コード“姫”8
依頼を終えたアキトが神楽に報告をするついでにお土産の水晶細工のあしらわれた髪飾りを取り出す。
「あら?あらあら?どういう風の吹き回しかしら」
「素直に喜んで受け取れ」
気恥ずかしくなったアキトがつっけんどんな言い方で手渡す。
「土産っぽいキーホルダー見てそんな気分になったんだよ」
「えへへ、あーニヤニヤが止まらないわ」
幸せそうに髪飾りを手に取り頬擦りしそうになる。
そこに一時預かりな神鳴が現れて羨ましがる。
「あー!いいなー!アキト!私には?」
すっかり神鳴の分を忘れていたアキトが思い出したかのように箱を取り出す。
それを神鳴も神楽も「は?!」と驚いた声と表情で見つめる。
「な、なんだよ…?」
「アキト…あんたそれどこで!?」
アキトは事情を知らないので首を捻りながら答える。
「変な男から…いや、まぁ敵らしかったし」
「その男ってオレンジのつなぎ服?」
神楽の言葉にアキトが強く頷いて驚く。
「そうそう、よく分かったな!なんか神殺しの命令受けて来たみたいでな、たまたま見付けたから声かけて酒飲ませたら…」
「も、もういいわ、倒したのね?そう…地球以外にも来てるのね」
神楽が頭を抱え困り顔になる。
「うちにも来てるなら…他もヤバいわね」
アキトが何の話か分からないとジェスチャーする。
神楽が説明しようかと言葉を出す。
「敵についてなんだけど…」
「まぁそういうのは神様に任せるわ、決まったら教えてくれ」
面倒な話になると判断したアキトは退散してシュメイラの所に向かう。
研究室で薬の調合して授業用の薬を作成していたシュメイラが再びやってきたアキトに驚く。
「ひ?アキト君!?」
「髪型くらい直せ、ほれ」
アキトは背に綺麗な鉱石が埋め込まれたヘアブラシを軽く投げ渡す。
「あう、これは?」
キャッチが下手で肩にぶつかり手に転がり落ちる。
「お土産」
「ふひ、大切にするよ」
ギシギシな髪に試しに通してみて引っかかりに苦戦し痛い思いをしながらもニコニコする。
―――
魔石にされた玉藻前は自身の生まれ故郷である神斎の世界の実家の和風屋敷にて母親の美しい化け狐の葛之葉の空手チョップで魔石を割られ復活する。
「酷い目にあったわ…どこや、あ!」
母親の怖い笑顔を見て目を丸くして震える。
「タマちゃん?油断して殺られるのは良くない癖ね」
「か、母ちゃん…」
神斎が横になって不甲斐ない義妹を笑う。
「たく、遊びに行って死に戻りとかさ、ボクの面に泥何回塗る気だよ」
「せやかて、急に挑まれたら混乱するやろ?そこをズドンや」
神斎がイラつきながら食卓の上にある筆を神通力で飛ばす。玉藻前はすぐに反応してそれを掴む。
「出来るじゃん」
「むむむ…」
喧嘩が始まると予見した葛之葉が二人を窘めて台所へ向かう。
「喧嘩はダメよ?苛々には何か甘味を用意しましょう」
しかし何も小腹満たしが無いと気付くと何か買い出ししようと葛之葉が二人に声をかける。
「あ、ウチが行くで?」
「母さんに任せろよ、無駄遣いするだろ?」
「なんやとー」
早速口論を始めようとする二人の為に急がないとと葛之葉が走って外に出ると他世界と同じく敵の姿が目に入る。
「どちら様…かしら?」
見かけない派手なオレンジの色の服に怪訝な顔をする葛之葉に敵の男は有無を言わさず箱を突き出し神斎達にも聞こえそうな声で叫ぶ。
「コード“姫”展開!」
転移すると同時に銃を構える男に葛之葉が表情一つ変えず睨み続ける。
「神はどこだ?」
「惜しかったわね…あとちょっとの所に居たわよ?まぁ貴方ごときじゃ到底敵わないけど」
男が引き金を引くのに合わせて腕が葛之葉の神通力で捻られ自分の顎から脳天に向かい撃ち抜き絶命する。
元居た場所にいつの間にか戻っていた葛之葉は冷たい視線で落ちた箱を汚い物を拾うように摘まみ呟く。
「憐れね、神を殺そうなんて後一万年くらい必要なんじゃないかしら?」
グシャッと神通力で箱を破壊して葛之葉は着物の裾を払い買い物に向かう。




