老いを語る
ボクはあの子が好きなんだろうか。
最初に告白された時、あの子はまだまだ子どもで恋愛対象に見ることはできなかった。
そもそも避けられていたから、本当にあの告白には驚いた。
ボクにとって、あの子は庇護すべき対象だった。
それから長い長い時が経っても、あの子からの想いは変わらなかった。
いつしか、あの子は庇護する対象ではなくなった。
いつからか、ボクが庇護される対象となった。
ボクが好きになった人、ボクを好きでいてくれる人はすべてあの子が排除した。
ボクと関わる人間はあの子だけになってしまっていた。
そしてボクはもう老人と呼ばれる生き物になった。
もう、あの子無しでは生きていくことはできない体になった。
こうなって初めてボクはあの子の想いを受け入れた。
三十も下の子を恋人として迎えたのだ。
ボクはもう、あの子に縋るしかない。
あの子なしでは生きていくことはできない。
ボクはあの子が好きなんだろうか。
いや、きっと愛はないだろう。
それでもボクは、残り僅かな人生をあの子と一緒に生きていかなければならない。
全てをあの子に握られながら。
それがたまらなく恐ろしく、悲しい。