コード“偽”8
日を跨いで早朝、散歩に出た亜紀人は追いかけてきた神鳴の相手をする。
「正直さ、今のこの環境不満なの?」
「俺の当初の目的は…言っちゃ悪いが神鳴、君が干渉しなかったあの日の続きだった」
「当初?」
突き放されても尚神鳴は亜紀人に絡む。
面倒臭そうに亜紀人は質問に答える。
「…子孫さ、護りたいものが新しく出来れば考えだって変わ…」
「子孫!?やることやってんのね!」
神鳴が食い気味にキラキラした瞳で亜紀人を見つめる。
頬を掻きながら亜紀人ははぐらかすように説明を拒否する。
「はぁ…説明めんどくさい」
「えー、聞きたい!」
服の裾を引っ張りながら更に絡む神鳴に仕方なく答える。
「こっちと向こうでは時間の流れは違うが少なくとも数百年…まぁ結構な数になると思う」
「わー、皆来たければ来ればいいじゃない?地球以外にも世界はあるんだから」
神鳴が嬉しそうに主張すると亜紀人はしかめっ面を見せる。
「簡単に言ってくれるなぁ」
「いいじゃない!翔は考え方がお堅いのよ」
「そう簡単に割り切れる話じゃないんだよ…」
不思議そうに神鳴は亜紀人の主張を聞いて興味無さそうに欠伸をする。
「欠伸すんな、人に嫌な話させといて…」
「だって翔は石橋叩いて壊しそうなんだもの…問題は個人で解決するものであってあなたが一人で何でもする必要ないじゃない」
考え方の相違に険悪なムードの沈黙が流れる。
しかし朝早くに散歩に亜紀人もつい欠伸をしてしまいため息が零れる。
「はぁ、コンビニで何か飲み物買うか…」
「あ!私にも買ってよー」
嫌と言っても駄々言うのが目に見えたので諦めて神鳴の我が儘に付き合うことにする。
近場のコンビニに入り懐かしむようにエナジードリンクを手に取り神鳴の持ってきた飲み物と甘いお菓子に目を丸くしながら会計を済ませる。
「ったく、朝飯食えなくなるぞ」
「お菓子でも生きていけるわ」
神鳴の苦しい言い訳にツッコミを入れる。
「お馬鹿!ちゃんと飯は食え!…っ!」
視界の端に白衣の集団を見つけ亜紀人は飲み物を一気に飲み干して空き缶を神鳴に押し付け集団に向かって走る。
「ちょっと!ゴミは自分で捨てなさいよ!…なにあれ?」
亜紀人の走って行く先を見て目を細める。
「お前は帰れ!」
「誰か呼ぼうか?」
「いらん!」
ぶっきらぼうに答えて亜紀人は一人で敵に向かっていき神鳴は口を尖らせてお菓子を頬張り文句を呟く。
「カッコつけちゃって、まぁいいわ、帰ろ」
神鳴は亜紀人の言葉に従い携帯を弄りながら帰路に着く。
住宅街の裏路地でこそこそと研究員達は何かをしていた。
「おいアンタらここで何してんだ?」
亜紀人は何か機械を弄っている怪しい研究員達に声をかける。
彼らは黙って亜紀人を無視する。
「…無視かよ」
ため息をつきながら亜紀人はブレードを呼び出し研究員達は驚きつつも冷静に銃を構え即座に発砲する。
目にも止まらぬ早さで亜紀人は弾を回避して機械を破壊しないように研究員だけ斬り倒していく。
悲鳴と恐怖の声が入り雑じり最後の一人を残して全員数秒で片付けてしまう。
「…貴様何者だ!?」
「名乗る程の者じゃない…今回は何しに来たんだ?ボスはどこだ?」
「し、知らない!クソッ!どうして…!頼む助けてくれ…!」
男は首を必死に横に振って命乞いしようとする。
「どうして皆そういう反応すんのかね…答えられないなら仕方ない」
スパッと首を跳ねて残った機械を調べる。
(…何の機械だ?)
亜紀人は機械を操作しようと探っているとパトカーのサイレンが響いてくる。
(銃声や悲鳴が響いたからな、当然来るよな…仕方ない機械は任せるか)
亜紀人は建物の屋根に飛び乗り屋根を渡りながらその場を退散するのだった。




