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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
未来襲来
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プロローグ1

物語の始まりは何時だって唐突で、世界を救い未来を勝ち取った青年はまた災禍に飲まれていく。

救世の英雄は静かに社会人一年目として内縁の妻の双子の姉でかつてのライバル(?)の下で必死に働いていた。

敵だった神々も義理の父の下でそれぞれ仕事をし社会は異世界を受け入れ着実に変わり、些かな争いを残して平和になっていた。


空は鉛色、どんよりと今にも雨が降りだしそうなお昼過ぎ、愛妻弁当をデスクで食しながら近場から聞こえてくるアイドルだのドラマだのという話に興味は沸かないものの話題に耳を貸しペットボトルの紅茶を嗜む。

弁当を食べ終え片付けをしていると聞き慣れた嫌な声がして青年は苦い顔をする。

「浜松いる?そう浜松翔(はままつかける)、あいたいた!」

左目が隠れる前髪の青年の名は浜松翔(はままつかける)、一部の神と人物だけが知るこの世界の救世主だ。

その彼を自信満々な笑みを浮かべ気軽に呼びつける同年代の会社に似つかわしくない黒いゴスロリドレスの女性、翔の働く会社の上の上、神藤財閥の社長令嬢で売り出し中タレントの神藤黒鴉(しんどうくろあ)である。

「何の用ですか?黒鴉さん?」

近付いてくる黒鴉に他人行儀で応対しようとする翔だったが黒鴉の次の一言で素に戻る。

「お父様が呼んでるわ、業務中断してでも来てちょうだい」

「義父さんが?」

翔の義父と言う言葉に黒鴉は軽く舌打ちをして機嫌を悪くする。

「そうよ、急いで休み時間も返上しなさい」

無茶振りをしながら黒鴉はフンと鼻を鳴らして去っていく。

回りの同僚からヒソヒソと何かを言われるが気にしないようにして翔も急いで黒鴉を追いかける。

黒姫(くろひめ)との結婚決まってからもずっと嫌われっぱなしだなぁ…前からか)

彼女を追いながら未だに良く思われていないことを心の中で愚痴りながら歩く。

「全くどうしてお父様も妹もあんた何かに信頼寄せるのかしらね、私の方が…」

自分に絶対的な自信を持っている黒鴉は庶民の出自な翔に聞こえるように愚痴る。

「それはもう死ぬ思いで努力したからな」

翔も負けじと黒鴉に聞こえるように答える。

社長室の前まで互いに譲らず口論に近いような小言を吐きながら道行く社員達を困惑させていた。

「さて、着いたわ…」

何故か緊張した面持ちで黒鴉が呟く。

ノックしてドアノブを捻り二人で中に入ると大きなデスクに社長であり神々のトップである神竜(しんりゅう)こと神藤竜司(しんどうりゅうじ)が深刻そうな表情で肘をついていた。

「ああ、来たか。早かったね?」

翔は昼休み返上と余計な一言を言いそうになるが雰囲気に圧され固唾を呑み竜司の次の言葉を待つ。

「上位世界が動いた、隠匿された我々を見つけ出したようだ」

上位世界、竜司を含む神々を造り出し今ある世界を創造させた者達の住む世界の事であり本来は消えて無くなる運命だったものを紆余曲折あり翔と黒姫の努力で回避して切り離したはずの世界だ。

「何故今になって動いたかは分からない…暫く前から兆候はあったのだが」

黒鴉が小耳に挟んでいた情報を元に呟く。

「やっぱり滅ぼすべきだったんじゃない?」

神々を救うための選択で結果的に破滅を回避している上位世界の侵攻を聞き翔も不安になる。

「もう一人の俺や神姫(しんき)はどうなったんですか…?」

向こうの世界に残った神になったもう一人の翔と神の一人の命運は誰にも予測できず、翔の言葉に竜司は首を横に振る。

「近い将来必ず何かが起きる。その時は娘達共々、キミの力を貸して欲しい」

深々と頭を下げる義父に三度目の災禍を告げられ翔は覚悟を決めて強く頷くのだった。

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― 新着の感想 ―
社会人として元敵であった神々と共に新たな危機に挑むというユニークな設定が面白いです。現実と異世界の要素がうまく融合されていると思います。
[良い点] 状況が分かりやすくて、とても読みやすかったです。1話あたりの長さもほどよく纏められていて素敵でした。黒鴉さんのキャラになんとなく惹かれました。 [一言] 不穏な展開がお義父様からいい雰囲気…
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