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自転車乗りは後ろを見ない(その2)

『自転車乗りの後方確認は見せかけ』


 ヒロトの説明を聞いてゾッとした。確かにそうかもしれない。完全に停止して後方確認したのであれば、それは安全確認になる。しかし走行中のまま後ろを見たところでそれ自体にはもう意味がない。すでに車道に進路を変え移動しているのに、後方の安全確認なんてあったもんじゃない。ただの後付けの作業だ。……俺はあたらめてヒロトの人間観察眼に驚いた。



「仮に後ろを見れたとしても一瞬だよ。その一瞬では僅かな情報しか得られない」


「他人に厳しいなぁ〜。んじゃヒロトは後ろを振り向かないのかよ?」


「俺は振り向かないよ?」


「え? んじゃどうやって後方を確認するんだよ?」


俺のクロスバイクにはバックミラーを装着している。自転車屋のにいちゃんが言うには気休め程度と言っていたが、とんでもない‼︎ 充分な戦力だよ」


「そんなに違うの?」


「後ろを見る時間を一瞬とするならば、バックミラーを一度に見れる時間はもっと長い。一秒は見れる。……この差は大きい」


「そうか?一瞬も一秒も似たようなもんだけどな」


「全然違う〜〜‼︎」


「大きな声出すなよ。目立つだろうが」


俺は慌てて周囲を見回した。数人がこっちをチラ見をしていたが、別にざわつく雰囲気ではなかった。つまりヒロトと俺の大声のやりとりは、無関心と言うより『やれやれまた始まったか』という毎度お馴染み感が強いのかもしれない。



「一秒見れれば、車の位置だけでなく近づいてくるスピードがわかる。俺を気にしてスピードをゆるめているのか?構わず、強引に追い越そうとしているのかがわかるのさ」


「たしかに」


「一瞬で得られる情報は『点』さ。一秒は時間軸による『線』だな」


「かっこよく言い換えるな‼︎」



「まぁ〜殆どは後方確認をしないで道路を横断する連中だよ」


「恐ろしいなぁ〜」


「実際に、警笛クラクションを鳴らしているドライバーもいたよ。それでも注意されたおばあちゃんは何事もなかったのように自転車で横断を続行したけどな」


「ぐはっ」


「本当は、自転車についているベルもそうなんだけど、背後からデカイ音を鳴らすとそれに驚いて老人は転ぶ可能性があるから危険なのさ。それでも、流石に度が過ぎる無確認横断は静観出来なかったんだと思うよ」


「後方にいたドライバーは災難だったなぁ〜」


「ドライバーだけでなく自転車乗りにとっても、こういう相手にはどうしようもない」



 『人の振り見て我が振り直せと』いう言葉がある。しかし、ヒロトの話を聞いていると交通ルールを守らない自転車乗りは、自覚だけでなく他人の事すら見えていないのかもしれない。

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