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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

僕がはじめて恋をしたのは、聖女のような美しい女剣士だった。

作者: 藤原 柚月
掲載日:2022/03/09

勢いで書いた作品です。


深く考えずにお読みください。


火花が散る街中は、人々の悲鳴と魔物の唸り声が響いていた。


その魔物とは炎の蜥蜴(サラマンダー)が一体。炎を全身に纏っている蜥蜴(トカゲ)だ。

サラマンダーは上級モンスターで、とても凶暴な性格をしているが、何もしなければ街中に来て暴れることはしない。


大方、密猟者(ハンター)がサラマンダーの子供を捕らえて来てしまったんだろう。

子供を攫われて怒った親のサラマンダーは街中まで子供を探しに来た、ということだろう。


多分、素人なんだろうな。子供を連れ去るなら親の存在を警戒しなくちゃいけない。ルール(決まり)があるんだから。


そんなことを呑気に考えてるのは、僕がもうすぐ死ぬかもしれないからだ。

見てみろよ。瓦礫に足を挟んで身動きが取れないんだぜ。

僕の人生、終わっただろ。


こんな危機的状況で生き延びたいだなんて思えない。高望みしてしまったら死ぬ間際に変な感情になるだろ。


……ああ、こうなるんなら恋人の一人や二人、作るんだったなぁ。


僕、こう見えて意外にモテるんだよね!!

身体は男性、心が女性な方たちに……。


いや、泣いてないからね!!

これは、空が青すぎて涙が出てしまうんだ。コンチキショー!


「キミ、大丈夫?」


透き通る声が聞こえ、その方角へ顔を向けると金髪に灰色の瞳。騎士団の服を着ていた。


「んん? ああ、とうとう僕は幻覚まで……。こんな美人さんに声をかけられるだなんて、君は男だね!!」

「……は?」

「いいや、みなまで言うな。わかってるんだよ。僕に話しかける人はみんな男性で心が女性なんだ」

「……は、はぁ?」

「そして、僕は男性は好きじゃないんだ!」

「……」


その人は、灰色の丸い目をぱちくりさせた後、腹を抱えて笑いだした。


「あははははははっ!!! お腹痛い!!」


なんだ? なんなんだ?


図星を突かれて気でもおかしくなったのか!?


「おかしなことを言うのね。あー、面白い。キミ、さいっこう!!!」


笑いすぎて涙目になっている。


「でも、キミの期待通りじゃなくて、悪いんだけどさぁ。私、女なんだよね。あっ、身体も中身もだよ」

「……へ?」


なにを言ってるんだ。女性なら膨らみがあるはずだ!!

それなのにその人は膨らみはなく、……まるでまな板のようだ。


だけど、嘘を言ってるようには見えないし……。


透き通る声だって女性らしい。

えっ、本当に女性?


こんな胸が無い子が!?


世界は広いな。


「コレット!! こっちを援護してくれ」

「あっ、はーい!! 今行きまーす」


仲間らしき人物が名前を呼び、彼女は返事をする。


「さて、と」と、一呼吸してから、腰に下げてあった鞘から細長い剣を引き抜く。


剣を上に掲げ、


「爆砕・乱舞」


その声と同時に、剣を地面に叩きつけ、欠片が飛び散るかと思いきや、欠片が剣を中心に渦のようになった。


ーーそして、


次第に竜巻のようになり、瓦礫を削っていく。というよりも、飛ばしていく?


