デート? のお誘い
「ちょっ……ミラちゃん待ちぃ!!」
「余、余を仲間外れにするなぁ~!!」
続いてトモエとソフィもミランダを追いかけて駆け出していく。
「あ~あ、やっちゃったわね」
メルティナはイタズラっぽい笑顔を浮かべながら俺を睨んでくる。
「お、怒らせるつもりは無かったんですけど……」
「あの子は「無理」とか「やめとけ」みたいな事言われると、すぐムキになるから。あの子が何かをやりたいと言い出した時はいつでも「本気」なの。それでも止めさせたいなら細心の注意を払って説得しないとね」
「よく、分かりました……」
女の子を意図せず怒らせてしまったのは久しぶりだ。
今まで仕事で多くの十代少女達と関わってきて彼女たちの扱いには慣れたつもりになっていたが、思い上がりだったようだ。
俺はすぐに立ち上がってミランダ達を追いかけた。
ミランダの部屋の扉の前に立つと、ノックするより先に室内から声がした。
「コーイチ! 入ってこないで!」
「すまなかった。俺はただ……」
「私は簡単には諦めないからね!! 見てろ! 絶対人気者になってやるんだから!!」
「えぇ?」
「明日! 楽しみにしてろ!」
「……あ、明日?」
明日。明日の朝にはアゲイドに着くとメルティナが言っていた。
ミランダは明日、何かするつもりなのだろうか?
どうすべきか扉の前に立ち尽くしていると、
「コーイチ、あかんよ。今日は取り合えず部屋に戻りぃ」
「……分かった」
俺は素直に部屋に戻ることにした。
俺はミランダはもちろん、彼女達の事を何も知らない。
ここでどんな言葉をかければいいのか皆目分からないのも事実だ。
明日になればお互い頭が冷えて、もっとよく話せるかもかもしれない。
殺風景な部屋に戻ってベッドに横になり目を瞑ると、瞼の裏にラインの乙女の三人の顔が浮かんだ。
彼女たちはどうしているだろうか……?
そのうちに三人の顔がミランダ、トモエ、ソフィに置き換わる。
考えてみるとラインの乙女の三人とこの船の仲良しな三人は、雰囲気も三人それぞれの立ち位置も何となく似ている気がする。
元気が取柄で皆を引っ張る未来とミランダ。おっとりしているようで実はしっかりものの入間とトモエ。ツッコミ役が多く、ちょっとネガティブな佳子とソフィ。
あるいは俺がラインの乙女にこっちの三人を勝手に当てはめているだけなのかもしれないが……。
一瞬だけ、ステージで歌い踊るミランダ、トモエ、ソフィの三人が頭に浮かんだが、俺はすぐに頭を振った。
丸窓に目を向けると、外には月明かりに煌めく海面と東京の空では見られない満天の星空が広がっていた。
◇◇◇
翌朝。部屋で身支度を整えていると扉をノックする音が聞こえた。
「おーい、あ、アタシだ。トーニャだよ。開けとくれ」
トーニャ。甲板でのお茶会以降、忙しいとかで機関室に閉じこもっていたらしいが……
「はい、おはようございます」
扉を開けるとそこにはトーニャが立っていたのだが、以前に見たツナギ姿ではなかった。
ポケットの沢山ついた年季の入ったカーゴパンツに、健康的な色気を振りまくタンクトップ姿だ。
まぁ色気といっても幼女体型なので特殊な性癖の持ち主でなければ興奮材料にはならないだろうが。
甲板での時とは違ってなんだかもじもじと煮え切らない雰囲気だ。
「あー……これからアゲイドの街に行くんだが……アンタを一人で出歩かせたら危なっかしくて仕方ないだろ? だからその~……」
「ぜひ案内してくれませんか? この世界の街に行くのは初めてですから」
「そ、そうか、し、仕方ねぇなぁ! じゃあ案内したげるよ」
なんだか分からないが、トーニャは俺と一緒に街に出たいらしい。もちろん俺としてはありがたいのだが、どうも様子が変だ。
何か隠し事でもしているのだろうか?




