手を上げて横断歩道は渡らない
「これは『とも』から聞いた話なんだけどさ〜……ちなみに漢字で書くと強敵な」
強敵とは拳で語るのが定番なのに、聞いた話って……もうそれ強敵じゃないやん‼︎ とはいえ、拳を怪我している可能性も否定出来なくもない。ここは様子を見よう。
「子供の頃に、横断歩道を渡る時は手をあげるように習ったよな」
「あぁ〜幼稚園か小学生かは忘れたけど、誰もが交通ルールを教わった事はあるとは思うよ。今でも実際に手を上げて横断歩道を渡っている子供達を見る機会もあるもんな」
「ところが、大人になるに連れて、手は上げなくなる」
「確かに……なんか恥ずかしいもんな」
「でも自分が親になり子供が出来ると、子供の為に一緒に手をあげるのさ」
「自分の為ではなく、我が子の為かぁ〜」
「そして晩年になると無敵になる」
「なにそれ……どういう事?」
「老人となった今、我に怖いものはない。つまりどの状態であっても、道路を横切る事に一切の躊躇いは必要ないのだぁ〜」
「急にキャラ設定してなりきっているけど?……確かに横断歩道もない交通量の多い普通の道路で、手を上げて渡っている老人を見かけるけどさ」
「左右の確認なんぞしない。信号が少し先にあったとしても、そこまでは行かない。我は目の前の道を今すぐにでも渡りたいだけなのだ。その為に全てはひれ伏すがいい〜〜」
「いや、そこはちょっとくらい遠回りでも横断歩道や信号まで歩けよ‼︎ 危ないよ‼︎」
「こうやって手を上げているのだから文句はあるまい。『免罪符』を手にした事で、我は無敵モードとなり堂々と道路を横断出来るのだ」
「手を上げたくらいで全てが許される訳がないだろ‼︎ つか、それ『無敵』じゃなくて『無謀』だよ‼︎」
「我が生涯に一片の悔いなしのポーズだから問題ない」
「問題大ありだよ‼︎ 世紀末覇者がそのポーズで横断はしないわ‼︎」