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初めてのお買い物

「ええっ!? コーイチってば一人で出かけるつもりなの!?」


 翌朝、出かける準備をしているとミランダが一緒に街に行こうと誘ってきた。


「そんなに驚く事はないだろう……! 俺だって大人だぞ! いつまでたっても一人で買い物も出来ないようじゃ困るだろ? だから今日は一人お出かけチャレンジだ!」

「えぇ、大丈夫かなぁ、心配だなぁ……すぐに商人に騙されるんじゃないのぉ? コーイチは人が良いし……」

 くっ……ミランダにこうまで心配されるとは、俺は何か生活態度を改めるべきなのか……?

「そない心配なんやったら、サイファスについていってもらったらええんちゃう?」

 いつの間にか近くにいたトモエが提案してくる。

「サイファスやったら小鳥の姿になれるし、実質一人みたいなもんやない?」

「おお! トモエちゃんそれナイスアイディア! 思春期で反抗期で私達から遠ざかりたいコーイチの監視役にぴったり!」

 誰が思春期で反抗期だ。お前はお袋か。ミランダにママみを感じたことなど一度も無いぞ。

 それにだ。

「姿形が小鳥でも、サイファスは口数が多過ぎるから寧ろ二人分くらいはありそうなんだが!?」

「いーや駄目ですぅ~! 初めてのお使いはまだ許可できません! サイファスに頼んじゃいますっ!!」

「か、勘弁してくれぇ~~~!!」


斯くして。

「イエ~イ!! コーイチとデートにレッツらゴ~ッス!!」

 俺は肩に極彩色の小鳥を乗せた旅人ルックで出かける事になってしまった。

「いやー、鉱山の時はコーイチと一緒に行かなかった事を大層後悔してたッス! まさかそんな面白……いや、大変な事になるとは夢にも思わず」

「いや、盛り上がってるトコ悪いんだけど……今回は一応ほら、一人で初めてのお買い物って体で来てるから、ここは助けが必要だ~!! って時以外は出来るだけ静かにしてて欲しい! どぅーゆーあんだすたん?」

「どぅー……? 申し訳ないッス! つい興奮してしまって! これから自重するッス!」

 そう言うとサイファスはおすまし顔で口をつぐんだ。

 鳥の姿なので表情はよく分からないが、多分おすまし顔だ。

「さぁて行くかぁ」

 俺は懐に入れた財布を握りしめ、人でごった返すアゲイド市の中心部へくり出した。

 今日確実に欲しい物は術法書。基本的にはそれだけだ。

 それ以外にも、ライブの際に着る衣装を作る為の布地や自分用の武器なども欲しいのだが、これらについては今日はまだ値段や品質の調査だけにしておく予定だ。

 ……いや、掘り出し物があれば手を出す事もやぶさかではないが。

 俺は早速、武具の露店が軒を連ねる通りに意気揚々と乗り込んだ。


「おう! 兄ちゃん! 待ってたぜぇ!」

 俺が最初に立ち寄ったのは、ドワーフ族のグランチの店だ。

 彼は宝嵐の発生した地域を周り、異世界……つまり俺の元いた世界の物品を収集して売り捌く商人だ。


「今日は一人かい? まぁ口うるせぇのがいない方が兄ちゃんも気楽だよなぁ!」

「はは、そういうわけじゃないですけど……それより、依頼した品は手に入りましたか?」

「おう! バッチリよ! 見てくんな!」

 そう言うとグランチは、背後から薄汚れた布に包まれた品物を出してきた。

 他の客に売れないように取っておいてくれたのだろうか?


「なるほど、これは……」

 包みを開けてみると、そこにあったのは確かに俺の求めていた物だった。

 しかも思いのほか種類も豊富だ。


「で、どれを買うんだい?」

「全部買います」


 俺の言葉に驚いたのか、グランチは目を丸くしていた。

「全部か!? この小さいのもデカイのも?」

「もちろん値段次第ですが……たくさん買うんで安くしてもらえますよね?」

 グランチは顎に手を当てて真剣に思案する。

「ん~……よし、決めた! 全部で金貨一枚でどうだ?」

 俺が無表情で立ち去ろうとすると、

「あー! スマンスマン! 冗談だよ冗談! 銀貨! 銀貨一枚の間違いだ!」

 グランチは慌てて十分の一に値下げしてきた。

 全く商人というのは油断ならない。


「誰も買い手の付かない物を買い取ろうってのに、そりゃあ無いんじゃないの?」

 俺はチクリと嫌味を言った。

「悪かったって! お前らの船が地竜を討伐したって聞いたからよ、たんまり金持ってんだろと思って言ってみただけだよ!」

「元々あの船は維持費がかかるんですから、新人船員の僕までそんな大金は回ってきませんよ!」

「分かった分かった、んで? 銀貨一枚でどうなんだ?」

 俺は目を瞑って少し考えてから、

「大銅貨一枚!」

「おいおい、買い手がいなくたって、こんなクソ重たい物を収集して運ぶのだって経費がかかるんだ! 大銅貨一枚に銅貨三枚が限界だぜ!」

「じゃあ大銅貨一枚に銅貨二枚!」

 グランチは渋い顔で唸る。


「うーーーーん、仕方ねぇ、売った! こんなもん、また持ち帰んのも面倒だからな! ったく、優男だから景気良く払ってくれるかと思ったら、なかなかやるな兄ちゃん!」

「また集めてくれたら買い取りますから、見かけたら確保しておいてもらえるとありがたいです!」

「おう、任せな!」

 俺は代金を支払い、あらかじめ持ってきていた大きな麻袋に、大小幾つもの品々を詰めこんで、グランチの店を後にした。


「てっきりぼったくられるのかと思ったッスけど、ちゃんと値切るなんてやるッスね! それにしても、一体どう使うもんなんスか?」

「今度使い方を教えてあげるよ。まぁ、俺のちょっとした奥の手さ。思ったよりかなり大量になったから、一度船に戻るかな」

 大銅貨一枚と銅貨二枚、感覚的にはおよそ七千円程度だ。

 しかし実のところ、これらを元の世界で新品で買うと、安くても数万円。高いものなら数十万円は下らない物も含まれている為、超お買い得だったのだ。


 いやぁ、そう考えるとなかなか良い買い物が出来たな。

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