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ねぇ、シェリー。婚約破棄の方法を教えてちょうだい。

作者: 猫田 トド

作者は、『オッケー』な方も、『Hi』な方も知りません><;

だってぱかぱかだから……(・ω・;)

生暖かい目で、さらっと読んでくれると嬉しいです。



「ねぇ、シェリー。婚約破棄の方法を教えてちょうだい」

「はい、お嬢様。このまま順当に行けば、本日の婚約発表予定の夜会にて、冤罪を突きつけられ、婚約破棄されるでしょう」

 だぁあああ!

 んなこたぁわかってんのよ!!

 クッ! この『ハイ、シェリー、メイド』めっ!

 頭の中で苛立ちを爆発させつつ、私は机の上に両肘をつき、組み合わせた手を口と鼻の前におく、という有名なポーズを保つ。

 使徒は降臨しないが、受け答え抜群、ボキャブラリー豊富で、ぼっちな貴方の話し相手にも最適なハイシェリー機械ならぬ『ねぇ、シェリーメイド』はいる。

 このメイド、シェリーさん、何故か『ねぇ、シェリー』と呼びかけないと無反応。ただ最近『オッケー、シェリー』でも反応するようになった。どこの浮気症機械だコンチクショウ! リンゴ一筋やなかったんか! 間に小さい『ェ』が入ってるから浮気できるんか!? エエ、コラ! いらんわその機能!!

「ねぇ、シェリー。我が家に傷のつかない婚約破棄の方法を教えてちょうだい」

「……」

 くっそ、黙りやがった!!

 シェリーのくせに! シェリーのくせに!

 答えられない疑問があったら聞き返すくらいしろよ! あの、嘘くさい『え? 今、何といいましたか?』をリアルで言ってみろよ! 今度北斗○拳言わすぞ!

 などなどぶつくさ言っても始まらない。

 はー、なんでこうなった!




◆◇◆◇◆◇◆◇




 まぁ、大体わかると思うけど、私は転生者。そしてここは多分乙女ゲームで、私の転生先は悪役令嬢。

 はい、テンプレキターですよ。

 つーか、私、乙女ゲームしたことないんですけど。

 じゃぁなんでわかるかって?

 公爵令嬢、王太子の婚約者、異母兄、幼馴染の騎士、学校、元平民の男爵令嬢……。

 揃いすぎなんだよ!! 乙女ゲームはしないけど、小説は読んでる! 最近の流行りだよ、これ! 流行りは押さえる派なんだよ!

 大体テンプレが揃いすぎてるこの状況、しかも男爵令嬢はテンプレどおりに次々男を虜にしているらしい。恐ろしい!

 このままでは私は確実に悪役令嬢、断罪コースだ。

 どうにかして逃げなくては。

 どうにかして……!

 つーか、どう考えても、婚約者、兄、幼馴染は攻略対象だよね!?

 やばい、やばい、やばい、どうするべ!?

 私の周り敵多くない!?

 一応、婚約者の王子様も、公爵家跡取りの兄も、騎士の幼馴染もしっかりした人間ではある。立場とか、マナーとか、身分とか、その他諸々。でもテンプレだと、ヒロイン補整だか、ゲームの強制力だとかで、貴族の身分に縛られないヒロイン可愛い! とかアホなこと言い出すんだよね!?

 どーすんべ、どーすんべ!

 てか! 私、男爵令嬢ちゃんいじめてないよ!?

 会話どころか、挨拶さえしてないんですけど!?

 つーか、学校どこよ!? そんなもの行ってないんですけど!?

 私が行ったのって、お茶会(通常)、お茶会(恐怖の王妃様主催)、夜会(デビュタント後から)、教会へ寄付(領地)くらいだよね??

 そ、それで断罪!?

 無理ゲーでしょう!?

 どこに断罪する要素があるんだ!

 アレか!? 男爵令嬢のでっちあげか!?

 うをぉお、どーすんべ!?

 男爵令嬢の噂聞いたのが最近すぎて、なんも対策練ってねぇえええ!!

 ねぇ、シェリーメイドは淡々としてて何考えてるかわかんないし、兄はそーいや最近ちょいちょい男爵令嬢の事を口にしているし、幼馴染とは王子様に会う時に会えるけど、会話とかしてないし! いや、だって、婚約者と会ってる時に、他の男と喋るのはちょっと、ねぇ?

