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壊れた世界で出会った少女 1

 ふと目が覚めた。どうやら悪夢を見ていたようだ。

ベッドから身を起こし、額の汗を拭った。

俺たちが終わった時であり、そして始まった時の夢だった。もう二度と見たくもない悪夢だ。


 ベッドの脇にある窓のカーテンを開き、目を覚まそうとする。

視界の先には草木が広がっていて、俺の家以外には建造物は見当たらない。

遥か後ろを見渡すと、城壁に囲まれている街が見える。その上空には魔力を帯びて赤く輝く不気味な雲に覆われた空があった。


 魔王軍と国家の連合軍の最終決戦から数ヶ月が経っていた。数多の禁呪が世界を覆い、お互いを滅ぼし尽くした後に残ったのはこの壊れかけた世界だけだ。


 空は赤い雲に覆われて太陽と月の恵みを無くし、大地は鳴動し村落を飲み込み、国は全てその形を失った。

世界は闇と、死と、狂気に覆われた。


・・・ここまでするつもりは無かった。

魔王と国王達に復讐さえできればよかったのだ。だが、そのための道具として蘇らせた禁呪の威力は俺の予想を超え、互いを滅ぼすだけには留まらずこの世界に取り返しの付かない傷跡を残した。


 災禍を逃れた人々は街の中で細々と生きている。俺の仕事はそんな人々に頼まれて、食料を対価に彼らの問題を解決する、いわば何でも屋であった。


 俺があの決戦の裏で糸を引いていた事を知る者は誰もいない。だがそれでも、何でも屋として街の人々を手伝い、感謝の声を掛けられる度に例えようのない罪悪感が心をよぎる。

 その感情に耐えられないから、こうして街から離れた林の中で一人で暮らしているのだ。


 魔王を倒しに行っていた俺は、正義のために生きてきた。魔王に敗北した俺は、復讐のために生きてきた。

ならば今の俺は何のために生きているのだろう。世界をここまで壊しておきながら、なんの為に生きているのだろうか。復讐を遂げた後の心には虚しさだけが残っていた。


 「・・・俺は何をすればいいんだろうな。」

窓の外に向けて独り言を呟いた。



 そんな中、ドンドンドン、と家の玄関からけたたましい音が響いた。

ノックなんて優しいものではない。何か硬い物でドアを全力で叩いているような、そんな音だ。

仕事を依頼しにきた客かと思ったが、それにしては様子がおかしい。


 慌てて玄関へと走り込む。

強盗盗賊の類に備えて火炎魔法を密かに構えつつ、ドアを開けるとそこには一人の少女がいた。

透き通るような金髪の少女だ。長く伸びたその髪をツインテールで纏めていて、今のこの世界には似合わない豪華なドレスを身に纏っていた。

ドレスの端には土で汚れており、余程急いでここまで来たことが連想できた。


 観察するかのような視線に気付き、その少女は声を上げた。

「私はメイシャ、アルツブルグ家の末裔よ。特別にあなたの主人になってあげてもいいわ!」

あまりにも高飛車過ぎる言い方に、俺はしばらく何も言い返せなかった。



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