プロローグ
俺の望みは復讐だった。
勇者を殺した魔王が憎い。
僧侶を殺した魔王が憎い。
戦士を殺した魔王が憎い。
仲間を殺した魔物が憎い。
勇者に全てを背負わせた、
未来を夢見る巫女が憎い。
勝手に勇者に期待をした、
不条理極まる国王が憎い。
俺らに希望を押し付けた、
何もやらない人々が憎い。
俺の全てを奪っていった、
人と魔物のすべてが憎い。
そのために、そのために。
その復讐に全てを賭けたのだ。
彼女を勇者に選定した巫女を暗殺し、予言が生まれぬようにした。
狼狽している国王に取り入り、個人ではなく国家の力で魔王に抗することを提言した。
旅の伝手を頼り、国家と国家の仲を取り成し連合を生み出した。
古代碑文を解読し、封印された究極魔法を連合へ託した。
仲間の最期を語り伝え、魔王の悪意を知らしめた。
服従し魔王へ取り入った。
国の弱点を魔王へ伝えた。
古代碑文を解読し、封印された究極魔法を魔物へ託した。
王の不条理を語り伝え、人間の非道を知らしめた。
そして連合軍と魔王軍の最終決戦を引き起こし、究極魔法で全ては消え失せた。
そうして俺の復讐は完遂した。
だがまだ俺は何も考えていなかったのだ。
全てが終わったその後で、俺はどうして生きればいいのかを。