 で、王子様は私が居るのに、私と会っていない時に男爵令嬢にちょっかいかけているらしい。(シェリー情報)

 ああーオワター。

 もう無理だー。

 絶対婚約破棄だよー。

 修道院ならギリいいなー。

 国外追放とかマジ怖いー。この年まで御貴族様のお嬢様やってて、前世も平和な日本に生きてた私が、着の身着のまま放り出されて生きていける自信ないー。

 現実は、物語のように運良く突然誰かが助けにー、なんてありえないだろうしー。

 処刑とかなったらどうしようー。

 ああああああ、私のお馬鹿! どうして日々の私の行動を記録しとかなかったの! テンプレでしょうが!!

 いや、男爵令嬢の事を知ったのがつい最近すぎたんだけどさぁ! 具体的に言うなら三日前なんだけどさー。

 兄がなんかちらほら男爵令嬢のことを口にしてたけど、正直聞いていなかった。ごめん、兄。貴方はちょっと性癖がおかしい感じがするんで、ちょいちょい話をスルーしてたんだよ。

 てかシェリー! 王子様と男爵令嬢の情報を持ってたって事は、知ってたんでしょう!? なんで最近まで黙ってた! 君は私の従順なメイドじゃないのか!? ご主人様が危機になるまで放置ってどういう了見だ!?

 ぐぬぬぬ……!

 私が一人頭抱えている間にも、シェリーは気にせず私を夜会仕様へと変化させていく。

 おのれ、ハイ、シェリーメイドめっ。無駄に優秀なんだから!

 たった一人で、あっという間に私を飾り立てた。

 くっそ。

 鏡に映る自分が無駄に綺麗で、文句もつけられん。

 これじゃぁちょっとーとかなんとか言って、どうにか夜会をサボろうと思ったのに!

 そもそも、私は王子様と結婚したくない。だって、王子様と結婚するってことは、将来王妃になるってことでしょう? ええーやだやだ。

 いいか、私は前世、基本ひきこもりのOL貴腐人だったんだ。お嬢様やってるのだって辛かったのに、王妃? やってられるかってんだ。

 つーわけで、婚約破棄は良い。できることなら、婚約白紙だといいなー。皆にバレてるとはいえ、一応さぁ、公式発表前じゃん? なら白紙って言い方もできると思うんだよねー。それだったらまぁ、家に傷つかないんじゃない?

 無理かなー。

 無理だよねー。

 あああー、現実逃避の間に時間が過ぎてくー。

 お迎えが来たー。

 って、お迎え? え? なんで? 王子様は私を放置して、男爵令嬢とやってくるんじゃなかったの?

 めっちゃ玄関でにこにこしてるんですけど?

 あ、これは、アレですかね? 絶対に連れて行って、そこで断罪してやるんだってパターンですかね?

 敵前逃亡許されませんか、そうですかー……。

「やぁ、迎えに来たよ。シア」

「エスコート、ありがとうございます。殿下」

 十八年のお嬢様生活で覚えたカーテシー。よっし、今日も完璧。マナーの先生に鞭で打たれるから、マナーだけは完璧よ。ドヤれるわぁ。まぁ、天然王子には負けるがな。

「今日も綺麗だね、流石は僕が贈ったドレスだ」

「……ありがとうございます」

 くっそ!

 笑顔がひきつる!

 こんのクソ王子! 褒めるんなら私だろうが! 何ドレス褒めとんじゃ! 中身を褒めろ、中身を! アレか!? お前は服や下着にばかり興味を示し、中身に興味がないタイプの変態さんなのか!? ああ!?

 おい、ハイシェリーメイド! 後ろで笑ってんじゃねぇ! 聞こえてんぞ! 何が『殿下の選択は間違っていない』だ! 大間違いだろう!? ここは最低でも私を褒めるところだろう!? エスコートに来たんじゃないのか、この王子!

「さぁ行こうか」

「……はい、殿下」

 うわー行きたくなーい。行きたくなーい。いーきーたーくーなーい。

 心の中でどれだけ言っても、差し出された手をとらないわけにはいかない。

 優雅にエスコートされてドナドナしまーす。

 馬車の中ではにこにこ顔のまま、無言を貫く殿下と隣り合わせですよ。

 ああー吐血しそー。なんだこの空気。なんとも言えないんですけど。あと、流石に馬車に乗ったので、もう逃げません。そんなものすごい力で人の腕、掴まないでくだせぇ。痛いっすわ。

 白目剥くー。白目剥いていいよねー?

