現代人の伝家の宝刀
「サイファス様~おじゃましますぅ~」
「やっほー!! 遊びに来たよ~!」
「違うだろミランダ! アイドルの勉強をしにきたんだろ!!」
「余は……ちょっと興味があって見物に来ただけじゃ! ホントじゃぞ!?」
「ほいほい、いらっしゃいッス~!」
街から帰った後、俺達はサイファスの部屋を訪問した。
その目的はというと、
「この部屋にはコンセントがあるって、トーニャに聞いたんですけど……」
サイファスの部屋はゲンさんによって現代日本の技術がふんだんに盛り込まれている。
もしかしたらゲンさん自身も、自分が元いた世界を思い出す為にこの部屋を作ったのかもしれない。
「くっくっく……コンセントだけじゃないッスよぉ!!」
サイファスはおもむろに立ち上がると、部屋にあった大きなキャビネットを開け放ってみせた。
「見るッス! 液晶テレビも! HDMIケーブルも! ブルーレイレコーダーも! 各種ゲーム機も! より取り見取りッスゥゥゥゥッ!!」
「ヴォーーー!! スゲェーーー!!」
これらの現代機器はサイファスとゲンさんが協力して集めたものだそうだ。
異邦人が来るのは稀だそうだが、宝嵐というのは実は各地で比較的頻繁に起こっているそうだ。
宝嵐から出現するこれらの物品はこちらの人間には使い道が無いため、二束三文で売られている事も多いんだとか。
「キモ……なに興奮してるんだろコーイチ……」
「……何が何だかちっとも分からへんけど……遺失船と同じようなロストテクノロジーとか?」
「あのテカテカした黒い箱が何の役に立つのじゃ?」
当然三人娘はポカーンだ。
「それでは俺も現代人の伝家の宝刀を抜くしかあるまい……!」
「まさか、それは伝説のぉおおお!?」
俺は内ポケットからスマホを取り出した。ついでにモバイルバッテリーもだ。
「出たッス~~~! スマホ!! ゲンさんも持ってたッスけど、何故かスマホだけはどこの市場でもまだ売っているのを見たことが無いッス!!」
俺のモバイルバッテリーは容量は少ないものの直接コンセントに挿して充電するタイプのもので、給電用のUSBケーブルも内蔵されている便利なものだ。
これを部屋の隅にあったコンセントに挿し、スマホを充電する。
いつか必要になるかもしれないと思って電源を切っていたスマホを起動する。
バッテリーのアイコンが稲妻のような充電中のアイコンになっている。
うーん……この程度の事で謎の感動を覚えてしまっている俺。
「充電できたッスか?」
サイファスが背後から覗き込んできた。
「うむ……完璧だ……! ゲンさん最高……!」
そして折角テレビとHDMIケーブルがあるのだ、俺はスマホからテレビに映像を出力する事にした。
三人娘が訝しげに、サイファスが興味津々に見守る中、配線を済ませる。
「よし……!」
俺のスマホにはラインの乙女のライブ映像やダンス練習の様子などの動画が膨大に記録されている。これでそれらの動画がこの推定42インチほどのテレビで見放題というわけだ。
「さて、俺はアイドルについて『歌って踊る皆の人気者』みたいなザックリした説明しかしていなかったけど、これからこのテレビで『アイドル』というのが具体的にどういうものなのかを三人に見てもらう。真剣に見るように!」
「言われなくたって当然!! ワクワクするぅ~!」
ミランダは爛々と目を輝かせている。
「や~、ウチも楽しみやわ~。これから見る人たちがウチらの目標になるんやろ?」
トモエもミランダほどではないものの興味津々といった様子だ。
「ふん……」
テレビに対して体を斜めに向けて自分は興味が無いかのように装っているソフィだったが、視線がテレビに釘付けなのがバレバレだ。
俺はスマホを操作して、ラインの乙女が以前行ったライブの映像をテレビに映し出した。