それはあまりにも器用なもので、瓦礫だけを消し去り、瓦礫の下敷きになっている僕は無傷だった。


「ヒール」


彼女は休む間もなく、僕の足に触れ、回復魔法を使ってくれた。

触れたところがほのかに温かい。


「もう、大丈夫。避難所は北東の方角にあるから」


ニコッと微笑むその人は、まるで聖女のように美しかった。


すぐに仲間の元に向かおうとした彼女を咄嗟に引き止めた。


「ま、待って! 君の名前は?」

「コレット! コレット・キャンベルだよ」


彼女は走り出した。


炎が舞う街中を颯爽と駆け抜ける彼女の後ろ姿は「戦士」そのもので、誰よりも美しく感じた。


ーーそれが僕と彼女の最初の出逢いだった。




ーーーーーー


数ヶ月後、稽古場にて。


「うおぉぉぉぉっりゃぁぁぁっ!!!」


叫び声と、剣を振るう音が周囲を緊迫状態にする。


剣と剣がぶつかったが、それはほんの一瞬で剣は飛ばされた。


「新人くん、まだまだ修行が足りんぞ」


ニカッと笑いながら剣の刃を僕の首元に当て、見下ろすのはいつぞやの彼女だった。


「そ、その新人くんって言うのやめてください」

「じゃあ、私に剣を弾かれないようになったら考えよっかな」


街が炎に包まれたあの事件から数ヶ月。

僕は騎士団に入った。

その理由は、彼女、コレット・キャンベルに惚れたから。


「どんまい、ケネス。相手が悪かったな」


僕の肩に腕を回して体重をかけてきたのはニコラス・ニック。

茶髪で黒目な彼は、とても気さくで面倒見がいい。


「茶化すなよ。ニコラス……はぁ」

「ま、まぁ、女に負けたから落ち込むのもわかるけどなぁ」

「いや、違う」


そう、落ち込んで見えるのはニコラスの見間違えだし、思い込みだ。


「い、いいい、今の見た!? さっきの剣さばき見たよな!! 可愛い!!」

「剣さばきって……可愛いか?」

「コレットさんの剣さばきが可愛いんだ!! 華奢な身体で頑張って剣を振ってんだぜ!! 可愛くねぇか?」

「ああ、はいはい。そうですね」


ニコラスは呆れたように深くため息をしてから汗を軽く流してくると言い残し、去っていった。


「さて」


ニコラスの姿が見えなくなってから、僕はコレットさんを探すことにした。


ニコラスとは同期だ。同じ時期に入った。

そして、騎士団の中でも一番仲がいいだろう。


僕自身、二言目にはコレットさんの話題を出すのでニコラスは羨ましがっている(呆れている)。


だってコレットさんは可愛いんだ!! 良い匂いもするし。


ハァ……ハァ……。


ダメだ。コレットさん不足で死にそうだ。


補充したい。


逢いたい、抱きつきたい、匂い嗅ぎたい、髪の毛を切って家宝にしたい……。


この前、髪の毛をくださいって言ったら「それは困るわ」と、はにかみながら断ったんだよな。


「私の髪はキミの髪色と違うから目立つよ? それにまだハゲてないじゃない」


と、俺の髪の毛を見ながら心配そうに言ってきた。


僕の髪の毛を心配してくれるだなんて、なんて優しいんだ!!

そんなコレットさんも愛らしい。


だけど、ハゲたから髪の毛を欲しがったんじゃなかったんだけどな。


貴族の間では、平民の髪の毛を集めて自分の頭部に被せるのが流行っているが……。


僕はそんな趣味はない。ただ、コレットさんの髪の毛をスーハーしたいだけだ!


「コレットさん!」


コレットさんのことを考えながら歩いていたら、コレットさんを見つけて声をかけた。


「あっ、新人くん。どうかした?」

「いや……」


逢いたくなったから探していたので、なにも考えていなかった。


どうしようか。


コレットさんは、三度の飯より剣が好きなんだっけ。


休日も訓練してるぐらいだしな。


可愛い趣味してるよな。


ああ、ほんと、可愛い。

食べてしまいたくなるほど。


「剣の修行に付き合ってください。早く、一人前になりたいんです」


ぶっちゃけ、僕は剣というよりもコレットさんに興味津々なのだが。


コレットさんは考え込んでいたが、すぐに僕の目を真っ直ぐに見て二つ返事で返してきた。


よし!!


これで二人の時間を作れた!!


コレットさんとの絆を深めるチャンス! 絶対に落としてみせるぞ。


「新人くん、私嬉しいわ!! そんなに剣に興味があったのね!!?」


ななななっ、なんと!!


コレットさんが僕の手を握って愛らしい笑顔を見せてくれる。

幸せだぁ。


僕とコレットさんの二人だけの特訓がはじまった。


ーーーーーーーー


【コレット視点】


私、コレット・キャンベルは騎士団唯一の女騎士。


騎士になった理由は、騎士団の団長様。アルベルト様に憧れてのこと。


元々家も貧乏だったし、死と隣り合わせというデメリットが多少あった。


だが、給料も高くアルベルト様のお傍に居たいという気持ちが大きすぎて、入団してしまった。


そんな私にも慕ってくれている人が出来た。


その人は、黒髪に橙色の男性。名前はケネス・クロウ。以前、街がサラマンダーに襲われた時に出会った男だった。


はじめての弟子が出来たみたいでウキウキしていたある日、私は見てしまったのよ。


アルベルト様が頬を染めて愛おしそうに優しく、ケネスの頭を撫でていた。


ケネスも満更でもなさそうな表情をしていた。


私は気付いてしまった……。


ケネスは私の恋敵ということに!?


もしかすると、慕っているフリをして私を亡き者にしようとしてるんだね!!?


そうはさせないわ。


この私の修行は地獄だったと後悔させてやるんだから。


意気込んでいたのだが、ケネスのタフさを身をもって思い知らされるのはまた別の話。


ブクマ、感想、評価をお待ちしておりますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)なるほど。心は女な人に好かれる男の恋物語っていう設定ですね。この感じのシュールさは大好きって訳じゃないけど、決して嫌いじゃない(笑) [気になる点] ∀・)ある程度考えて読んだほうが…
[良い点] おもしろかったです。 ケネス君の今後の成長やコレットさんとの恋の行方も気になりますね。 それ以上に、団長さんがどう動くかに期待もふくらみます。
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