 淑女とかそんなこと言ってられないですー。

 あー馬車ケツがいてーとか言ってられんすわー。どんだけ乗っても、日本の超便利社会に慣れた現代人に、この、中世的なアレはあかんすわー。ケツ、割れるわー。いや、もう、ホント、夜会の事とか考えられんすわー。

 ケツが痛いとか言ってられない、とか言いつつ、ケツが痛いと言いながら現実逃避している間に、時間は進んでいた。

 はいっ! 会場到着! 逃げ場はありません!

 王子様とごにゅーじょー。

 周りの目が生暖かい。やっぱりねーみたいな顔しないで。私は今日、貴族として死ぬんだから。ついでに人生も終わるかもしれない。

 あああああああ、こえぇえええ……。

 何もわからないとか、マジこえぇええ……。

「それじゃぁ、シア。私は所用があるから」

「はい、殿下」

 颯爽と去っていく王子様。

 わかります。これから男爵令嬢を連れてくるんですよね?

 そして私はやっていもいないことで、公衆の面前で責め立てられ、婚約を破棄されただけでなく、人生を詰むんですよ。

 うっうっうっ。短い人生だったなー。短ぇ夢だったんすよ、はぁー。こうなるんだったら、両親の言う事も、ハイシェリーメイドの言う事も聞かず、お部屋に全力でひきこもって、だらだらぐだぐだ生きてこれば良かったナー。

「ぶっほっ」

 おい、誰だよ。

 人が黄昏ている場所で噴出すとか。

 思わずそちらを見れば、おや、なんですか? ハイシェリーメイド。貴女なんでドレス着てこんな場所にいるんですか?

「ぶっは、ぶふふふふ」

 めっちゃ笑ってんな、おい。

 周りの紳士淑女の皆様もドン引きだぞ、おい。

 大丈夫? 嫁の貰い手なくなっちゃうぞ?

「ぶふふふ、お、嬢様、ウケる。可愛い」

 おい、貶してんの? 褒めてんの? いや、馬鹿にしてんだろ。

 ぶるぶる震えながら身をよじんな。笑いすぎだわ。

 つーか、なんだ、このやろー。こっちは人生終わりそうで、マジテンパってんだぞ。

「ほら、だから言っただろう?」

「ええ、バーナード様。まぁ、別に? 貴方様が言わなくとも、私はお嬢様付ですから知っていましたけど?」

「知らぬは、殿下のみってね」

「私としましては、殿下ごときに教える必要はなかったと思っておりますが?」

「煩いよ。シェリー嬢。君は私の好意で今ここにいることを忘れないように」

 おう……?

 兄に王子?

 あ、黙ってるけど、幼馴染もいる。

 目が合った。

 ふぁ!? 逸らされた!?

 酷い!

 確かに最近会話らしい会話はなかったけど、目が合った瞬間に逸らすとか、酷くない!? ユーとミーは幼馴染! 他よりちょっぴり親しい仲でしょう!?

「ぶふぁっ」

 ねぇシェリーメイド! さっきから笑いすぎだぞ!? こんな場所にいるんだから、ちゃんと淑女の仮面被りなさい! 後であの令嬢がどこの誰だ、ウチのメイドだってなったら、家に迷惑がかかるでしょう!?

 つーか、男爵令嬢は?

 断罪は?

 あるぇ……?

 なんで、殿下はそこで兄たちと一緒にいるの?

「うーん、シアはこんなにわかりやすいのに、どうして今まで私はこの魅力に気づかなかったんだろう? いや、今までも勿論可愛かったけどね」

 はい?

 ナニイッテンノ、コノヒト……。

「すまない。俺はやめようと言ったんだ……」

 おおう、どうした、幼馴染よ。

 ドウシテキミハソンナニモウシワケナサソウナンダネ?

「いやぁ、やっぱりシアは可愛いよね」

 アニヨ、タノム、ワカルゲンゴデシャベッテオクレ?

