自転車乗りと犬
「以前、猫の話をしたのを覚えているかい?」
「ああ〜猫だけどチキンレースって話な」
「猫の話があれば、当然次は犬だよな」
「いや『当然』の意味がよくわかんないけど。なんで次は犬が裏でスタンバイしてますよ……みたいなノリなの?」
「ドックファイト話さ」
ヒロトは平然とドッグファイトとか使っているけど、ドッグファイトとは戦闘機同士による空中戦の意味合いの方が強い。なので犬と自転車との戦いなんていう異種格闘技をドッグファイトと呼ぶわけがない。願わくば動物愛護団体からクレームが来ないこと祈りつつ、ここは様子を見よう。
「走っていれば当然歩行者とも遭遇する。その中には犬の散歩をしている人もいるのさ」
「そりゃいるだろう」
「小型犬や中型犬は人より小さくて俊敏だから動きが予測しづらいんだよ」
「そりゃそうだろう」
「だから本来であれば飼い主が安全面をカバーしないといけないのさ」
「ん?どういう事?」
「犬が車とすれ違うポジションに位置取りしているんだよ」
「え?」
「すれ違う配置で言うと『飼い主ーー犬 車』な。本来は『犬ーー飼い主 車」であって欲しいんだよ」
「図解ぽく説明するなよ! つか、飼い主と犬の間の横棒『ーー』って紐か? そんな小ネタはいらないよ」
「大事な事なので二度言うけど、犬の散歩中に車や自転車とすれ違う際、飼い主が車側のポジションに立つべきなんだよ。リードで犬の行動範囲はある程度は制限出来ているけど、犬は危険だと認識していない場合もある。だから飼い主があえて車とすれ違う危険側に立ち、犬は飼い主を軸に車とは反対側を歩かすべきなんだよ」
「わかるけど、そんなめちゃくちゃな飼い主が存在するのかよ?」
「おそらく、なんにも考えていないんだろうな。犬事を大事に考えれば信じられない行動だよ」
「さっきから、ちょいちょい文字で遊ぶなよ! 『犬の事』を『犬事』なんて言わないよ! なんでもありかよ!」