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宿敵との優雅なランチ①

「お? お主はいつぞやのニューフェイス。ミスター男手だな」


 俺は昼食を取る為、以前トーニャに連れてきてもらった酒場に再びやってきた。

 入ったことのない飲食店に一人で入店するのは、俺にはまだハードルが高かったのだ……情けない話。


 それにこの酒場のランチは美味しかったし、迎えてくれる猫耳店員氏のフランスア嬢は可愛い。


 店は相変わらずの大賑わいだ。

 昼間っから赤ら顔で騒いでいる一団もちらほらいるが、最低限の節度は守っている様子。

 フランスアが猫目を光らせているのだろう。


「ふむ、今日は一人か? 生憎込み合っておるが、相席なら座れるぞよ?」

「あ、相席?」

「ふむ、嫌か? それならばしばし待つ他ないが?」


 これまた想定外だ。

 たしか初めて来た時はトーニャがテーブルを予約してくれていたのだ。

 つまり、予約しなければ確実に入れるか分からない人気店だからなのだ。


 あぁ、迂闊だったなぁ。

 この世界で見ず知らずの人と相席というのは、初めての店に一人で入るより難易度が高いぞ。

 万の種族と、同じ数だけの価値観が存在する世界だ。

 しかもここは多種多様な人々が集まる商業の街。

 店の中だから大きなトラブルに巻き込まれる可能性は低いだろうが、さっき絡んできた男のような素行の悪い輩と相席などになったら、折角の料理も喉を通るかどうか。


 どうにも自分はこの年になっても人見知りな所があるんだよなぁ。

 仕事で会う分には初対面でも物怖じしないのだが、プライベートとなると……。


「因みに空いてるのはあの席だ」


 フランスアが指差す方向を見ると、小さな丸テーブルの二人席に、一人の客がこちらに背を向けて座っていた。

 フードを被っているが、体付きを見る限り女性のようだ。


「大層美人な、比較的若い娘さんだったぞ、ムフフ。まぁお主は女には飢えておらんだろうがな。あぁ、でも寧ろあの状況では生殺しかの?」


 若い女性か……と、油断したのが運の尽きであった。


「それじゃあ、あの女性が了承して下さるなら相席をお願いしようかな」

「ムホホッ! お主も健康な男子であったか……」


 フランスアはムホムホと不思議な含み笑いをしながらフードの女性に近づいて話しかけた。

 フードの女性はこくりと頷く。どうやら相席OKらしい。

 まぁ若い女性一人なら無闇に恐れることもないだろう。

 話しやすい人だったら、この街の事やこの世界の事について色々話を聞いてみるのも良い。

 女性が腰に下げている美しいレイピアが少し気になったが……。


「相席させて頂いてありがとうございます」

「いいんですよ。まぁ汚いオッサンだったらお断りしてたけど……」


 俺は女性の対面に回り込み、椅子を引きながらさりげなく顔を見た。


 息を飲む。


 全身から血の気が引く。


 肩に乗っているサイファスからも緊張が伝わってくる。


「どうしたの? 座らないの? ……うぅ、やっぱアタシなんかと相席は嫌?」


 赤ら顔で目をうるうるさせ、弛緩しきった表情をしているが……間違いない。

 

 そこにいたのは、俺の身柄を狙うアマンドラ帝国の騎士━━

 白銀のミレイユだった。

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