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旅路の始まり

 メイシャを連れて玄関から外へと一歩踏み出すと、ニンジャがそれに気付いたのかこちらへと寄ってきた。


「紹介するわ、彼女は水月。東方世界に伝わる忍者というジョブを習得していて、これまで私を守ってきてくれた使用人よ。」


 メイシャの紹介に合わせて、水月と呼ばれた忍者が頭を軽く下げる。そしてそのままメイシャへと話し始めた。


「メイシャ様、早速で申し訳ございませんが先程から気配を感じます。恐らく見張られております。」

 その言葉を聞き、俺は慌てて辺りを見回す。視線の先は一面の林で隠れる所は非常に多く、見張っている者の気配すらわからない。


「本当に見張られているのか?」

 俺が訝しみながらも水月に尋ねると、代わりにメイシャがどこか自慢げに答えた。

「ええ、水月が言うなら間違いなくいるわ。彼女は忍者の一員として、敵の気配を探るのに長けているもの!」


 主からの素直な賞賛を聞き、水月が少し照れくさそうにうつむく。そして俺の問いかけに答えた。

「はい、間違いなく。しかしながら、まだ距離がありすぎて敵の位置は朧げにしか捉えられません。拙者達への陽動かも知れませんので、このまま気付かぬふりをして進み続けるのが得策かと存じます。」

 俺も首を縦に振り、その意見に同意した。


 俺が先頭、水月が後ろにつきその間にメイシャを挟む隊列を組み、街までの道を警戒を怠らずに歩いていく。傘を差しているのはメイシャだけだ。俺は濡れるのを我慢し、万一に備えて両手を開けていた。水月はどういった術を使っているのか、この雨の中で少しも濡れていない。

 聞きたいことは色々とあるが、俺の問いかけで水月の注意が削がれては困る。お互い無言を貫き移動を続けた。


 30分程経っただろうか。街との中間地点に着いた辺りで水月が再び声を上げた。

「見張っていた者達が接近してきました。右手前、恐らく200メートル程です。警戒を。」


 未だに気配は感じ取れなかった。いや、意図的に気配を隠しているのだ。彼らがあまり友好的な存在ではない事が伺える。


「タイミングを合わせてこちらから仕掛けるぞ。」

 後ろの二人に語りかける。返事は来ない。肯定ということだろう。


 敵の接近に合わせて奥の草木が微かに揺れた。

 彼らはまだ見つかっていないと思い込んでいるのだろうが、前衛職ではない俺ですらその接近に今気付けたのだ。そこまでの使い手ではないだろう。

「我に従え風の精。母なる息吹で芥を散らせ。」

 数秒後に迫った接敵に備え、俺は風の契約魔法を唱え始めた。



「おいお前ら、そこの少女を俺たちによこせ!!」

 生い茂った草木の後ろ、予想通りの場所から三人組が現れた。

 俺は返事をせず、挨拶代わりに用意しておいた風魔法を放つ。

 後方にいた二人は辛うじてこれを避けてみせるが、最前列で声を掛けてきた小太りの男は回避が間に合わず疾風の直撃を受け、木へと叩きつけられた。

 風魔法を逃れた内の一人、軽装備で身を固めた小柄の男は即座に体制を立て直し、剣を構えて反撃の姿勢を見せる。

 もう一人、黒のローブを着込み杖を持った男は回避にこそ成功したが、バランスを崩し一瞬ふらつく。


 そこへ、ハッ!と水月が声を上げ、黒く独特の形をした短剣を2本投げつけた。

 不安定な体制でそれを防げる筈もなく、短剣は杖を持った男の両腕にそれぞれ一本、無慈悲に刺さる。

「ぎゃあっ!!」

 刺された腕から鮮血が迸り、雨で潤った大地を赤く染める。男は甲高い悲鳴を上げて杖を落とし、そのまま杖の後を追うかのように地面へと倒れ伏した。

 

 最早興味が無いと言わんばかりに水月は杖の男から視線を外し、軽装備の男へと円形の投擲武器を投げ放つ。

 軽装備の男はバックラーを手前に突き出し、これを防いだ。キィンと虚しい衝突音が響く。その隙を突かんとばかりに水月は男へと駆け寄り、盾越しに飛び蹴りを見舞う。

 この蹴りで男を押し倒す算段だったのだろうが、男は蹴りに合わせて腰を低く構え、これを耐え抜く。そしてその姿勢を崩さず、盾を構えた腕とは反対の手で剣を振り上げた。


 まずい!

 咄嗟の判断で俺は呪文を展開する。

 猶予は一瞬。詠唱をする余裕はない。敵の注意を逸らさなければ、斬撃が水月を襲うだろう。詠唱を破棄し、俺は火の玉を男に向けて放った。

 必要な全手順を無視して放った炎魔法。本来の威力はその片鱗すら伺えないが、それでも男の気を一瞬惹きつけるには充分すぎた。


 俺が放った火の玉を見、男は攻めに転ずるか防御を続けるか迷ったように見えた。その逡巡の間に水月は姿勢を整え、男のバックラーを両手で掴み全体重を押し当てた。

 予想だにしなかった行動に男は戸惑いながらも抵抗するが、片腕対全体重では勝負は見えている。バックラーを構えた腕を中心とし、男の姿勢が前へと崩れた。

 崩れる男の背後に水月は回り込み、その首筋に短刀の刃を当てる。そして、


「待ってくれ、水月!その男を殺す気か!!」

 水月が何をしようとしているのかを察し、俺は大声を上げて水月を制止した。


 俺の問いかけに感情を押し殺したような瞳を向け、水月が答える。

「はい、その通りです。生かして返すと拙者達の情報が漏れる恐れがあるので。」


「いや、彼らと取引がしたい。少し俺に話をさせてくれ。」


俺の要求を聞き、水月は主へとその是非を尋ねる。

「いかがいたしますか、メイシャ様。」


「いいわ、好きにやりなさい。」

 その返事を聞き水月は軽装備の男の首筋に当てた刃を離し、代わりにその両腕を縄で縛り始めた。男は自分の負けを悟っているのか、抵抗せずにされるがままである。

 同様に他の2人も手を縛られ、最低限の血止めを施した上で一纏めに集められた。



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