 アト、ソコノメイド。ワライスギテムセルナ。アニモアタリマエノヨウニセヲサスルナ。ナンダソレハ。ナカヨシカ。

「うん、シア。もうわかってるようだけどね? 私が仲良くしていた男爵令嬢はシェリー嬢。ほら、公爵家のメイドは素性が知れない人を雇わないだろう?」

 にこにこ顔の王子様。

 によによ顔の兄。

 噎せながら更に笑うメイド。

 目を閉じ、顔をそらし続ける幼馴染。

「で、社交界を騒がせた男爵令嬢は、色々と問題をおこして、不敬罪も重ねていたし、とっくに修道院行きになっている」

 ツマリ……?

「君のね、泣き顔が見たくて、つい、悪ノリしたんだ」

「俺は、止めたんだ……」

 うん、わかった。

 幼馴染よ。君には問うまい。

 君の立場では強くは止められまい。

 ああ、だから、君は許そう。

 問題は、そこで笑っている三人だ。

「今日、私と君の婚約発表は予定どおり行われる」

 ざわ、と周りが揺れた。

 おい、発表前に何ゲロってやがる。

 周りもなんだ? なんで、そんな嬉しそうな気配なんだ? 普通あれだろ? 家格だけで、あんな女が、とか、そういうのあるだろ? なんだ、この、やっとまとまったか感は。どういうことだ、この野郎。

「そもそもね、君が嫌がるからなかなか発表できなかっただけで、私と君の婚約は絶対にっ! 変わることはなかったんだよ」

 ほわっと……?

 王子と私の婚約は絶対ですと?

 え? 聞いてないんですけど、なんで?

「あのね、君は、馬鹿なの? 私はずっと好きだ、と、愛している、と言い続けていたよね? 私が君を好きすぎて、誰も婚約者候補に名乗りさえあげなかったんだよ? それくらい、私は君を好きだと言い続けたと思うんだけど?」

 にこにこにこにこ。

 えー……? ええっとぉ、確かに王子様はそんな世迷言を言い続けてましたけどー……? え、だって、あれだけぷわぷわ言われまくったら、ただの挨拶かなーって思うじゃない? 意味とかないんかなーって。

 あ、やばい。王子様の額に青筋が浮かんだ。なまじ綺麗な顔なだけに、怖いです。つーか、こういう笑顔の時って、大概顔面わし掴まれるときや! って大丈夫か。流石にこんな場所でそんなことはしないよね? ね!?

「シア」

「はいっ」

「愛しているよ。そうそう、今日わかったんだけどね? 私は君の笑顔が好きなんだけど、君の泣き顔は、もっとずっと大好きだよ」

 にこにこにこにこ。

 えっ怖い! なんの宣言!?

「まぁ、他の人間には鉄面皮でわかりにくいけど、シアの泣き顔は可愛いよね」

「お嬢様の泣き顔が可愛いのは昔からです。あれだけお嬢様に突撃なさっておきながら、今頃気づいたなんて、殿下もまだまだですね」

 ほわっと!?

 ちょっ!?

 何言ってくださってやがりますか、そこの兄とシェリーメイド!

 つーか、そこのシェリーメイド! なんだ、その上から目線のドヤ顔! そして王子! なんで微妙に悔しそうな顔してるんだ!?

 も、もう嫌だ……!

 ここには変態しかいないっ!

 助けてくれ、幼馴染よ!

「すまない、俺には無理だ」

 兄よ!

「嫌だよ。ウチとしても、王家とのつながりはありがたい」

 こ、こうなったら……!

「ねぇシェリー。こ、婚約破棄の方法を教えてちょうだい」

「方法がないわけではありませんが、私が面白いのでお嬢様は殿下と婚約していただきます」

 いーーーやーーーだぁあああああああああっ!!!!

 ああああ! 肩を掴むな、サド王子!

 私は逃げるっ! この会場から逃げるぞぉおおっ!

「逃がさないよシア。これから毎日可愛がってあげるからね」

 うぁあああああああ!

 誰かっ!

 誰でもいい!

 婚約破棄をっ婚約破棄の方法をおしえてくれぇえええええ!!!

「無理です。ありません。あったとしても私たちが全力で叩き潰します」

 うるせぇ、この、ハイ、シェリーメイドがぁああっ笑ってんじゃなぁあああああい!!!


ギャグ? コメディ? あと、溺愛? が、練習したかった。

難しい……

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[一言] 王子の「君の泣き顔が見たくて」というセリフで、「君のその顔が見たくて」ってフレーズが脳裏に浮かびました。 もし検索される際は、ご自身の胸糞耐性を確認し、用法用量を守って適切に閲覧しましょう。…
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