して欲しいかなー」
命乞いしながらポケットの眼鏡ケースから伊達眼鏡を取り出して掛ける。
「ふーん、なんで眼鏡掛けてるの?」
敵は銃を弄びながら神華を舐めるように睨む。
「そうですね…お洒落ですかね。あ、これカードです」
スーツの胸ポケットからストラップにつけられたカードを取り出す。
「その場でアタシ殺したら受け取れないでしょう?解放して欲しいなーって」
女はゆっくり近付きながらはぐらかすように語る。
「どうしよっかなー、まずはそのカードを渡しなさい」
目の前まで来て震える手で神華はカードを手渡すように差し出す。
乱暴にカードを奪い取ると女は銃を神華の額に突き付けてくる。咄嗟に神華は叫び相手を焦らす。
「入室コード無いと無理ですよ!解放したら教えますから…」
「だーめ、今言いなさい」
奪ったカードを確認して視線を外す敵に神華はタメ息をついて突き付けられている銃を握る手に素早く触れ囁く。
「これで貴女はアタシのお人形…」
バチっと強い電撃音が結界内に響き敵は脱力して床に座るように崩れる。神華の唯一の能力である精神干渉により相手を操ったのだ。
眼鏡の位置を調整し直してカードを奪い直し意識のない敵に命令する。
「この結界を解放しなさい」
空間が元の場所に戻り神華は深呼吸する。敵から箱と銃を奪い携帯で黒鴉ではなく竜司に連絡をする。
「アタシです、敵捕まえました。はい、報酬は…休みが欲しいです」




