コード“偽”7
夜、苦い顔をする亜紀人の前に神楽が現れる。
「今度は先生か、表舞台に立つとロクなことが無いな」
「会いたくなかった?」
残念そうな顔をする神楽を見て亜紀人は呆れ顔で答える。
「相変わらず泣き落としか…」
ケロっと表情を変えて神楽は本題を切り出す。
「大分擦れちゃって…まぁいいわ。どうしてこっちに来たのかだけ知りたくてね」
「真意を話すとでも?」
神楽は何かを考えて尋ねる。
「ひねくれちゃって…そうねぇ当てていい?」
亜紀人は明らかに嫌な顔をするが勝手に神楽は話し出す。
「今さらこっちで何するかって考えると…向こうの人の未来を救うつもりね?」
「あの世界に未来は無い…だろ?」
「あっちには…ね?」
亜紀人は顔を逸らして舌打ちする。
神楽は得意気な顔をして鼻を鳴らし言葉を続ける。
「向こうで救いたい人でも出来たわね…?好い人?」
「好い人なら既にいる、もういいだろ…」
多くは語りたくない様子の亜紀人に神楽は頷いて笑う。
「じゃあ聞かないわ、それでどうするつもり?当てようか?」
「ほう…検討付いてるか?」
神楽は険しい顔をして答える。
「人の生きやすい世…何を見てきた知らないけどそこまで悪者になる必要あるかしら?」
「あるさ、俺には…」
亜紀人の言葉を遮るように神鳴が姉が来ていると知りやってくる。
「姉さん来てたの!?」
二人は話を中断して神鳴の相手をする。
神鳴は話の小耳に挟んだ内容を尋ねる。
「悪者って何?」
亜紀人が自分を指差して言う。
「俺だよ、どんなやり方しても願いを叶える…その為に皆を欺いてでもな」
神鳴はシャドウボクシングして亜紀人に向けて拳を付き出す。
「なに?皆を欺く?やる気?」
「やめとけ、神鳴も先生も俺には勝てない…」
自信満々な亜紀人に神鳴は腰に手を当て悪態つく。
「何よー!アンタなんか時間止めてちょちょいのちょい…」
神楽が神鳴の言葉に思い出したように声を出して神鳴を止める。
「あ!…ダメよ神鳴…翔の言う通り私達…神じゃ勝てないわ…いえ、人ですら勝てないわ」
「は?なにそれ?」
「神の力も通じない…人を越えた力…」
震える神楽に亜紀人は顔を背ける。
「悪いな、戦うなら容赦は出来ない」
神鳴は呆れたように神楽を引っ張り部屋を出ていく。
「キザったらしい奴ー、もう少し振る舞い直した方がいいわよ?」
一人になった亜紀人は顎を掻いて少しだけ振る舞いについて反省するのだった。
黒鴉は自室にのベッドの上で寝転がりながら携帯で神楽からのメッセージを受けて面倒臭そうに隣の机で本を読んでいた黒姫に伝える。
「もう一人のアイツについての報告来たわ…」
「…アイツ?翔君?」
「そう、ちょっと調べててね…マジ無敵らしいわ」
黒鴉が携帯を投げて唸る。
「マジ無敵?どういう意味です?」
「あー?神の力通用しないのにスーパーパワーだそうよ?」
そんな話に黒姫は首を傾げる。
「なんで面倒臭そうなんですか?味方ですよね?」
直接会った黒鴉は態度や雰囲気から疑い警戒する。
「味方ねぇ…ホントにそう思う?」
「父さんの件は確かに気掛かりですが…今朝助けてくれたのでは?」
知っている範囲で聞き返す黒姫に姉はあっさりと会って話した事を伝える。
「今日浜松と二人で会って来たわ」
「…え?ええ!?」
大袈裟に驚く黒姫に二人でとわざと強調し伝えた事を少し後悔する。
当然のようにショックを受けたように黒姫は叫ぶ。
「なんで私除け者なんですか!?」
「い、色々あったの!…まぁ暫く協力は漕ぎ着けたから…」
言い訳しながら前向きな結果を伝えるとしょんぼりになった黒姫は首を傾げる。
「協力してもらえるなら尚更味方では?」
「それが直接会って信用出来そうにないからこうして探っているんじゃない」
亜紀人の態度を思い出してムカッ腹立ったのか枕を殴り深呼吸する。
「腹に一物抱える奴よ…?今のアイツの数倍嫌な奴よ」
翔に対する恨み節に何かを感じた黒姫は苦笑いしながら聞く。
「翔君と何かあったのですか?」
「な、何もないわよ!あんな奴ぅ!」
バレバレな嘘をつく姉を微笑ましく思い黒姫は読みかけの本に栞を挟み閉じ伸びをする。
「素直じゃないですねー」
「あ?!」
黒鴉の威圧にも負けず妹にニコッとされて逆に黒鴉が怯む。
「…わ、私は私を好きにならない相手なんて…」
「姉さん?」
逃げるように黒鴉は布団を被ってふて寝する。
それを眺める黒姫は呆れて呟く。
「もう、ヘタレちゃうんですから…」
くぐもった声で黒鴉は稚拙に罵倒する。
「ばーか、ばーか!」
仕方ないと黒鴉の説得を諦めて黒姫は自分も寝ることにするのだった。




