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メルティナとトーニャの過去

 メルティナとトーニャの二人は、ドワーフ単一民族によって成る国家「オルデン」の出身だそうだ。


 オルデンは既に百年以上に渡って他国との人的、物的交流を一切絶っているとのこと。

 オルデン独自の、他国とは比較にならないほど発展した技術力の流出や戦乱を恐れての事だそうだ。


 しかしオルデン国内の人々に関しては、厳しい制限はあるものの出入りも出来るらしく、自国に引きこもる事なく外の世界に目を向けるドワーフ達もいるらしいのだが……。


「オルデンでは、それもこれも全部『男性』の特権よ。ドワーフの男は二十歳で成人すると国の外に出る事も許されるけれど、女性はそうはいかない。理由は私達ドワーフの生態に関係がある事なんだけど……ドワーフは女性の数が極端に少ないのよ」


 メルティナの話によると、ドワーフは女性の数が男性の十分の一程度しかいないらしい。


 ドワーフの女性は、生まれると盛大なお祝いの儀式が行われ、何不自由の無い環境で蝶よ花よと手厚い保護を受けながら育てられるが、その代わり国内の移動すら厳しく制限されてしまう。


 さらに、妊娠が可能となる十五歳からは行政によって選抜された男性のドワーフを代わる代わる受け入れなくてはならず、そんな自由の無い日々が妊娠適齢期を過ぎる八十歳まで続くという。


「八十歳を過ぎると、ドワーフの女はようやく男と同じように自由に生活できるようになンのさ。ドワーフの寿命は大体二百歳くらいだから、人生の半分近くは国内に縛られて生きる事になるわけさ。アタシなんかもヒエムから見りゃ年端のいかない小娘だろうけど、こう見えて百歳は越えてんだからね!? ちゃんと敬うんだよ!?」

 トーニャが薄い胸を張ってドヤ顔をするのを見て、俺は絶句した。


 口調は男勝りだが、これだけツルツルピチピチ幼女の外見にも関わらず、ドワーフ族としては中年女性に当たるワケだ。……しかも子持ち。

 これぞまさに合法ロリ。


「けれど私は……どうしても外に出たかった。人生の半分を、好きでもない男との子作りに充てるなんて、我慢できなかった」

「だから、この船を盗んで国外へ?」

「……そういうこと。サイファスは私を……というかドワーフの女性たちを不憫に思って協力してくれた。トーニャは……」

「はっ! アタシはこの船を飛ばしたかっただけさね! オルデンの連中ときたら、この素晴らしい船を『過剰な武力』だの『他国を刺激したくない』だのと理屈をコネて、格納庫で塩漬けにしてたンだからね! サイファスと契約できるヤツが現れて、渡りに船だったのさ! 船だけにね! がはははは!」

 トーニャの下らない冗談をスルーして、メルティナは話を続けた。

「当然すぐに追手がかかったけど、風の大精霊の加護を受けたサンドバイパーに追いつけるはず無くて、すぐに振り切ったわ」

「なるほど……」


 メルティナの話が終わると、部屋に沈黙が訪れた。


 俺は頭の中でメルティナの話を反芻し、彼女がどんな事を考え、葛藤し、どんな気持ちでここまで歩んできたかを思い描いた。


「それは、大変な道のりだったでしょう……。俺とは住んでいる世界も、価値観も何もかもが違いすぎて、メルティナの気持ちを理解することはできませんが……。それでも、一度も見たことのない外の世界にたった二人で飛び出して、初めて手にした有り余るほどの『自由』を前に、どれほどの苦労がある事か……それは想像に難くない」


 俺が深刻な顔でそう言うと、メルティナは口元を綻ばせてクスリと笑った。


「はっはは……! コーイチは真面目だねぇ。まぁ確かに私は外の事は何にも知らなかった。ただオルデンから出さえすれば『自由』が手に入るなんて思っていたけど、もちろんそんな事は無かった。そもそも『自由』ってのがなんなのかすらも分かってなかったのかも。サンドバイパーなんていう最高の翼を持っていながら、ある意味それ自体に縛られてすらいるんだからね。……それでもオルデンに居た頃に比べたら、どんな苦労も災難も楽しかったから、後悔なんて一切ないんだよ。……コーイチにも出会えたし……」


 そう言いながらメルティナが俺に向ける視線には、なんだか妙に熱がこもっていた。


「はいはい!! コラコラ!! 二人の世界を作ンじゃないよ! 酒はまだまだあるんだから、今夜は寝かさないよ!」


 そう言うとトーニャはどこからともなく酒瓶を次々に取り出した。


「ええっ!? トーニャさんどこにそんなに持ってたんです!?」

「細けぇ事ぁいいんだよ! いや~それにしてもコーイチ、なかなかイケるじゃないか! ヒエムにしとくにゃ勿体ない飲みっぷりさぁ! こりゃあアタシも本気出すしかないかねぇ!?」

「い、いやいや勘弁してくださいよ! 僕なんてお二人に比べたら……」

「あんだってぇ!? アタシの酒が飲めねぇってのかい!?」

「あぁ……トーニャはこうなったらダメだわ……潰れるまで私達に付き合うのね、コーイチ?」


 その後も酒盛りは続き、俺が潰れて気を失ったのはそれから間もなくのことであった。


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