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自転車乗りと踏切

「前回の、横断歩道での追い抜きは危険なのはわかったよな?」


いつになくヒロトは真面目な口調で語り出した。なるほど……今回はそういう感じなのか。俺は、いち早く察し今回の話のヤバさをもう感じとった。



「実は自転車がもう一箇所追い抜くには危険な場所があるんだ。それが『踏切』だ」


「た、確かに」


「踏切は言うまでもなく線路と交差する。だから線路内の道路面は凸凹でこぼこなんだ。また道幅も広く確保出来ないから当然歩道幅も狭い。まして歩行者が最優先する場所で、自転車が自転車を追い抜くなんて行為は絶対にやってはダメな場所なんだと俺は考える」


「普通に考えればさ、踏切を超えてから抜けばいいと考えるよな」


「単純に、自分よりスピードが遅いから抜く。横断歩道の件と同じように後ろからロケットスタートかませば、簡単に先に待っている自転車を抜く事が出来る。だけど踏切は横断歩道よりもっと危険なんだよ」


「危険なのはわかるけど、危険度から言えば横断歩道とさほど変わらないだろ?だって同じ道路だし」


「全然違う‼︎」


「何が?」


「被害状況が全然違う。仮に横断歩道で事故を起こしても、被害は数人だ。多くても十数人だろう。しかし踏切は違う。事故が起きれば、そこを運行している全ての電車に影響が出る」



「あっ」


「こんな事に遭遇した事がある。電車の乗っていた時、突然急停車した。その後、踏切を渡りきれなかった人がいたと車内アナウンスで告知した。運転が再開するまで数十分はかかったね」


「……」


「実際に、踏切内における衝突事故じゃなかったとしても、ただの安全確認だけで後発まで影響を及ぼすんだ。たった一人の身勝手な運転のせいで数千、数万人単位の人が迷惑を被るんだ。これはもう『自己責任』では済まされる問題ではないのさ」


「……」


「だけど、そこまで考えて踏切を横断している自転車乗りは残念ながらいないだろう」


「さすがに電車内で待機されられている感情と自転車乗っている時とは結び付けられないよなぁ〜」


「俺の考え方を理解してくれとは思わないよ。そんな事は百も承知さ。それでも俺はつまらない連中に巻き込まれたくないのさ。だからこそ俺は慎重に慎重を期する運転をこれからも心がけるよ」



 ヒロトは自転車に乗っている際に、相手に期待していないし求めていない。だから、面と向かって文句は言わず、無関係で第三者の俺に愚痴を言っている。それでトラブルを回避出来るなら、俺はいつでも話を聞いてやるつもりだ。……その代わりこのツケは、ランチ代としてきっちり請求させてもらうよ。

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