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酒盛り

 何やら大きな素焼きの瓶を突き出してくるトーニャは、まだ素面だろうに、すでに一杯引っかけた後みたいに上機嫌だ。

 それに比べてメルティナはなんだかモジモジしている。

 ドレスからいつも通りの服に着替えているが、一度ドレス姿を見たせいか、何となく普段着もいつもより魅力的に見えてしまう。


 うーん、俺はロリコンでは無かったはずなんだが……見た目は幼女でも中身が大人の女性なせいだろうか? コ〇ン君みたいなもんだ。


「や、やっぱ止めた方がいいわよトーニャ。明日にしましょう? コーイチも疲れているし……」

「何言ってんだい!! 目の前に酒があるってのに、我慢なんてしていられるか! こちとら何日飲んでないと思ってんだい!?」

「トーニャは飲んでないだろうけど、私とコーイチは市長の家でも飲んでるんだから、飲み過ぎは体に良くないっていうか……」

「あのブタの家で飲んだ酒なんて、どうせヒエム用の水みたいに薄い酒だろ!? そんなの飲んだウチに入んないよ!! 全く情けない事言って……ドワーフの血が泣くよ!?」


 何やら言い争いが始まってしまったが……


「俺は大丈夫ですよ? 市長との会食では緊張してしまって、酔えやしませんでしたからね。ドワーフの酒というのにも興味ありますし」


 俺の言葉を聞いて、トーニャが嬉しそうに笑った。


「よぉし決まりだな! コーイチが良いって言うなら文句ないだろ?」

 トーニャは俺の部屋にどすどす入り込むと、床に酒瓶とコップを三つ、そしてどこからともなく魚の干物のようなモノを取り出した。

「これがツマミだ! コーイチの口に合うといいんだがねぇ」

 というかこれ、トモエが作ったヤツじゃないか? 鮭とばモドキ。

「トモエがくれたのを食べた事ありますよ。美味いです! 元いた世界にもこれと似た食べ物がありました」

「お、そうか! よぉ~し、んじゃ始めるかねぇ!!」

 トーニャはショットグラスくらいの大きさのコップに、嬉しそうに酒を注ぎ始めた。


一時間後。


「あっはははは!! あのミレイユが昼間っから酔って管巻いてたってのかい!?」

「いや、でもホント、よく殺されなかったわね!? かなりツイてたんじゃない!?」

「笑いごとじゃないですよ!! ホントに生きた心地しなかったんですから!! でもなんか、聞きたくなかった話聞いちゃいましたねぇ……あんな涙ながらに自分の人生について語られちゃったら、次に素面で会った時どんな顔すればいいんですかねぇ……」


 トーニャの持ってきたドワーフの酒は、泡盛のアルコール度数を高くしたような味で、とても美味かった。


「なんだいなんだい!? その程度のありふれた話で帝国の騎士様に同情しちまったってぇのかい!? んならこっちも、聞くも涙語るも涙の身の上話聞かせてやっちゃあどうだい、メルティナ?」

「わ、私の話なんかいいって! 聞いてもつまんないってば!」


 話を振られたメルティナは苦笑いではぐらかそうとするが、トーニャの顔はやけに真剣だ。


「こんな話、素面じゃできないだろ? コーイチを連れて帰ってきたって事は、売らなかったんだろ? あたしゃ嬉しかったよ。コーイチを仲間と認めるんなら、話してもいいんじゃないのかい?」


 コーイチを連れて帰る……やはりトーニャは事情を知っていたようだ。

 ミランダ、トモエ、ソフィは種族や素性もバラバラだが、メルティナとトーニャは共にドワーフだし付き合いも長そうだった。

 元々この船にはドワーフの二人だけが乗っていて、そこに三人が加わったのかな……となんとなく思っていたのだ。


「んん、でも……」

「コーイチだって気になるだろ? なんでこんなスゲー船をアタシ達が乗り回す事になったのか」

「それはまぁ、気にならないと言えば嘘になりますが」

「ほらな!?」


 トーニャはメルティナの顔を覗き込む。

 メルティナはまだ苦い顔をしたままだ。

 思えば、市長との会食では僕が知らなかったメルティナの別の一面にも気付かされた。

 普段のメルティナはお金の事ばかり考えているように思えていたが、それは本来のメルティナとは全く違う姿だったのだろう。

 この船を維持する為に無理をしていただけなのだ。


「あ、あの、僕は別に無理に聞き出そうというつもりはありませんので……」

「話しちゃうと……」


 メルティナがぼそりと呟く。


「え?」

「話しちゃうと、強がり出来なくなっちゃうじゃん……。ま、まぁ別にそんな大した話じゃないけど」


 トーニャが口を開きかけたのが見えたが、それよりも早く、俺はメルティナの手をとってぎゅっと握った。


「強がりをする必要なんてありませんよ。自分の弱い所も見せられるのが『仲間』じゃないですか。僕をここに居させて下さって……仲間と認めて下さって、僕はとても感謝しています。どうか仲間として、僕にもメルティナさんを助けさせて下さい」


 そう言うと、メルティナは顔を真っ赤にして苦笑いをした。


「き、キミはホントに、歯の浮くようなセリフをペラペラと……」

 メルティナがちらりとトーニャを見ると、トーニャは黙って小さく頷いた。

「はぁ……いいわ。私達がこの船を手に入れた経緯、聞いてくれる?」

「……はい」


 俺は姿勢を正してメルティナを見つめた。


「この船、サンドバイパーは……私達がドワーフの国から盗み出したのよ」

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