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アイドルデュオ結成?

「お~う!? 何がどうなっとんじゃいコラァ~? もうそのノッポの姉ちゃんが脱がねぇと、こちとら収まりつかねぇぞォ!!」


 新たなアイドル誕生の瞬間を、酒焼けしたしゃがれ声が台無しにした。


 振り返ると店の奥、壁際付近のテーブルの男が立ち上がってニヤニヤと口元を歪めながらこちらを睨んでいる。


「おめぇがこのクソみてぇな余興を仕組んだのかぁ? どぉ~うしてくれんだぁ? 今日もしっとり吟遊詩人さんの演奏を聴きながらメシでも食おうと思ってたのによぉ~?」


「ご安心ください。僕はまだまだ帰りませんので。もし何かリクエストがおありなら聞きますが……?」

 吟遊詩人さんが助け船を出してくれるも、

「いやいや、台無しにしたのはこいつら三人ですからぁ? こいつらに償ってもらわねぇと腹の虫が収まらねぇよなぁ皆ぁ?」

「そうだそうだ!!」

 店内から幾人かの同意する声が聞こえる。


「いやぁ、大変申し訳ありませんが、この辺でご勘弁を……彼女達はまだ修行中の身でして、ここは度胸試しにステージに立たせて頂いたワケでして……」

 あぁ、我ながら全然ダメだ。こんな状況はちっとも想定していなかった!


「コーイチ、もうええよ。ここはウチが自分でなんとかするよって」

 俺がしどろもどろになっていると、トモエが小声で耳打ちしてきた。


「ええ!? ホントに脱ぐつもり!?」


「んなわけないわ……ウチは脱がされるんや。その時にちょこっと抵抗するだけや……」


 気のせいか、トモエが何やら昏い顔で殺気を放ち始めた時だった。


「それじゃあ今度は、このフランスアの曲芸ショーはいかがかニャ?」


 どこからともなく飛来した数本のナイフは正確に壁際の男の衣服を貫通し、彼の体を壁に縫い付けた。


「ひっ……ひひぃっ!?」

 男は情けない悲鳴を上げて一歩も動けずに硬直している。

 ズボンの股間に刺さったナイフの周囲にじんわりとシミが広がる。


「大当たりぃ~。ほらほら拍手~」


 店内から割れんばかりの大喝采が起こる。


「さっすがフランスア姐さん!」

「そこにシビれる憧れるゥ!!」


 両手指の間に複数のナイフを挟み、いつの間にかステージに立っていたのは、あの猫耳店員氏であった。

 フランスアという名前なのか……覚えておこう!


「さぁて、次に頭にリンゴ乗っけて的になってくれる人はいるカナ?」


 水を打ったように静まり返る店内。


「……じゃあ仕方がナイ。ナイフジャグリングでもするゾ。詩人さんは何か楽しい曲を。アンタ達はステージから降りた降りた」


 俺たちはフランスアから押し出されるようにステージを降りた。

 素晴らしい手際だ。助かった……。


 いつの間に移動したのだろうか? トーニャは俺たちが座っていたテーブルにはいなかった。

 店内を見回すと、出入り口で手招きしているトーニャを見つけた。


「すまなかったねミランダ……君があそこまで本気だったなんて思わなかった」


 皆で市場の雑踏を歩きながら、俺はミランダにもう一度謝った。


「私はいつだって本気生きてるんだからねっ!」

「はは、皆に聞いたよ。……でも、ミランダのお陰で僕も覚悟が決まった。どんな世界に行っても、僕のやりたい事は一つだけだ。君が最高のアイドルになれるように手伝わせてもらうよ」

「ありがとう! キラキラ輝く宝石みたいな女の子になれるように、頑張るね!!」


 ミランダが輝くような笑顔で俺を見上げている。


「おいこらコーイチ! 何を良い感じでまとめようとしておるのじゃ!? お主のせいでミラが暴走してこんなことになっておるんじゃぞ!? 余にも詫びを入れるのがスジだと思うんじゃが!? じゃが!?」


 俺の背後を歩いていたソフィが半泣きで俺とミランダの間に首を突っ込んできた。


「なんやぁ? 嫌やったならコーイチやトーニャと一緒に座って見てたらよろしかったんに」


「こ、こんな危なっかしいヤツを放っておけるか!!」


「あっははぁ~……トモエちゃんソフィちゃん、それにトーニャも。ホント迷惑かけてごめんね? ま、まぁいつもの事だけど……」


 ミランダは、たはは~と苦笑いしている。


「俺は感心したよ。君たち三人の絆の強さにね。そこで提案があるんだけど、トモエとソフィもミランダと一緒にアイドルやってみないか?」


 脳裏にラインの乙女の三人の顔が浮かんだ。

 無論、アイドルはソロでもできる。しかし信頼できる仲間がいれば、助け合う事によって大きな試練も容易に乗り越えられるようになる。


「ウチはええよ。面白そうやし」


「なんと二つ返事か。いいのかい? 本気でやると超ハードな道のりになるけど……」


 俺もプライドを持ってこの仕事をやっている。手加減は出来ないのだ。


「うーん、まぁウチもそれなりに地獄は潜ってきてるからその辺は大丈夫」


 そうだ。この世界は現代の日本とは違う。「ただ生きる」だけの難易度がすこぶる高い世界観だ。

 その上トモエは鬼族という事でしなくてもいい苦労も沢山してきているのだろう。


「それに、悔しさもあるしな。次にあの酔っ払いのオッサンの前で歌う事あったら、グウの音も出んほど感動させてやりたい。その為には練習せんとな」


「なるほどな。歓迎するよ! トモエ」


「ソフィはどうするん?」


 ソフィは赤い顔をあさっての方向に向けながら、

「余は絶対にやらんぞ!! あんな恥ずかしい思い、二度とゴメンじゃ!! 大体、王族たる余にあんな見世物の真似事などをやらせるとは、不敬も甚だしいのじゃ! 余の立場はあくまで見物する側じゃ!!」


「へぇ~? さっきはこんな危なっかしいヤツ放っておけるかとかなんとか言うてはったのに……ねぇ?」


「ぐぬぬ……こ、これからはコーイチもついておるんじゃろ!? 余の力はもう必要ないのじゃ!」


「ま、今はそういう事にしといたろ」


 これはつまり……いずれは三人組になるってことか?


「そうと決まれば早く船に帰って、まずはアイドルというのがどんなものなのかを見てもらわないとな」


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