自転車乗りとクロスバイク(その1)
「これは、食堂のおばちゃんから聞いた話なんだけどさ……」
確かにココ食堂だから厨房におばちゃんおるけど。……それ以前に、今日に限ってヒロトは注文し過ぎじゃないか?ラーメンにチャーハンはまだわかるよ。さらにカレーに牛丼ってどんだけ食べる気だよ‼︎ フードファイターでもやる気かのか? それなら全部食べれるのか、ここは様子を見よう。
「クロスバイクを買った時の話なんだけど」
「その前にクロスバイクって何?」
「あぁ〜そこからね。簡単に言えば、競輪選手が乗っているのがロードバイク。それとママチャリの間ってとこかな」
「ざっくり過ぎるな」
「例えるなら、ラーメン食べたいけどチャーハンも食べたいって事かな」
「例えもざっくり過ぎて、訳わからんよ」
「え〜これでもわかんないんかよ。……んじゃ、カレーも食べたいけど牛丼も食べたいって事かなぁ……」
「何で食べ物ばっかに例えてんだよ。つか、用意周到過ぎるだろ‼︎俺の質問を予測して、テーブルに全品並べるなよ‼︎」
「きっとその質問をしてくるとすると読んでいたんで、テーブルに並べて置いてみた」
「腹たつわ〜。予想通りの展開で、さぞ気持ちいいだろうな〜。でも、飯が冷めるから先に食べていいよ。全部食べられるならばな」
「残りはスタッフが美味しくいただきました」
「俺は、スタッフじゃないから食べないからな」
「……んじゃ、急いで食べるから明日まで待って」
「待てるか‼︎」
ヒロトはそう言いながら食べ始めた。ヒロトとは長い付き合いだが、大食いの印象はない。いくらネタフリの為とはいえ、ここまで身を削るとは思わなかった。当然、食べ切れるはすがないだろうという予想も裏切られる。ガチでひたすら食べ続け全てを完食した後、ヒロトはようやく本題に入った。
「ロードバイクはスピードに特化した自転車なのさ。そのために軽量化を行い、必要最低限の部品しかない。つまり純粋に高速に走るために設計された自転車なのさ。対してママチャリは長期に渡る移動手段が目的。さらに安全面に配慮され、荷物や子供など同時に運ぶ目的も備えている」
「なるほどな」
「クロスバイクはその中間の要素。つまり移動手段のための耐久性や安全性に優れ、それでいて高速性も備えている。初心者が乗るには手ごろな自転車だよ」
「最初からそういえよ。ラーメンとかチャーハンと言われてもわからんかったよ」
「両方の美味しいとこ取りって意味だよ。んじゃ次は餃子と焼きそばを頼もうかなぁ〜」
「まだ食うんかよ‼︎」