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鏡道103号と天気の道。  作者: 若木ももすけ
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菱形の心

「てんきのちからを、かりる?」



小鬼丸は弓の練習をしていた菊丸に聞き返した。菊丸は10m程離れた的に、矢を当てると元気よく返事をした。



「おう!おれがいえでこんなのをみつけたんだぜ!」



少し古びた紙に、細かく色々な事が書かれている。武器の扱い方、天気の借り方、祈りの捧げ方…一体誰が書いたのだろうか。紙があまりボロボロになっていないのを見ると、100年前や50年前、という訳でもなさそうだ。



「てんきのちから…やってみようよ、菊丸!」



目をきらきらと輝かせる小鬼丸に、菊丸は少し驚いたが力強く頷いた。


二人は紙を同時に読み上げる。よく見ると難しい漢字には細かく振り仮名が振ってある。まるで小鬼丸や菊丸が読む事を分かっていたみたいで不気味だ。




「『天気の力を借りる、それはこの土地だからこそ出来る。簡単な話だが、選ばれた者のみしか宿す事は出来ない。外に武器を一日置く。それだけだ。但し、他の者に盗られた場合は効果を発揮しない…』」




「えっと…つまり、これをいちにちそとに、だせばいいんだよね…?」



「だとおもうぞ!おれわかんねーから小鬼丸やって!」




菊丸は小鬼丸に弓を押し付けて、修行をまた始めた。修行といっても、早く走ったり、壁を蹴り上げたりするだけだが。

菊丸は壁を蹴り上げて空中で弓を放つのが上手だ。小鬼丸は壁を蹴り上げようとすると怪我をしてしまった。




「いいなぁ、菊丸。」



宙返りを決めた菊丸に、小鬼丸は羨ましそうに続ける。



「おれ…たたかえるのかなぁ…しんぱいだよ…」




不安そうな声色になった小鬼丸に、菊丸は背中を軽く叩いた。小鬼丸がちょっとよろけたのは気のせいだろうか。いや、気のせいか。



「だいじょうぶだっての!小鬼丸は、まもりたいものがあるんだろ?だったらそれでいいじゃねーか!」



ニカっと笑った菊丸につられて、小鬼丸も笑みをこぼす。



小鬼丸は菊丸が一回転したのを見て、壁へと駆け出した。風のように走り、壁を足で勢いよく蹴り上げる。一瞬の出来事だったが、菊丸には綺麗な舞に見えていた。



着地する。その姿までも、この世の人に見えないような動きに、菊丸は声が出なかった。




「…菊丸?」



「どーした?ほら、おれとしょうぶしようぜ!」




小鬼丸の声にハッと意識を戻した菊丸だったが、何かが引っかかるような感じがする。思い出せていないだけで今の小鬼丸と何かが…。しかし、それを思い出せなかった菊丸は考えるのをやめた。




翌日。小鬼丸は家の前で日に晒していた短刀と弓を回収した。が、特にその変化が見られないのを知って、少し落ち込んだ。その事を菊丸に言ってみたが、考えすぎなだけかもしれない。




「…たたかえば、わかるだろ。」



「え、う、うん…」




少し様子がおかしい菊丸に、小鬼丸は聞いてみた。何があったのか。菊丸は何も答えなかった。小鬼丸は再び声をかけたその時だった。




「あの…菊、丸…」



「っ、…く、ぅ…お、れ…ばか…」




掠れた声で菊丸が涙を流していた。ポロポロと流れる涙を拭いきれていないため、手の隙間からも零れ落ちている。小鬼丸はただ菊丸の背中を撫でてやることしか出来なかった。



何故、菊丸が泣いていたのか。それを聞こうとはせずにただ撫でてくる小鬼丸に対して、菊丸は少しずつ話を始めた。



二日前から双子の弟の琴丸が居ない。人攫いというにはあまりにも怪しいと思う人物が少なすぎる。失踪、と言った方が話が通るような消え方をしてしまった。



あの日、自分は疲れていて琴丸に強く当たってしまった。その日からまるで琴丸が居なかったかのように過ごしていたが、昨夜見た夢で全てを思い出した。



「…っ、琴丸、ぅ…ごめん…っ、ごめん…!」




話を終えた菊丸だったが、そこまで言ってから再び泣いてしまった。小鬼丸はそんな菊丸に優しく語りかける。




「…だいじょうぶ。琴丸くんはぜったい、いきてる。さがそう、いっしょに。」




菊丸の手を強く握った小鬼丸は、菊丸に弓を持たせた。その合図で、菊丸も涙を拭い取って、立ち上がる。検討は付いていないが、夕花の元へと行けば何か情報を得られるかもしれない。




「いこう、菊丸。」




「…おう。」




雨が打ちつける中、菊丸の家の倉の中へと入る。相変わらず埃っぽい其処は、咳が出そうになる。出る前に急いで大きな桶の中へと入る。何時もだったら何も入っていない筈だが、今日は雨だったからなのだろうか。水で二人とも濡れてしまった。




「うわ…びしょびしょ…」



「夕花ねーちゃんにいえば、だいじょうぶだろ!」




元気がなかった菊丸だったが、ようやく元気を戻してきたようだ。安心した小鬼丸は目を瞑り、地面の感触を待った。




ドスっ。そんな効果音が合いそうな着地で、菊丸と小鬼丸は軽く尻を打った。一回目よりかは安全な落ち方をしたつもりだったが、それでもまだ痛い。これも訓練のお陰なのだろうか。



勢いよく夕花の部屋の扉を開けると、驚いた顔で此方を見ている夕花が居た。

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