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帝国国境空挺騎士団

気軽に読みやすくなるよう、少し字数を少なめにしていこうと思います。

「な、なんだってぇぇ~!! ……って、誰だいそれは?」


 あと、帝国国境空挺騎士団ってよく噛まずに言えるな。


「私達みたいな運び屋の天敵! 空賊や海賊と同じくらいタチ悪いの!」


 この船は運び屋だったらしい。


「えっと、それで? 俺はどうすれば?」


「隠れるの! ここじゃなくてえっと……もっと見つかりにくいところに!」


 そう言うとミランダは俺を部屋の外に引っ張り出し、廊下を小走りで進んでいく。


 が、曲がり角に差し掛かった途端、先行していたミランダは急に足を止めた。俺はぶつかりそうになりながらもなんとか踏ん張る。


「なんだ、なんで急に止まった?」


「しっ!!」


 ミランダは緊張した顔で俺に向かって黙ってどこかに隠れるようにジェスチャーした。


 俺が不審がっていると、俺からは見えない位置、曲がり角の先で声がした。


「突然現れて、問答無用で船を横付けするなんて……なぜ来たの?」


 メルティナが不信感を露わに硬い声で話している。


「フ……通常の国境警備艇を送り込んでも仕方あるまい? 遺失船に乗る貴様らを追えるのは、同じ遺失船を持つ我々だけだ。全く、貴様ら運び屋風情が使っていい船ではないのだがな。ムンダリの大商人ですら現代船を持つのがやっとだというのにな」


「私が聞いているのは私達の船に来た目的よ」


 角からちらりと覗いてみると、メルティナが相手をしているのは白銀色の豪奢な鎧を身に纏った女騎士だった。兜で顔は見えないが、彼女の背後にも二名の兵士が随伴している。


「これから話してやる。まずは船員全員を集めてもらおうか」


 ミランダは俺を女騎士から見えない位置に押し戻すと、二人のいる方へ駆けていった。


 事情はよく分からんが、どうやら俺の存在がバレると何か不都合が発生するらしい。


「つい一時間ほど前、ここからほど近い海域で宝嵐が発生した事は知っているな?」


「ええ、知っているわ」


 俺が息を潜めて取り敢えずこの場を離れようとしていると、突然音も無く背後に少女が現れた。


 驚きのあまり声を上げそうになるも、何とか飲み込む。


 つーかまた少女か……って、もう船員は全員紹介してもらわなかったか?


「宝嵐を近くで見ていた商船から通報があったのだ。宝嵐の中に突っ込んでいく遺失船を見た、とな」


「……ええ、確かにそれは我々の船よ」


 白い肌にシンプルなワンピースを着ているのだが、髪の色が青から緑のグラデーションという中々のエキセントリックさだ。足元は裸足。


「我が国の領土で発生した宝嵐。そこから出現した全ての物品及び生物の所有権は、帝国にあるという法についてはご存知かな?」


「もちろん知っているわ。でもそれは港に着いてから手に入れた物品全てを献上すれば問題ないはず」


 その娘が無言のまま身振り手振りで説明するには、俺を安全な所まで連れて行ってくれるらしい。


 どうも、この少女のニチャっとした胡散臭い笑顔が気になるんだが信じていいのだろうか……?


「ああ、もちろんそれで問題無い。……お前たちが手に入れたのが物品だけならばな」


「……どういう意味?」


 どこに行くんだ? 超小声で聞いてみるものの、下を指さすばかりだ。


「商船から双眼鏡で見ていた者がこう証言しているのだ。宝嵐から人影が落ちてきて、それを件の遺失船が回収したように見えたとな」


「そんな証言を信じて、わざわざ遺失船で乗り付けたの? なぜ港まで待てないの?」


 業を煮やしたのか、少女が眉を吊り上げながら俺の袖を引っ張り始めた。


「物品と異邦人では重要度が段違いなのでな。港に着いてしまえばどうとでも隠せようが、海の上ならば逃げられまい?」


「……我々がなぜ隠すと?」


「ハハ、勘違いするな。お前たちを疑っているワケではない。ただ異邦人が勝手に密航し、勝手に逃げ出す事もあるだろう? それを避けたいというだけさ」


「……なるほど? でも残念ながら、この船に異邦人は乗っていないわ。助けようとしたけれど失敗したの。今頃は竜鮫の腹の中でしょう」


 どうもメルティナと騎士団とやらの方も雲行きが怪しいようだし、とりあえずこの娘を信じる以外になさそう、か……。


「ハハハハハハ!! 異邦人が宝嵐に召喚された途端に死ぬ? 神がそんな雑な仕事をするはずがないだろう! 彼らは彼らの役割を終えるまで死ぬ事は無い。異邦人は必ず生きている。今すぐ出すなら、まだ異邦人が勝手に密航し、それを我々が捕らえたという形にしてやっても構わんぞ?」


 俺は腰を上げ、抜き足差し足で少女についていった。


「異邦人など知らないわよ」


「よかろう。では勝手に探させてもらう」

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