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自転車乗りと透明人間

「突然だが、俺の姿は見えてる?」


いきなりヒロトは、なに言ってんの? 俺に霊感でもあると思っているのだろうか? そして、この場合はどうリアクションすれば正解なんだ? とはいえ、この質問自体が俺に対して問いているかもわからない。ここは様子を見よう。


「……」


「なんで無言なんだよ?やっぱりお前にも俺の姿は見えていないのか?」


「あ、やっぱり俺に聞いていたのね」


「お前以外に誰がいるんだよ」



いやここ食堂だし、昼時だし、周りも食事している人は大勢いるし……とは言えず、素直にヒロトに謝った。


「悪い悪い、さすがに霊的な話なら、俺は席を外そうと思っていたんだよ」


「そういう話じゃないよ。そもそも俺は霊感ないんだよ」


「んじゃどういう話だよ?」


「最近、自転車を運転してると相手が俺を認識しないんだよ。俺は透明人間なんだよ」


「はぁ?」


「走行中の俺の目の前をいきなり自転車が横切ろうとするし、ノーブレーキで横から進行方向割り込んでくるんだよ。一番酷いのは対面から自転車に乗ってくるおばちゃんが道路を斜めに横断しながら迷わず俺に向かってきた時は、マジでビビったよ」


「たんにヒロトが影薄いだけじゃない? さち薄いだけじゃない?」


さち薄いは余計だよ」


「んじゃ、どういう理由だよ?」


「基本的に、自転車乗りや歩行者は安全確認が甘いと思う。ノールックで横断するか飛び出すか、確認したとしても車の往来だけ。そもそも俺の走行中なんて速度が遅いから眼中にないんだよ」


「そんなもんかなぁ〜」


「そういう連中とは絶対に目が合わないんだよ。ということは、相手の安全確認の中に俺は存在しないことになる」


「……なるほど。それでヒロトが透明人間か」


「俺という存在が周囲に認知できないなら、これはもう『着ぐるみ』着て自転車運転しろってことだよな?」


「どうしてそうなった?」


「ゆるキャラとか着れば、俺も認識されるよな?」


「ゆるキャラの中に人はいないよ!」


「なに〜? ゆるキャラですら透明人間扱いなのかぁ〜」


「いや、そういう設定だから(たぶん)」


「んじゃどうすれば、運転中の俺という存在を認識してくれるんだよ?」


こんな質問にどんな答えがあるというんだ?ヒロトの必死さは伝わってくるが、相手あっての事なので、こればっかりはどうしようもない。仕方ないので素っ気なくお茶を濁した。


「……霊に相談してみれば? 互いに存在が怪しい者同士、意外と息が合うかもよ?」


「だから、俺は霊感ないんだよ!」


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