自転車乗りは危険地帯がわかる
「これは友達から聞いた話なんだけどさ……」
ヒロトのこのセリフも、そろそろ飽きてきた。ここでぶっちゃけるが、ヒロトの友達は俺しかいない。子供の頃から近所で一緒だった俺が言うんだから間違いない。つまり本当に友達から聞いた話なら、俺から聞いた話を再び俺に話している事になる。……なにこの『やまびこ』みたいな会話。とはいえ、今朝早々に友達が出来たという可能性も否定出来なくもない。ここは様子を見よう。
「自転車に乗っていると、どこが危険な場所か一目でわかる事を発見したんだよ」
「道が狭いとか視界が悪いとか……そういう事?」
「そうともいうけど、もっと具体的な証拠があるのさ。さぁ〜わかるかな?」
いつの間にかクイズ形式になっている。というか、速攻に正解出されて引くに引けなくなったのだろうか? もしくは俺からの『降参』という言葉が欲しのか?……だがその言葉、そう簡単にもぎ取れると思うなよ。ギリギリまで粘ってやる。
「なら『事故多発注意』って看板立っている場所でしょ」
「間違ってはいないけど、俺のとは違うんだなぁ〜」
でたよ‼︎ ヒロトの『俺の正解とは違う』理論。どんだけひねくれているんだよ。そっちがその気ならこっちも考えがある。
「んじゃ『スピード落とせ‼︎』の看板のある場所」
「間違ってはいないけど、俺のとは違うんだなぁ〜」
「んじゃ『ひったくり事故が起きました。情報求む』の看板のある場所」
「ま、間違ってはいないけど……俺のとは違う」
「んじゃ、『ランチタイムはライス無料』の看板のある場所」
「もう看板はいいわ‼︎ つか、ライス無料で事故ってたまるかよ‼︎」
どうせ最後はヒロトのドヤ顔を見せられるのだから、その前に一撃入れられただけで俺の気は済んだ。さぁ〜ここからはヒロトのターンにしてやるよ。
「悪かったよ。もう降参だから、教えてくれよ」
「仕方ないなぁ〜答えは『危険な場所は白線が剥げている』だ」
「え?……それは単純に劣化とか風化のせいじゃないの?」
「全体的に白線が消えかかっているなら、その可能性が高い。でも一箇所だけ掠れていたり消えかかっていたら、それは立派な証拠なのさ」
「なんの証拠さ?」
「路肩の白線が部分的に消える理由……それは車が白線を超えて路肩に踏み込んで来ている回数が多い証拠なのさ」
「なるほど〜車が白線を消しているのかぁ」
「路肩を走っている自転車乗りの生命線といえるからね……『白線』は」
「つか、それが言いたいだけだろ‼︎」